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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ 惑星アーカス
2/91

◇ 戦争の歴史

 ラムドとシグマッハの戦いは、かれこれ二十年に及ぶ。この戦争がはじまるまえはどうだったかというと、けっして平和ではなかった。


 惑星アーカスに生きる人類は、太古より戦争と平和を繰り返してきた。

 戦争はイデオロギーのちがいによるものがほとんどで、二極に分かれての争いは、科学文明が発達するほど激しくなっていった。


 何度目かの戦争が開始されたとき、宇宙星間協定を締結していた惑星からの武器の輸送があったのだが、このときに使用された重化学兵器が、アーカス人に異変をもたらした。


 重化学兵器はその使用を禁止するという双方の取り決めがあったのだが、両軍ともにそんなものは使っていないと否定する。

 だが現実は、毒薬に犯されたような悲惨な死体が、彼らの言葉を拒絶していた。


 多くの人々が死に至る。しかし、生きのびた人間のなかに、超能力が発現する者があらわれる。

 個々によって異なるその超能力を、彼らは「レイズ」と名づけた。


 惑星アーカスの全人口のうち、レイズを使える人間は三割に達し、さらに増え続けた。


 これが、アーカスの戦争を一変させることになる。

 イデオロギーのちがいによる戦争から、超能力を使える者とそうでない者との戦争に変わっていったのである。


 ところが、己の能力に溺れた者が、その力を誇示しようと超能力者同士での争いが出はじめる。これがエスカレートすると、またもや戦争の形態が変わってくる。


 超能力者のなかには、レイズを使えない一般人の人権も尊重するべきだという者もいれば、力をもたない役立たずは排除すべきだと考える者もいる。


 一般人は、ただ平和に暮らしたいと願う人がほとんどだ。


 平和を望む人々は、超能力の有無を問わず、国をまとめて政府をつくりあげた。

 それに対して、力をもたない一般人を排除しようとする彼らは、レジスタンスとして組織をつくり、政府に対抗しようとした。


 政府は、つくりあげたこの国を「ラムド」と名づけ、レジスタンスは自分たちの組織を「シグマッハ」と名のるのだった。


 


 ラムド政府の初代大統領レオパルド・バルフォードは、温厚な性格であった。レイズを使える者はアーカス人全体の約五割であるが、彼はレイズの有無に関係なく人の内面、心のあり方で人物を評価していた。


 平和主義者であるレオパルドはシグマッハに何度も話し合いをもちかける。そして平和的に会談がなされる直前まで進んだとき、不幸が起きた。


 レオパルドが大統領官邸で、何者かに殺害される。殺したのはシグマッハだという噂が流れ、シグマッハとの会談は決裂した。

 当時、副大統領だったダーモス・コーネンが次期大統領になると、彼は強硬派として徹底的にシグマッハの壊滅を推し進めた。


 だが七年前、ダーモスは急に民衆の前に姿をあらわさなくなり、大統領は穏健派で知られるレズリー・マットに交代する。

 穏健派であるレズリーだが、彼女がいくら平和的に事を運ぼうとしても、シグマッハはひたすら拒否し、徹底抗戦の立場をつらぬいた。




 レズリーが大統領になって二年後、ダーモス元大統領が病気で死亡したという知らせが、ラムド国内で発表された。しかし、大統領がレズリーに交代するとき、ダーモスが(わずら)った病の詳細はいっさいなく、この情報が信憑性のあるものかどうかは、わからない。


 ダーモス死亡の噂はシグマッハにも流れたが、そんなことなど、どうでもいいと考える人間がほとんどだった。


 しかし、そうでない人物がひとりいた。


 ラムド第二代大統領ダーモスに恨みをもつ彼は、ダーモスは現在ものうのうと生きており、ラムドの国を陰で操っていると考える。


 オズマという名の彼は、シグマッハのもとへ身をよせると絶大な能力を発揮し、やがて「シグマッハの悪魔」と呼ばれるようになるのだった。




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