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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ダブルレイズ
18/91

◇ 形勢逆転

 抗戦部隊と合流したセシルは、隊長のグレイスから話をきく。


「──というわけなんだ。焦って動いたのが失敗だった。わたしのミスだ」


 セシルは腕を組んで思考を巡らせる。グレイスの考えた作戦そのものに、ミスがあるとは思えない。彼が考えたことは常套(じょうとう)手段といってよく、誰でも真っ先に思いつく作戦だ。


 おそらく、敵はグレイスの考えを上回るカードをもっている。


 ──モルダンのようなレイズがある者が、シグマッハにもいるのか?


 ラムドが警戒しているシグマッハの人物に、そういうレイズを使える者は確認できていない。

 だが、自分が知っている情報だけがすべてではない。情報局にも、まだつかみきれていないことは多々ある。


 セシルは、副隊長のレミー・モルダンに声をかけた。


「モルダン」

「はい」

「ジーグと二人で、先頭にいる隊員たちと合流してくれ」

「そのあとは?」

「おまえのレイズで、敵の位置を探るんだ。ジーグのレイズでなんとかなるようなら、前進する」

「わかりました」

「ただし」


 戦局を左右するのは、あの男だ。


「オズマがいるとわかったときは、そこから動くな。危ないと思ったときは、すぐにひき返せ」

「了解しました」


 レミーは、リナを連れて前線にいる抗戦部隊のところまで進んでゆく。

 彼らの元まで来たレミーは己のレイズを解放すると、ヘッドギアのインカムでセシルに状況を報告する。


「前方三十メートルの建物の影に、複数の敵がいます。中央に五人、右に三人いますね。そいつらの左後方十メートルに、ランチャーを備えた敵がいます」


 それをきいたセシルは、攻撃命令を出した。まずランチャーの敵に、こっちのランチャーで仕掛ける。


 いきなりの虚をついたような攻撃に、最前線にいるシグマッハの兵隊たちは、おののいた。

 まさか前にいる自分たちではなく、ランチャー隊員を正確に狙ってくるとは夢にも思わない。


 けたたましい爆発音のあと、抗戦部隊が一斉に銃撃を開始する。


 彼らの後方にいる味方の隊員たちも、前に出てくる。ランチャーを携える隊員が、遠くにいるシグマッハの敵を立て続けに攻撃する。


 その間、リナは素早く建物の左側へまわった。

 リナの存在に気づかない敵に、リナはレイズを発動する。彼女は十メートルほど離れている敵に向けて、左腕を前に出した。


 バリバリッと電撃が走る。


「ぐあっ」

「うごおっ」


 リナの腕から放たれた電磁波が、投網で魚をとらえるように、中央にいた五人の敵を束縛する。彼らは身体がしびれて動けない。


 兵士たちが装備する防御スーツは、耐衝撃にすぐれたエルレアン合金が使用されるのだが、感電を防ぐための絶縁物をコーティングすることが不可能なのが欠点だ。電撃の影響をもろに受けるのである。


 束縛状態にある彼らの向こう側、五メートルほど離れたところに三人の敵がいる。異変に気づいた兵士たちは、リナに銃を向けた。リナの電磁波が彼らに向かってアークする。この三人も続けざまにとらえた。


 リナのレイズは、これだけではない。彼女は人差し指をのばした右手を、左手首の下側に添えるようにして、にぎる。


 次の瞬間


 バギュンッ!


 敵を束縛する電磁波を伝うようにして、稲妻のごとく電撃が、とらえた八人の身体を貫いた。ほんの一瞬で、彼ら命はこの世から消し飛んでしまった。

 リナはドノヴァンと同じく、二つのレイズを個別に発動できるダブルレイズである。


 さらに後方にいるシグマッハの援護隊員たちは、その様子を確認することができない。ラムド部隊のミサイルランチャーの攻撃で土煙が舞い、前方でなにが起きているのかわからない状態だ。


 ラムドの部隊がシグマッハを圧し返す。第二ラインを守りきり、第一ラインまで前進する。


 そこで銃撃が止む。不気味な静寂がただようなか、最前線にいるセシルが、そばにいるレミーに確認する。


「敵はいるか?」

「前方百メートル内には、いません」

「よし、進もう」


 セシルの部隊と抗戦部隊が左右に分かれて前にでる。




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