10.エルフとの交渉
アリナとハーフエルフのエリワは馬車でエルフの森へと向かっていた。馬車と言っても車をひいているのは馬では無く、ダチョウのような鳥型の2メートルぐらいの大きさのモンスターだった。このモンスターは地理を把握し、目的地を伝えれば餌だけで運んでくれるので車夫もいらず馬車の馬の代わりに便利なのだそうだ。なのでアリナとエリワは移動中の時間は自由にしていられた。
「まずは状況確認の為に長老達に会って貰おうと思うけどいい?」
「でもあたしは人間だよ。嫌がられるんじゃない?」
「それはそうだけど、アタイだけじゃ切羽詰まってるのを伝えきれないんだよなあ」
エリワが困った顔をする。アリナはエリワの手助けが出来て、エルフ達にも効果的な方法が無いかと考えてみる。
「そうだ!!あたしがデビルの姿で行くのはどう?」
「魔法で変身するって事?エルフは魔法の耐性が高いからすぐに見破られると思うけど」
「そうじゃ無いよ。見てて」
アリナは魔力を物質化する祝福に加えて新たに覚えたデビルの呪闇術、そして着ている鎧である闇術鎧の形状変化を加えて自らの見た目を変更する。みるみる内にアリナの身体は巨大化し、赤肌の男のデビルの姿になった。アリナが動いて見せると違和感無く動く事が出来た。
「どう?どこから見てもデビルでしょ?」
「凄いな。鎧を着た生命体にしか見えない。
ただ、声はいつも通りなんだな」
「声も変えられるぞ」
アリナは口の中を祝福で調整して低い声へと変えた。戦闘などの激しい動きをしなければこのままで数時間居られる筈だ。
「ああ、いい感じだな。魔族の新しい将軍と紹介すればエルフ達も納得するだろう。
で、名前はどうする?」
「そっか、アリナとは名乗れないよね……。
じゃあ、シンプルにデビルのアリでどう?」
「まあ今だけならそれでいいか」
アリナはデビルの将軍アリとしてエルフの族長達に会う事に決まった。
「ここから先がエルフの森だから。馬車で入れるのはここまでだね」
エリワが止まった馬車から降りて言う。馬車は森に入ってから木々の間の小路をずっと進んでいたが、数十分経った頃に突然止まった。周囲の景色に大きな変化は無く、普通の森とエルフの森の境界はアリナには分からなかった。
「この先も道が続いてるし、同じ森に見えるよ?」
「このまま進むとずっと同じ場所をグルグルと回される。エルフにしか分からない森の入り口があるんだよ。
アリナ、さっきのデビルの姿に変身しておいて」
「分かった」
アリナは再びデビルの姿に変わる。ここはエリワに従って行くしかない。エリワが先導して歩き出す。エリワは道から逸れた木々の間を道が分かっているように進んで行く。アリナには適当に木の間をぐにゃぐにゃと進んでいるようにしか見えなかった。しかし、徐々に景色が変わり、周囲が薄暗く幻想的に輝く森の中にいつの間にか入っていた。
「どういう事?あたしの魔法探知でも変なところは無かったよ?」
「これは今の魔法体系以前の原始魔法である精霊魔法によって作られた入り口なんだよ。人間は精霊に嫌われてるから感知出来ないんだ。アタイはハーフエルフだから何とか見極める事が出来る」
「これならエルフは攻め込まれないし、ここに籠ってればいいんじゃない?」
「そうもいかないんだよ。精霊魔法っていうのは土地に限定された魔法で、例えば周囲の森を斬り倒されたり焼かれたりしたら効果が無くなるんだ。時間稼ぎは出来ても、ずっと守っていられるものでは無いって事」
エリワがエルフの森の入り口に使われている精霊魔法について説明する。アリナは魔法に関する本で精霊魔法について書かれていたことを思い出したが、詳しくは覚えていなかった。アリナも場所に特化した魔法を使う事は出来るが、精霊を意識した事は無かった。
「まあ、魔導帝国時代に発展した魔法は精霊魔法よりずっと優れているのは確かだよ。あの時代の魔術師ならエルフの森の入り口も簡単に発見出来た。今の時代の魔法はそれを引き継いだものではあるが、失われた技術も多い。そのおかげで精霊魔法が有効になっているのは面白い現象だと思うよ」
「あたしの友達に魔法を調べてた子が居たからその子に精霊魔法を見せてあげたかったな」
アリナはもういないガリサを思い出す。彼女ならエルフについても色々知っていただろうとも。
「ホームシックかい?だけど、もうすぐエルフの集落に着く。声も変えてくれ」
「大丈夫。
声も変えたぞ」
アリナは昔の記憶を追い払った。暗い森の中を進むと、そこには予想外の景色が広がっていた。人間社会と似たような舗装された道路に石で作られた高い建物が建ち並んでいたからだ。
「ここがエルフの森の中か?」
「まあ見て驚くよな。エルフは魔導帝国には入らなかったけど、その時に技術は受け取っていたんだ。魔法も精霊魔法は殆ど使わなくなって、新たな魔法を受け容れた。まあ人間も全てをエルフに与えはしなかったけど、それでもエルフの森が一気に発展したのは確かだよ」
アリナは周囲を見回し、確かに遺跡で見たような魔導帝国時代の技術があるのに気付く。部分的には今の王都よりも発展している部分はありそうだ。
「昔はもっと栄えてたらしいよ。エルフの土地を人間や魔族が狙ったのはこうした魔導帝国時代の技術を求めていたのも理由らしい。
と、無駄口はこの辺にして、そろそろ静かにした方がいいな」
集落の方から魔導鎧で武装したエルフ達がやって来る。手に持っている弓も魔導具の武器のようだ。
「これはエリワ様、急な訪問ですが何かご用ですか?」
一番立派な鎧を着たエルフの背の高い男性が聞いてくる。親し気な様子は無く、エリワが好かれていないのはアリナにも分かった。
「エルフの問題について魔族連合から早く解決しろって言われてるんだよ。これから長老達に状況を聞くから。デビルの幹部の方も状況の確認に来てるのはそういう事だよ」
「なるほど、分かりました」
エルフ達は道を開ける。ただ、エリワとデビルに扮したアリナが通り過ぎるのを嫌な顔で見つめているのだった。
「ここに居る連中はまだ長老達の意見を聞くが、若者は全体的に魔族連合に否定的だ。今の空気で分かっただろ」
「そうだね」
アリナはデビルの低い声で答える。このまま放置すれば大きな問題になりそうなのはアリナにも分かった。
エリワに案内された長老達のいる建物は由緒ありそうな木で出来た大きな屋敷で、アリナはようやくエルフらしい建物が見れて少しホッとした。
屋敷に入ると若い女性のエルフが対応し、少し待たされた後に広い会議室のような部屋に案内された。エリワとアリナは端の席を勧められて座る。奥の席には小柄なエルフの男女の老人が座っていた。エリワですら数百年生きてそうなので、この老人達が何歳なのかはアリナには分からなかった。
「待たせて悪かったのう、エリワ。今日はお客様もいるようだが、紹介して貰ってもいいかな?」
老人達の中央の席に座る皺だらけの男性のエルフが話し出す。このエルフが長老の中でも一番偉いのだろう。
「長老方、ご無沙汰しています。例の問題の件で、魔族連合の方が現状を確認したいと今日は付いて来てくれました」
「デビルの将軍、アリという。連合ではエルフの問題を早期に解決せよと言われて来ている。状況を教えろ」
アリナは出来るだけ威張って挨拶をした。エルフ達はデビル姿のアリナに恐れと軽蔑の視線を投げかけてくる。高齢ではあるが、ある程度の戦闘能力がある事をアリナは感じていた。
「アリ殿、わざわざ遠いところご来訪頂き感謝する。だが、状況は以前伝えた通りで進展も悪化もしておらん。
エルフの感覚は他の種族と比べてまったりしておる。もうしばらく放っておいて貰えんかな?」
「それは出来ないからわざわざ魔族の将軍まで来たって事だろ。
まあ爺さん達の言葉はもう受け付けないのは何となく分かる。それでも何とか説得してくるよ」
「エリワ、そんな事が出来ると思ってるのか?」
「出来る、出来ないって話じゃ無いんだ。出来なければどうなるか分かった事じゃないんだぞ。魔族の将軍が来た意味がどういう事か分からないわけでもねーだろ」
エリワはイラつきながら言う。
「分かった、またわしらから手紙は出しておく。それでも駄目ならエリワ、お前が何とかしてくれると期待するぞ」
「まあ出来るだけ頑張るよ。じゃあな」
エリワは話を終わらせるとアリナを連れて部屋を出て行った。結局ここに来た意味はあまり無さそうだった。エリワはそのまま元来た道を戻っていく。
「別のエルフの森に行く。連合に反対している奴らはそこに集まってるんだ」
エリワが質問し辛いだろうアリナに対して説明してくれる。ここに寄ったのはあくまで長老達に話を通しておきたかったからだろう。
エルフの森を出て馬車まで戻り、再び馬車が動き出す。
「もう変身解いて喋っても大丈夫だぞ」
「分かった」
アリナは馬車の中で元の姿に戻る。長時間変身していた為か、身体に違和感を感じてグルグルと腕などを動かす。
「見てきた通り、エルフの中で解決するのは無理そうだ。が、ここに寄った甲斐はあったよ」
「何か発見でもあった?」
「集落全体の雰囲気も魔族連合への嫌悪感が増していた。それにデビルの姿を見てあからさまに拒否感が出てた。このままじゃエルフ全体が連合から抜けるのも時間の問題だって事」
エリワはなぜか楽しげに話す。
「どう考えても悪い方に進んでるじゃん」
「ああ、そうだな。だけどこうなっている時の方が制御しやすい。中途半端な状態じゃ仲間割れするからな。
問題はどうやって納得させるかだ。自分達が魔族連合に守られてるって自覚させられれば一番いいんだけど」
エリワが困った顔をする。アリナもそろそろ何か案を出さねばと思う。自分がデビルの恰好をした事で、アリナは何かを掴んだような気がしていた。
「そうだ!!泣いた赤鬼作戦だ!!」
「アカオニ?なんだそりゃ」
叫ぶアリナに対してエリワが困惑する。
「ああごめん、昔読んだ本からいい案が浮かんだだけだから。
えーと簡単に説明すると、あたしが悪い人間の振りをしてエルフの森を襲って、それをエリワと魔族連合の人間が追い払う。こうすれば魔族連合に助けられた事になるし、自分達を助けてくれた人間達を悪くは言えない」
「なるほど、争いを仕組んで恩を売るわけか。
でも、本気で戦わないとバレるし、そうなると被害も出るぞ」
「て思うでしょ?そこは任せて。今のあたしはカダルを使って色々出来るんだ」
アリナはカダルの召還術を使ってダームという魔族のゴーレムを呼び出す。それをアリナが祝福で加工して鎧姿の人間の姿に変えた。
「どう?どこから見ても人間でしょ」
「なるほどな、これなら倒されてもいいってわけか」
ダームは簡単な命令を指示通り動くので本気で戦わせればバレないだろう。死体は負けて逃げ去る時に焼き払えばいい。
「本物の人間も連れてくればなおいいんだけど、流石に難しいでしょ?」
「そうだよなあ。後で人間姿のアリナが合流してくれれば誤魔化せるかな」
ダームは勿論喋ったりは出来ないので、長時間観察されるとボロが出る。やはりアリナ自信が入れ替わりで現れて人間として振る舞うのがいいだろう。アリナは2人で出来る大掛かりな作戦としていい案が出来たと満足していた。
しかし、アリナの案が使われる事は無かった。馬車が反対勢力がいるエルフの森に近付いた時にアリナが危険を感じたからだ。
「エリワ、エルフの勢力にエリワと同じぐらい強い人物はいる?」
「そんな人いないだろうし、いたら知ってる」
「だとすると、何かヤバいのが近くにいる」
アリナはその危険度が魔神やアスイに感じたぐらいの大きさだと祝福で察知していた。ディスジェネラルの中にもここまで強そうな存在は感じなかった。勿論ディスジェネラルで本性を隠している者もいるとは思うが。
「そのエルフの森の方向はこっちで合ってる?」
「ああ、そっちだ」
「じゃあその森が襲われてるかもしれない。急ごう」
エリワが馬車を止め、アリナとエリワは魔法で速度を上げて森の中を飛んで行く。すると遠くに森の木々が焼けているのが見えてきた。エリワは魔導鎧を、アリナはダルアを身に着け戦闘態勢で燃えている場所へと近付く。
「やばい、森が焼かれて精霊魔法が消えて、集落への入り口が開いた状態になってる」
「やっぱり襲撃されてる?」
アリナとエリワが近付いて行くとようやく状況が見えてきた。黒い鎧を着た集団が集落を守ろうとしているエルフ達を攻撃している。魔道具の弓で無数の矢を撃ち出すエルフ達だが、その攻撃は黒い鎧の集団には効いてないように見えた。アリナはその鎧の集団の中でも一際黒く深い闇を感じさせる鎧の人物が危険に感じた存在だと理解した。
「お互い戦いを止めろ。何してるんだ!!」
エリワは戦いの真ん中に入り叫ぶ。アリナもその横に並んだ。2人の介入で一旦戦いが止まる。見ると黒い鎧の集団の足元にはエルフの死体が並んでいて既に被害が広がっていたのが分かった。どう見ても鎧の集団の方が強者だと分かる。
「エリワ、助けに来てくれたのか」
「なんだこの状況は?」
「あいつらがエルフの森にいきなり入って来たんだ」
エルフの集団の若い男性の1人がエリワに説明する。
「ワタシは森を移動しただけだ。攻撃を仕掛けて来たのはキサマらだ」
黒い鎧の集団のリーダーと思われる闇のオーラを纏った黒騎士が喋る。魔法で加工しているのか中性的な声で、アリナは現実世界で聞いた機械音声みたいだと感じた。
「森を焼き払って集落に入って来てその言い分か。明らかな侵略行為だぞ」
「落ち着け。本当は悪意が無かったのかもしれない。先に攻撃を仕掛けた事は済まなかった。人間の部隊だと思うが、どこの国に属してるんだ?」
「ワタシはどこにも属していない。
それよりキサマは魔族連合のディスジェネラル、エリワだな。丁度いい。ここで倒しておこう」
黒騎士は剣を構え、それに合わせて周りの鎧の兵士も再び戦闘態勢に入る。
「あんた、何者?魔族連合の奴じゃないって事でしょ」
「名乗るほどのモノではない。
その鎧は魔族の力か。面白いヤツがいたな。好都合だ」
「アリナ、話が分かる相手じゃなさそうだ。その騎士は任せていいか?」
「うん!!」
こうしてよく分からない黒い鎧の集団との戦いが始まった。アリナは色々考えるより全力で戦える方が楽しくなっていた。
「ウソっ!?」
アリナは自分の攻撃が黒い鎧の兵士達に避けられた事に驚く。兵士達は単体ではそれほど強く無い筈なのだが、連携が取れていて、狙われた兵士を他の兵士が庇って剣筋をずらされ、他の兵士も合わせて攻撃してきて追い打ちをさせない。また鎧も硬いのか、軽い斬り込みだと受け流されてしまう。アリナは違和感を感じると共に自分が先程作ったダームを思い出し、何かが分かりそうな気がした。
「アリナ、避けろ!!」
エリワが叫びアリナは背後からの射撃を跳躍して避ける。次の瞬間エリワが魔導具の弓で放った光の矢が黒い鎧の兵士達を貫いていた。アリナは貫かれた隙間から人の肉体では無い機械の塊が覗くのが見えた。
(分かった、こいつらガーディアンなんだ)
アリナはようやく兵士達の動きが人間離れしていて、魔宝石のエルや地下で戦ったガーディアンに近い事に気付いた。それならこの正確な連携の理由も分かる。
「え?」
そんな分析をしていたアリナに急激な危険が迫り、アリナは初めてダルアの全力で回避をする。アリナのいた場所には黒い槍を持った騎士が急接近して攻撃していた。
「今のを避けるか」
「お返しだよ!!」
アリナは隙を突かれたのを怒って黒騎士に両手に持った剣で攻撃する。神機と変わらぬ速度のアリナの剣撃は黒騎士の槍によって防がれていた。凄まじい運動神経と力だ。
アリナは一気に終わらせようと複数の刃を展開し、それで波状攻撃を仕掛けつつ本命の剣での攻撃を連続で繰り出す。しかし、黒騎士はそれすらも驚異的な反射神経で避けつつ受け流し、更に攻撃の隙間から槍を繰り出してきた。
(なんなの、コイツ!!)
アリナは魔神や竜神にさえ通じると思った攻撃が防がれる事に苛立ちを感じていた。相手がデビルでこちらの攻撃が弱体化しているとも思えない。一つだけ分かった事は着ている黒い鎧や槍が特製の魔導具である事ぐらいだった。
アリナは何とか相手の隙を見極める為に一旦距離を取った。
一方、黒い鎧の兵士達はエルフ達の攻撃で動きを止めたところにエリワが攻撃して少しずつだが敵を撃破していた。エリワの矢は速度と威力が凄まじく、敵の兵士が瞬間的に避けるのは不可能だった。
「なるほど、転生者級が2人か。これ以上の被害は避けたい。
戦いはまた今度にお預けだ」
「あんた逃げる気?」
アリナは黒騎士を逃がすまいと攻撃を仕掛ける。しかし黒騎士が何かを唱えるとその姿は霧のように薄れていく。それと同時に周りにいた黒い鎧の兵士達の姿も同様に霧に変わっていった。結局アリナの攻撃は空振りし、黒い鎧の兵士達の死体さえも全て消えてしまった。
「逃げられたな」
「エリワ、あんたの事知ってたみたいだけど、今の奴らが誰なのか本当に知らないの?」
「ああ、初めて見たしこんな奴ら聞いた事も無い。
それより息があるやつを救出するぞ」
「分かった」
エリワとアリナとエルフ達は急いで負傷者の救出作業に移った。
2人の到着が戦闘が始まってからそれほど経って無かったので被害は10数人の死亡で済んだ。ただ、森の入り口が焼かれた事でこの集落は木々が戻るまでしばらく使えない事になったそうだ。
「エリワ、来てくれて本当に助かった。それにそちらの人間のお嬢さんもありがとう」
「本当はアタイはあんた達を説得に来たんだけどね、こっちのアリナも」
「あたしはアリナ・アイル。人間だけど今は魔族連合に属してる。
こんな状況だし、他のエルフの森に移って、魔族連合とも仲良くした方がいいと思うけど、どう?」
アリナはついでのように今回訪れた目的を果たそうとする。ここのエルフのリーダーと思われる男は周りのエルフ達の顔を見つめる。皆の顔は暗かった。
「そうだな。俺達だけではどうにもならない事があるとよく分かった。それに2人に助けられた恩もある。俺達はしばらくは大人しくするよ。
それとは別に2人が困った時は手助けする。エルフだって恩義に報いる礼儀は持っているからな」
「ありがとう。良かったな、アリナ。早速成果が出せたじゃないか」
「まあ、エルフ達を助けられたのは良かったけど、襲って来た奴らを逃がしたのは悔しいなあ」
アリナは正直に心情を語る。
「いいんじゃない、逃げたのは向こうだし。また戦う機会はあるでしょ、きっと」
エリワは気楽な感じに言う。新たな問題よりも自分の肩の荷が下りたのが嬉しいのだろう。アリナはエリワがこれだけの能力があるのに面倒臭い気持ちが先行してるのが何かおかしくて笑顔になっていた。