表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ノーティス
21/91

◇ ノーティスのレイズ

 リナの頭が混乱する。ほんの数秒で、ドノヴァンたちはこの場から姿を消した。


 ──いったい、どうやって?


 そのとき、リナの背後から声が響いた。


「ジーグ」


 ふり向くと、セシルが壁の陰から姿をあらわしている。彼女は持っていた銃を腰のホルスターに収めながら、言葉をつないだ。


「肝を冷やしたぞ。オズマだけでなく、もう一人いたとはな。しかも」


 そういうセシルの額から、冷や汗が流れる。


「ヤツは、わたしの存在に気づいていた」


 リナはうなずいた。


「驚きました。誰もいないところから、いきなりあらわれましたから。あの能力は……」


 彼女は、ノーティスのレイズはセシルと同じだと思った。ところが、セシルの考えはちがう。


「わたしと同じではない」

「え?」

「ジーグ。おまえは電磁波の揺れで、あいつが移動するのが、わかったんじゃないのか」


 確かにあのとき、なにかが右から左へ動いたと思った。しかし、自分の目にはなにも映らなかったリナは、自信をもって答えられない。


 セシルには、おおよその見当がついている。


「保護色だよ、ジーグ」


 リナは、ハッと目を見開いた。


「おそらく、あいつ自身だけでなく、あいつが触れているものも保護色にできるのだろう」 


 そうであれば、レミーの能力をもってしても、彼らをとらえきれなかったのが納得できる。セシルとは異なる能力だ。


 誰にも気づかれずに敵陣に近づき、敵の作戦や動きを仲間に伝えることができるなら、グレイス隊長の部隊が苦戦したのも当然といってよい。


 セシルは「それにしても」と言葉を続ける。


「あいつらは、かなりおまえを気に入っているみたいだな」

「あの人たちからは、これっぽっちも殺意を感じませんでした。自分は、まるで一般人に銃を向けているような気がして」


 セシルは、リナの心情がわからないでもない。いまのリナは、そんな相手に対して引き金をひくのは、気が重いだろう。


 ──そう、いまのジーグは


 イヤなことを思い出した。


 ──殺人マシンにならずに、今日までまともにやってきたんだ。もう二度と、あんなことは……絶対に……


 心の闇に落ちかけたとき、リナの声で呼びもどされる。


「隊長、隊長?」

「ああ、悪い。考えごとをしていた」

「これから、どうしますか?」


 リナに訊かれたセシルは、まずレミー・モルダンに連絡する。


「モルダン、シグマッハの様子はどうだ?」

「後退していきます。前に出てくる感じはありません。撤退するもようです」


 それをきくと、こんどは抗戦部隊のグレイス隊長へ通達する。


「ファーマインだ。シグマッハは撤退をはじめている。もう大丈夫だ」


 グレイスはセシルに感謝した。彼は、これから遊撃部隊に応援を要請し、彼らとともにこの地にのこり、ルカーラを守るという。


 セシルは、リナにふり向いた。


「われわれも帰るぞ」

「はい」


 装甲車が近くまで来ると、リナとセシルはそれに乗り込んだ。

 セシルは、車に乗っている隊員の一人に尋ねる。


「オズマのレイズで、負傷者は出なかったか?」

「大丈夫です、負傷者は一人もいません。全員、ぶじです」


 セシルは装甲車に設置された通信機のマイクをとり、特機隊の全隊員に告げる。


「特別機動部隊、これより帰還する」


 彼女が率いる特機隊は、ユードルトの基地へ帰ってゆくのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ