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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ノーティス
20/91

◇ シグマッハの幹部

 驚いた顔をしたドノヴァンが、リナに声をかけた。


「びっくりした。リナちゃん、来てたの?」

「………」


 リナは、声が出なかった。彼女にすれば、びっくりしたのは自分の方である。

 先ほどのレミーの声をきいたかぎり、ドノヴァンはいきなりあらわれた様子だった。だが、最初からここにいたとは思えない。


 少し落ち着いたとき、リナは彼に問いかける。


「なぜ、わたしを殺さないんですか?」


 自分が背中を向けている間に、余裕で殺せたはずだ。


 ()かれた彼は、自分に銃を向けているリナに言葉を返す。


「なぜ、撃たないの?」


 いや、なんで質問を質問で返すのか。この男は実にやりにくいこと、この上ない。


 ──なぜ、撃たないの? と、いわれても……


 ドノヴァンには殺意をまったく感じない。敵ではあるのだが、銃の引き金をひくことを、リナの身体が躊躇している。


 ドノヴァンの出現に驚いたリナだが、さらに驚くことが起きる。


 突然、リナの背後から声が響いた。


「君がリナちゃんかい?」


 リナは素早く後ろをふり向き、銃を構える。


 全然知らない男が、そこにいる。細身で長髪の彼が着ているのは、ミッドナイトブルーのズボンに黒いジャンパー。アーマースーツには見えない。


 ──い、いつの間に?


 ドノヴァン同様、なんの前ぶれもなく彼もいきなりあらわれた。よほど己のレイズに自信がなければ、私服で前線に立つなどあり得ない。


 リナの心臓が早鐘を打つ。全身が冷や汗にまみれる。


 見知らぬ男は、言葉を続ける。


「かわいいね。ドノヴァンのいったとおりだ」


 彼は、リナに微笑みを投げかける。穏やかな笑顔に余裕が感じられる。


 リナが、その男に向かって口をひらいた。


「あなたは何者ですか」


 彼は笑顔を崩さずに答える。


「自分の名前を、敵に教えると思う?」


 確かにそうだ。しかし、ドノヴァンのひと言で名前がバレる。


「教えてやれよ、ノーティス」


 ノーティスが眉を寄せ、困った顔になる。


「なんで俺の名前、いうんだよ」


 リナの知らない人物だ。彼に関する情報はなにもないが、それでもピンとくるものがある。


「あなたは、シグマッハの幹部ですね」

「あ、わかる? さすがはリナちゃんだね」


 驚異的なレイズを備えるドノヴァンと対等に話せる人間が、そんなにいるとは思えない。いるとすれば、幹部ぐらいなものだろう。

 この二人は、かなり仲が良さそうだ。ノーティスという名前はファーストネームだと、リナは思った。


 一気に窮地に立たされたリナの状況は、極めてまずい。脱出するにも、どうすればいいのか答えが見つからない。

 電撃は、ドノヴァンの重力のレイズで曲げられる。彼にはとどかない。不意打ちでなければダメなのだ。


 ノーティスの能力もまったくわからず、リナが動けずにいると、ノーティスがドノヴァンに声をかけた。


「じゃあ、帰るか」

「そうだな」


 リナは唖然となった。この状況でなにもせず、帰るという選択肢がどこから出てくるのか見当もつかない。


「戦わずに、去ってゆくのですか」


 そういうリナの言葉に、ノーティスが答える。


「君の部隊の隊長が、すぐそこまで来ているからね」


 驚いた。


 ──隊長が?


 事実だった。突然あらわれた二人の出現にリナが動揺している間に、セシルは近くの壁まで来て、銃を右手に携え陰に隠れている。


 ノーティスの目つきが変わる。


「第一級の危険人物を相手に、簡単に勝てると思うほど、君たちをナメてないよ」

「………」

「テレポーテーションは、実にやっかいだ」


 テレポーテーション──セシルのレイズである。どれほど離れていようと、その目でとらえることが可能な場所であれば、瞬時に移動できる。ただし、障害物をのり越えることはできない。


 ドノヴァンがノーティスに顔を向けると、口をひらいた。


「一応、戦ったという痕跡をのこしておこう。このまま帰ると、なにもしなかったと文句をいわれそうだからな」


 ノーティスは「そうだな」と、うなずいた。


 次の瞬間──


 ズドドンッ


 リナの後方で、ドノヴァンのレイズが炸裂する。それを見たリナは焦った。


「みんな!」


 後ろで待機している部隊の隊員たちは、ぶじなのか? 心配するリナに、レミーから通信が入る。


「ジーグ、こっちは大丈夫だ。それより、おまえが相手にしていた敵はどこへ行った!」

「え?」


 リナは、ドノヴァンたちの方をふり返る。


「い、いない……」


 二人の姿が消えている。




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