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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ノーティス
22/91

◇ 二人の想い

 リナたちが去ったあと、壁ひとつ向こう側の陰から、ノーティスがレイズを解いてドノヴァンとともに姿をあらわす。


(あなど)れないな、あの二人は。なあ、ドノヴァン」

「ああ。あの女隊長は、思った以上に頭の回転がはやいな」


 二人はシグマッハの本拠地に帰るべく、足を向ける。ノーティスがリナと遭遇したときの心情を、正直に吐露する。


「焦ったよ。あの子は俺の姿が見えないはずなのに、しっかり銃口を向けてきたからな」


 ドノヴァンがニヤニヤ笑う。彼の顔を見たノーティスは、眉を寄せる。


「笑うなよ。まさか電磁波の揺れで、こっちの動きが読めるとは思いもしなかった」


 セシルとリナの会話を、しっかりきいている二人だ。


「リナちゃんがどんなレイズを使うのか知らなかったが、電磁波か……それを応用しているんだろうね。頭が良さそうだ」

「敵なのが残念だな」

「うん」


 二人とも、考えることは同じである。ドノヴァンの口から、それが漏れる。


「あの子とは、戦いたくないなあ」

「ああ。戦場では会いたくないね」


 自分たちに銃を向けていながら、最後まで引き金をひくことはなかった。

 戦場に立つ兵士としては甘すぎるといえばそれまでだが、リナのやさしさを感じる二人は、彼女を愛おしく想う。


 しばらく無言で歩いていると、ノーティスが思い出したようにいった。


「リナちゃん、戦場に出てくるには若すぎないか。十七歳だっけ。その年で前線へ行かせるか、ふつう?」

「俺も気になってた。なんか、ラムドは」


 怪訝に思うドノヴァンが、その顔をノーティスに向ける。


「俺たちよりも残酷なんじゃないか」


 自分がリナの兄であれば、絶対にゆるさないだろう。


 リナには、なにか特別な秘密があるような気がする。ドノヴァンは、彼女の瞳の奥に哀しみを感じるのだ。

 リナも自分と同じように、暗い過去を背負っているのではないか。また彼女の場合、それだけではなさそうだ。


 いくら戦闘にすぐれたレイズを備えているとはいえ、まだ二十歳にもならない女の子が、こんな戦場へ駆り出されるはずがない。


 ──ラムド政府軍の上層部しか知らないなにかが、あの子には…… 


 リナについて、いろいろと考えを巡らせていると、シグマッハの車両が近づいてくる。

 見慣れたジープだ。それが彼らの前で停止すると、運転手のブロスが降りて敬礼する。


「お疲れ様です」


 ノーティスが、彼に向かって右手を上げる。


「ご苦労さん」


 若いブロスは彼に問いかける。


「今回、ラムドの特機隊隊長のファーマインも来ていたとききましたが」

「危なかったよ。まあ、向こうも引き上げてくれたから、良かったけどね」

「オズマさんのレイズをもってしても……」


 ドノヴァンが、彼に答える。


「やっぱり、ラムドの特機隊はちがうな。一筋縄では、いかないよ」


 ノーティスが、抱く疑問をブロスに投げた。


「そもそも、特機隊はなぜこっちへ来たんだろ。レウールに誘い出すはずじゃなかったのか?」


 本来、セシルの特別機動部隊をこのルカーラに来させないように、レウールの街に釘付けにする作戦だった。

 それについて、ブロスが説明する。


「レウールに行くまでの道が、これまでの災害で通れなくなり、断念したんです」


 レウールは、その周辺が立て続けに凄まじい嵐にみまわれ、いま多数の被災者が出ている。

 これまでにない大災害だということだ。


 ドノヴァンが彼に尋ねた。


「別のルートはなかったのか?」

「そっちもダメだったようです。予想以上に被害が大きかったのでしょう。大病院はラムド側にあるので、修復作業は、街からそっち側を中心に行われているもようです」


 ノーティスは「なるほどね」とうなずくと、この会話を終わらせる。


「行こう、総隊長が待ってる。たぶん、苦い顔をしているだろうな」


 彼らはジープに乗り、シグマッハの本拠地へ帰ってゆくのだった。



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