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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ダブルレイズ
17/91

◇ 戦地ルカーラ

 その後も、ラムドとシグマッハの小競り合いは続く。


 だが、大きな戦闘に発展することはなかった。天候が悪い日が続き、双方とも作戦を思うように進められない。

 嵐にみまわれたときは、両軍ともに戦地から撤退した。


 ラムドのワイアード・ロディオン司令官そしてシグマッハのファルコ・ウォーデス総隊長は、この先、そう遠くない日に熾烈な戦いがはじまることを予測している。


 いまは、極力ムダな犠牲を出すのは避けたい。二人とも、考えることは同じだった。




 曇り空のなか、戦闘区域に指定され住民が避難したルカーラの地で、ラムド軍とシグマッハの部隊が相対する。

 これが、思ったよりも激しい戦闘となってゆく。


 ラムドとしては、この地を陥落されるわけにはいかない。シグマッハにすれば、ここを制圧できるかどうかで優位性が大きくちがってくる。


 ユードルトで待機しているセシルに、ワイアードから応援の要請が入った。通信隊員のイレーナが、セシルに伝える。


「隊長、ロディオン司令官から連絡です」


 セシルが即座に応答に出る。


「ファーマインだ」


 ワイアードの焦ったような声が響く。


「至急、ルカーラへ向かってくれ。あそこを落とされるわけにはいかない」

「わかった。特別機動部隊、これよりルカーラへ出撃する」

「頼む」


 セシルは司令を出した。


「全戦闘隊員、ルカーラに向かう。発進準備!」


 イレーナが、それを基地内スピーカーで隊員たちに伝える。


 ルカーラにいる抗戦部隊は、けっして層はうすくない。進撃と遊撃を備えたこの部隊は、セシルの特別機動部隊同様、エリートぞろいの特殊部隊である。

 そんな彼らが特機隊に応援を要請する事態に陥るのは、よほど苦戦を強いられているのであろう。


 セシルは懸念する。


 ──あいつが、いるのか?


 ドノヴァン・オズマの存在。この男がルカーラにいるのといないのとでは、街全体の被害や犠牲者の人数など、戦況が大きく異なってくる。


 セシルは気をひき締め、隊員たちを連れてルカーラへ出発するのだった。

 その部隊のなかには、当然リナもいる。




 ルカーラでは、ラムドの抗戦部隊がシグマッハに圧され、じわじわと進撃をゆるしていた。


 部隊長のグレイスに、前線で戦う兵士から連絡が入る。


「第二ライン、これ以上もちそうにありませんっ」


 グレイスは怒鳴った。


「死んでも守れっ。守りとおせ!」


 すでに第一ラインを突破され、この第二ラインまでも破られると、圧倒的に不利になる。


 第三ラインが崩されれば、終わったも同然だ。一気にたたみかけられて全滅するのは目に見えている。


 それにしても


 ──これほど苦戦するとは……


 お互いの車両はすべて破壊され、膠着状態が続くなか、主導権をにぎろうと先に動いたのがまずかった。


 ものの見事に返り討ちに合い、大事な戦力を失った。


 数人ずつ分散して進ませた兵士たちは、その行動をあらかじめ読まれていたかのように、的確に狙い打ちされて命を落とした。


 ──なぜ、こうなった?


 グレイスは、さっぱりわからない。ここまで窮地に立たされるとは思わなかった。まるで罠にはめられたごとく、敵の迎撃が完璧すぎる。


 だが、己のミスであることに変わりなく、動揺する想いが顔に出そうになる。それを他の隊員たちに悟られないよう必死のグレイスだが、悪いことばかりでなかった。


 隊員のひとりが、彼に伝える。


「グレイス隊長、特機隊がまもなくやって来るようです」


 絶望の暗闇のなかに、一条の光がさした。


 彼らに賭けるしかない。



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