三回追放された僕は、辺境の地で獣人姉妹の専属回復師になりました
僕の名前はルーク・スメイル。
冒険者としての活動を始めてまだ一年くらいだったけれど、この度無事に追放されました。
「攻撃できないなら他の魔導師をパーティに入れることにした。だからお前はいらない」
それが、僕をかつてパーティに誘ってくれて、一緒に一年も活動してきた仲間の言葉だ。
けれど、僕はそのパーティに縋るようなことはしなかった。
……慣れてしまったという言い方はおかしいかもしれないけれど、実はこういうことは初めてではない。
僕は元々、地方貴族の生まれだった。
魔導師として優秀な家系であり、特に火属性に優れていたのだけれど……僕が使えたのは回復魔法だけであった。
『だけ』というのは正しい言い方ではないかもしれない。
僕は攻撃魔法が苦手で、努力はしたけれどうまくは使えなかった。
「お前はこの家には不要だ。出て行け」
だから、実家を追い出された。
その後は、王都で魔法学園に入学した。
回復魔法が使えるのは支援魔法使いとしての道がある……それで特待生として入学したのだけれど、結局そこでも最低限の攻撃魔法が使えることは必要だったわけで。
学園の水準にたどり着けなかった僕は、
「あなたはこの学園に相応しいレベルにはない。故に、退学処分とします」
そうやって追い出された。
幸い、学費が借金となることはなく、僕は生活のために冒険者になったのだけれど……。
「これで三回目かぁ……」
空を見上げてポツリと呟く。
王都でもそれなりに知られるようになったパーティを追放されてしまって、僕はもうそこに戻る気も起きなかった。
今はどこか、静かな場所にいたい。
そう思って、僕は人里離れた辺境の地へとやってきた。
僕の暮らしていたところよりもさらに辺境で、こういうところは冒険者の数も少ないらしい。
でも、僕は攻撃魔法が得意ではないので……冒険者としての活動は微妙だ。
回復魔法が得意なのだから、いっそのこと診療所でも開こうか。
そんなことを考えている。……まあ、王都とかになると開業費がかかってしまい、とても無理なわけだけれど。
せめて、魔法学園が卒業できていれば違ったのかもしれない。
「でも、自然豊かなのはいいことだね」
到着したばかりで、まだ宿も見つけられていないけれど、すぐ近くに森があって、川のある綺麗な場所であった。
『ランベヌ村』という名前で、家がぽつぽつと建っているくらいで、人口が少ないのも分かる。
こういうところだと、冒険者の数はいよいよ少ないのではないだろうか――そんな風に考えていると、がさがさと近くの木々が揺れた。
「! もしかして……」
魔物か――そう思って身構えると、出てきたのは二人の少女だった。
まず目に入ったのは、特徴的な狼のような耳。
それに尻尾も生えている。
色は二人とも灰色で、見た目が似ているところを見ると姉妹だろうか。
ただ、一人はかなり具合が悪そうだ。
「メイア、大丈夫か? すぐに医者のところに連れて行くからな!」
「う、うん……」
「あの……」
「! む、丁度良いところに! おい、頼む! この子を一緒に医者のところに連れて行ってくれ!」
「! どうしたんですか?」
「魔物と戦って、怪我をしたんだ。いつもより強い奴だったから……」
そう言う少女の言葉に、二人の様子を確認する。
少女の方も怪我をしているが、もう一人の少女――メイアの方は、さらに大きな傷を負っていることが分かった。
けれど、これくらいの怪我なら、僕でも簡単に治せる。
「あの、僕でよければ治療しますが」
「! ほんとか? もしかして、お前は医者か!?」
「あ、いえ、医者ではなくて冒険者なんですが……今は休業中でして。それよりも、お二方ともすぐに回復しますから」
そうして、僕は二人に向かって手をかざす。
展開するのは《回復陣》――緑色の光に包まれ、すぐに傷の治癒が始まる。
魔力を活性化させ、傷を癒すのが回復魔法だ。
「お、おお! すごいぞ! みるみるうちに回復していく! メイア、大丈夫か?」
「う、うん。あ、ありがとうございます」
「気にしなくていいよ。これくらいなら安いものだし」
「お前のおかげでまた狩りに行けそうだ」
「そうだね、お姉ちゃん」
「え、狩りって怪我をしたばかりなのにまた行くんですか?」
「ん? 当たり前だ。この辺りは魔物が多いから、アタシ達が狩りをして数を減らしてるんだ!」
「そ、そうなんです。さっき戦った魔物も、まだ倒せたわけではないので。治していただいてありがとうございました」
「そうなんだ……」
その言葉を聞いて、僕は少し悩んだ。
今の怪我をしたのに、また魔物を狩りに行くとなると――また大きな怪我をして戻って来るかもしれない。
あるいは戻って来られないかもしれないし……とはいえ、ついていくというのも、戦えない僕では迷惑かもしれない。
「そうだ、アタシの名前はマイニ! お前は?」
「僕はルークだよ」
「わたしはメイア、です」
「ルーク! お前は冒険者なんだろ? だったら、一緒に来てくれ!」
「え……? でも、僕は回復魔法くらいしか役立てないよ」
「何を言ってるんだ。回復してくれるなら、いくらでも戦える! それがほしい! 頼む、一緒に来てくれ!」
「お、お姉ちゃん。初対面なのに、そんなの迷惑になるって」
「む、そうか……。メイアが言うならそうなのか……」
妹の言葉を聞いて、露骨にしょんぼりする姉のマイニ。
動物的な特徴を持つ獣人は、その時のテンションが分かりやすく耳や尻尾に出る。
僕は、思わずくすりと笑ってしまった。
……まあ、どうせ僕もやることがあってここに来たわけじゃない。
いらなくなったら追い出されることにも慣れているし、必要とされるのなら、その時に役立てたらいいかな。
「いいよ。一緒に行っても」
「え、いいんですか?」
「うん、でも僕は回復しかできないよ」
「それがいい。むしろそれでいい! 戦うのは、アタシ好きだからな! メイアも戦うのが好きだ!」
「わ、わたしはお姉ちゃんと一緒にいたいだけだから……。でも、ルークさんが一緒に来てくれるのなら、心強いです」
「よし! そうと決まれば……アタシ達でパーティ結成だ! 今日は魔物を狩って狩って狩りまくるぞ! おー!」
「お、おー!」
テンションの高い姉に対し、振り回されている妹――かと思えば、意外とメイアの方もノリノリだった。
辺境の地で、随分とおかしな姉妹とパーティを組むことになってしまった。
今回はどれくらいで追放されることになるだろうか……そんな風に考えていたけれど、このすぐ後に一緒に暮らし始めることになるなんて、僕は思いもしていなかった。
追放物の練習的な感じで書いてみました。
実際には明るい姉とちょっと内気な獣人姉妹と見た目が可愛い僕っ子主人公を書きたかっただけじゃあないよ。




