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レイズ・アライズ  作者: 左門正利
◆ ダブルレイズ
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◇ 会議

 ワイアードがベルムングへ来たことは、セシルにとって都合がよかった。


「ちょうどいいところに来た。伝えたいことがある」

「なんだ?」

「オズマのことだ。モルダンとジーグの話では、あいつは完全なダブルレイズといっていた」

「なんだって!」


 案の定、ワイアードは驚愕して顔をひきつらせる。そんな彼をよそに、セシルは話を続ける。


「オズマは、重力と炎のレイズを使うらしい」

「本当か? まさか、信じられん」

「だが、戦地におけるクレーターや、炭のようになりはてたアーマーの残骸が、それを証明している」

「あれは、ミサイルではなかったのか?」

「ヤツがひとりでやったんだ。望遠カメラからの映像が乱れるのは、重力の影響と考えれば、すべて合点がいく」


 そこまで話したとき、通信隊員のイレーナが割り込んでくる。


「バルセダンの先進部隊から報告です。シグマッハの部隊が撤退していくもようです。こちらに指示を求めていますが、どうしますか?」


 ワイアードは素早く判断をくだした。


「追わなくていい。帰還するよう、伝えろ」

「了解」


 さらに、彼は続けて指示を出す。


「各部隊の大隊長に、統合本部へ来るように連絡してくれ。すぐに会議をはじめる」

「了解しました」


 そしてワイアードは、セシルの方に顔を向ける。訊くべき大事なことがあるのを忘れるところだった。


「モルダンとジーグの様子は、どうだ?」

「特に異常はなさそうだ」


 ぶじだとは思ったが、彼女の言葉をきいて確信すると、ホッとする。


「よく生きてたな」

「同じことを思ったよ」

「では、統合本部へ行こう。オズマの情報を整理し、各部隊に知らせねばならない」

「わかった」


 セシルとワイアードの二人は、ラムドの統合本部があるロゼオルドへ移動するのだった。




 ロゼオルド──ラムドの国の首都である。ここに、政府議事堂ならびにラムド軍統合本部がある。


 本部の会議室では、集まった各部隊の大隊長たちによる会議が、はじまっている。


 ドノヴァン・オズマの能力がダブルレイズだったことに、みんなは驚きを隠せない。

 その中の一人、先進部隊の大隊長ユーゴ・ナッシュが、困惑した顔で声をあげる。


「オズマが二つのレイズを使えるというその話は、本当ですか?」


 セシルが答える。


「わが部隊のモルダンとジーグが、実際に体験している。二人とも、オズマが本気だったら死んでいたと話していた」


 彼女の言葉に、全員が押し黙る。


 ワイアードがセシルに質問する。


「オズマの弱点は、わかるだろうか」

「弱点は見当たらなかったようだ。あいつは武器も通信機も持たずに、ターレルでラムドの先進部隊を待っていたらしい」


 抗戦部隊大隊長のグレコ・ランディスが、セシルに問いただした。


「通信機も持たずに?」


 ワイアードが応じる。


「ファーマインの話では、オズマはシグマッハのなかでも特別な扱いを受けていると思われる。実際、こちらの一個部隊を殲滅するのに、オズマ単独でも不可能ではないだろうな」


 セシルが眉をよせる。


「相当、自信があるのだろう。ヤツのレイズが桁外れに強大なのは事実だ」


 防衛部隊のフレッド・ライアス大隊長が、セシルに尋ねる。


「ファーマイン隊長、オズマのレイズがどれほどの威力なのか、だいたいの見当はつくか?」

「戦場跡にできていたクレーター、そして灰と化したアーマーを見れば、わかると思う」

「あ、あのクレーターは、オズマの仕業だったのか!」


 大隊長たちが驚嘆する。遊撃部隊のラインバッハ・ウィングス大隊長が、ひとり言をつぶやくように声を出した。


「てっきり、ミサイル攻撃によるものだと思っていたが……」


 セシルは首を横にふる。


「そうじゃなかったんだ。ミサイルにしては爆破した破片がまったく見つからなかったので、おかしいとは思ったが、重力のレイズなら納得できる」


 オズマの能力が徐々に明らかになってくる。だが、対策の手立てが思いつかない。


 この日の会議は、オズマが重力と炎のレイズを扱うダブルレイズという事実を、各部隊の大隊長が認識するにとどまったのであった。




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