詩「土中の遠吠え」
君には見えるだろうか
あの海が
君には聞こえるだろうか
この声が
山の中腹に眠る君よ
家畜と共に眠る君よ
そちらの世界にはありますか
君の好きだった散歩の時間が
草木ゆらめく獣道
坂に忘れてきた水筒の影
石段を一歩 一歩 また一歩
小さな祠のすぐ横に
私達は君を埋めた
私はすぐに帰郷した でも、
すでに固く冷たくなっていた君
尻尾を回していたのが嘘のよう
最後の最後に 母の手を舐めた
と 全てが終わってから聞いて
私はやっと涙を流した
もっと遊べばよかった
後悔しているのは
君だけじゃないんだ
そう思いたい
追うように兄貴が亡くなり
あちらの世界で また
影を重ねて遊んでいるのだろうか
そういえば真っ先に帰ったのも
兄貴だったよな
いつだったか 君の墓碑に
蝉の抜け殻が 付いていた
ああ 確かに 君だ
聞こえるよ 力強い君の遠吠えが