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そいつは誰だ!優しく強い拳法使い(3)


「すまんな、旅の者に見苦しいモンを見せちまった。それにしてもあの人参野郎、バカなやつだぜ。」

「あの人参、どうかしたのか?」


 ほうれん草は大人野菜たちの話を聞く。


「アイツの姉さんがよ、玉ねぎのやつらに人質として取られちまってんだ。他にも色んな野菜が奴らに不当に捕まってる。魔王城に送られて奴隷にされたやつもいる。アイツは水をたくさん貯めて姉さんを返してもらおうとしてんだ。本当にバカだぜ。」


 ほうれん草はその話を聞いて心を痛めた。健気な人参姉弟の平和を奪う今の状況が許せなかった。


(待っていろ人参、必ず俺が姉さんを助けてやる。)


 一方町の礼拝堂、玉ねぎ団の根城には人参少年が訪れていた。くすねて集めた大きな水のボトルを玉ねぎ団に渡している。


「お疲れ様よガキンチョ、ガハハハハ!」

「はは……」


 玉ねぎのボスが渡された水を早速飲んで大笑いした。


「それで、姉ちゃんはいつ帰ってくるんだ?」

「あぁ? あーそうだったな。この前魔王様に連絡して返してもらうように言ったからよ。今帰ってきてる最中だろうよ。」


 とボスは言った。少年は安心してその場からすぐに立ち去ろうとした、その時だった。玉ねぎのボスに魔王城から命令が届いたのだ。


「ボス、魔王からこんな指令が!」と玉ねぎの部下が一通の手紙を渡した。

「なになに、実験の為に急遽生贄が必要となった。若くみずみずしい野菜の奴隷を一人差し出せ、か。」


 その指令を聞いてすぐに人参少年を見た。


「とりあえずこのガキを連れてけ、この町じゃ一番新鮮だろ。」


 少年はギョッとした。


「ちょっと待てよ! 姉ちゃんに会わせてくれる約束だろ、しかも水もこんなに渡してるのに俺を送るのかよ!」

「ガキンチョ、一応言っとくがお前が水を持ってくるのは『当たり前』のことだ。あとこの程度水を貰った程度でテメェの姉ちゃんが帰ってくるわけないだろ。」

「え、さっきすぐに帰ってくるって言ったじゃないか!」

「あれは嘘だ。そもそも奴隷一人がどうなってるかなんていちいち気にしてねぇんだよ俺らは。何ならもう生贄として死んでるかもなぁ? ガハハハ!」


 それを聞いた瞬間、少年は膝から崩れ落ちた。絶望感で身体が震えて立ち上がれない。自分の姉がもうとっくに死んでるかもしれないと知って、涙が止まらなかった。


「そんな、姉ちゃん……。」

「連れてけ。」


 玉ねぎ数人が人参少年を捕まえて外に連れていこうとした。人参は怒りと悲しみで叫ぶ。


「嫌だ! 嫌だ! 殺してやるっ……! お前ら全員皆殺しにしてやるううう!!」

「ガハハハハハハ、好きにわめけ。こういう活きの良いやつは魔王様の生贄に最適だ。」

「くそぉおおおおお!」


 扉が開いて外に人参少年が連れ出されてしまった。


 次の瞬間、少年を掴んでいる玉ねぎ数人が全て吹っ飛ばされた。礼拝堂の壁にめり込む。


「な、何だ!」


 扉の外には、青々とした身体のほうれん草が現れた!

 そう、人参少年を助けに来たのだ。


「人参少年よ、殺してやるとかそういう言葉を吐くんじゃない。憎しみだけでは救えるかもしれない姉さんも救えないぞ。あとは俺がやってやる。」


 人参少年は泣きながら逃げていった。そしてほうれん草は構える。最弱の拳法、宝蓮双拳を!


「コイツか! 半グレを謎の力で返り討ちにしたほうれん草ってぇのは。お前らやっちまえ!」


 ほうれん草一人に対して、その場にいる玉ねぎは数十人。それらが一斉に襲いかかる!

 しかしほうれん草は落ち着き払って一呼吸。そして宝蓮双拳の秘技を発動する!


「秘技・宝蓮百双(ほうれんひゃくそう)(けん)ッッ! ホウレレレレレレレレレレェエエレェエエエンソウ!!」


 彼は四方八方から向かってくるナイフや棍棒による攻撃を全てかわし、逆に全員のツボを付いて見せた。


「ぐはっ……」


 襲ってきた玉ねぎたちは全員気絶した。


「あとはボスのお前だけだ。純粋な子供の心を踏みにじったお前の腐った心、徹底的に浄化してやるぞ。」

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