プロローグ
2050年 4月 都内某所
株式会社ネクストの新商品発表会が開かれた。
これまで様々なゲームを作成、販売を行ってきたことで有名なネクスト社が新たな製品を発表するとあって多くの注目が集まっていた。
しかも、今回発表するのは既存のゲーム機の新しいゲームソフトではなく、新しいゲーム機なのでは?という噂も囁かれている。
会場には数多くの記者、メディアが集まっていた。
するとひとりの男性が壇上に上がった。
「皆さま、本日はわが社の新商品発表会にご参加いただき、ありがとうございます。
私は株式会社ネクストの代表取締役、新宮司でございます。
わが社はこれまで多数のゲーム機を発売してきました。代表作には、携帯小型ゲーム機『NEAR』、多種多様なゲームを遊べる家庭用テレビゲーム機『NATURE』など、様々なゲーム機がございます。
しかし、今回発表するのは今までとは一味も違うゲーム機になります。
今回発表するのはわが社が新たに開発した
"VR"ゲーム機『NEW WORLD』です!」
壇上にヘッドマウントディスプレイと四角い筐体が現れ、後ろのスクリーンに大きく写し出される。
「今まで小説、マンガ、アニメなど、様々なジャンルでで話題になり、空想のものだと思われていたVRゲームがついに現実のものになりました!
銃弾が飛び交う戦場で戦うシューティングゲームも!
拳と拳のぶつかり合う格闘ゲームも!
疾走感溢れるレーシングゲームも!
巨大なモンスターと戦うアクションゲームも!
勇者となって魔王に挑むRPGも!
すべてが全くの別物になります!まさしく『新しい世界』に!
そして、その『NEW WORLD』の1つ目の世界が、VRMMORPG『Soul & Blade Online』です!」
壇上のスクリーンに紹介ムービーが流れはじめた。
ーーーーーーーーーーーーーー
広大な草原にオオカミやウサギ、鳥など、様々な動物達が駆け回り、あるものは狩り、あるものは逃げ、またあるものは悠々と空を飛んでいる。
場面が切り替わり、洞窟が映った。
4人の男女が洞窟を進んでいる。
すると洞窟の影からゴブリンらしき魔物が襲ってきた。
盾を持った男がその攻撃を防ぎ、隣にいた槍を持った女がその隙をついて攻撃する。
ゴブリンが離れた隙に神官の男が盾を持った男を回復させる。杖を持った女がゴブリンに火の玉を放つ。
直撃したゴブリンはポリゴンとなって消えた。
4人の男女は態勢を整え、洞窟の奥へと進んでいった。
また場面が切り替わると、今度は街の中だった。
ーーーーーーーーーーーーーー
人びとは賑わい、街は笑顔で満ちている。
街の中心には西洋風の城があり、都市とも呼べるような巨大な街だ。大通りには様々な人がいて、肌の色が違う人も少なからずおり、さらには獣人やエルフもその喧騒の中にいた。
ーーーーーーーーーーーーーー
画面が暗転し、ひとつの文章が映し出される。
『魂の赴くままに、この世界を。』
「いかがでしたか?
この映像はすべてゲームの中で撮影されたものです。広大な自然も、いきいきした動物達も、街の人びとも、すべてゲームで実際に見ることができます!まさに新しい世界と言えるでしょう。」
「さて、これまでこのゲームの映像を見てもらいました。続いてはゲームシステムについて紹介いたします。
このゲームの舞台はこれまでのMMOにも多くあった剣と魔法のファンタジーの世界です。武器とスキルを選び、この世界へと降り立ちます。
しかし、これまでのMMOとは違い、職業や種族というものがありません。
これはVRならではのプレイヤーの自由度を活かすためです!
職業や種族がないということは、職業や種族による制限がないということです。
先ほどの映像の最後にありました『魂の赴くままに、この世界を』とは、文字通り、魂の赴くままに!自由に!なりたい自分になれるんです!
先ほど種族がないと言いましたが、もちろん見た目も自由ですので、エルフのように、または獣人のようになることも可能です。
そして、このゲームの一番の特徴は、プレイヤーの行動によって様々な称号を与える、『ソウルレコードシステム』です。
プレイヤーの強さはステータス、武器、スキル、などなど様々な要素が影響してきますが、その中でも一番影響するのがこのソウルレコードシステムの称号です。
この称号は、獲得することで様々なスキルが使えるようになったり、ステータスに補正がかかったり、様々な効果がございます。
そのうちのひとつをご紹介いたします。」
ーーーーーーーーーーーーーー
《魂の旅人》
説明:この世界に降り立った旅人達に与えられる称号
効果:レベル10になるまで経験値2倍
ーーーーーーーーーーーーーー
「こちらはゲームを始めたプレイヤー全員に与えられる称号です。この通り、かなり強力な効果となっています。このような称号がそれこそ、無数に存在しています。さらにその中には、一人しか獲得できないユニーク称号も存在します。ぜひとも探してほしいです。
他にも様々なコンテンツを用意しており、是非、体験していただきたい。
最後になりますが、このゲームは自由です。何をするのもすべて自分の意思のままにできます。
ですが、このゲームはプレイヤー、NPC含めてもうひとつの世界であることを忘れずにいただきたい。
『魂の赴くままに、この世界をお楽しみください。』」