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それは夢の中で見た現  作者: 松葉 光
2/2

1夜目:夢の世界で僕は少年を見つけた

この話にするのかい


これは1543年


今から200年以上前の話だ






物語の始まりは誰かの夢の中


ふわりふわりと漂うだれかの幻想の中


そう、そこに現れた一人の少年から物語は始まるんだ





空中から一人の少年が現れた


青いジャージと蜜柑色の髪が対照的で鮮やかだ


辺りの人々はいきなり現れた少年に見向きもせず


何事もなかったかのように時間は進んでいく


少年は翡翠のようなきれいな瞳で辺りを見渡した後


「今回もまた同じか」


そう呟き何かを諦めたような顔で笑っていた


人々は少年に当たることなく体の中をすり抜けていく


まるで幽霊か何かと同じように彼は人々にいや、この世界に認識されていなかった


彼は本来ここに居るべきものではないのだろう


だからここの住人にとって彼は存在しないものとなっている


彼はそのことを解っているようで、認識されないことが当たり前だと知っているようで


それで彼は悲しそうに、諦めたように、辛そうにして笑っているのだろう






あれから6時間ほどが経過した


少年は道の端にしゃがみ込んで行きかう人々を見つめている


ふと辺りを見渡すと世界の色が褪せてきていた


朝になりこの世界の主が目覚めようとしているのだろう


崩壊する世界を眺める少年は無表情のまま涙をこぼしていた






窓の外から朝日が差し込んでいる


今日はとても良い天気のようだ


少年は目を覚ますと枕もとのタオルで涙の跡を拭った


ベッドから起き上がり制服に着替えてゆく


すぐに着替えは終わり準備もできたようだ


「トモー、朝ごはん出来たわよー」


一階の方から女性の声が聞こえてくる


「はーい」


そういいながら鞄をつかみ階段を駆け下りていく


鞄には「久宿 智」と書いてある


これが少年の名前のようだった


階段を駆け下りた後、智はリビングへと駆け込んだ


リビングのテーブルの上には朝ごはんが置いてあり、椅子には智に似た少年が腰掛けていた


髪は智よりも少し濃く茶色に近い色で瞳は智と同じ翡翠色をしている


「おはよう」


そう智が声をかけると、智に似た少年は


「おはよう」


と返事をした


智は台所にいた女性にも同じように挨拶をした後、朝ごはんを食べていく


リビングにあった鞄には「久宿 太一」と書いてある


太一の方が智よりも幼い印象がする


きっと弟なのだろう


二人はごはんを食べ終えると鞄を手に持ち女性に声をかける


「行ってきます!」


玄関から外に出た後、智は左に太一は右に進んでいく





智は20分ほど歩き、学校の門をくぐった。


「よう!おはよう!」


智が門をくぐった時、後ろから声がした


声をかけてきていたのは智と同じ学生服を着た少年だ


しかし智とは違い自転車に乗っている


「今日はどうだったんだ?」


「何時もの通り」


彼らはそう一言会話をした後別の方向へと進んで行く


智は玄関へ、もう一人の少年は恐らく自転車置き場へ


学校…ここはおそらく中等学校


智と先ほど居た少年はここの生徒なんだろう


きっとこれが彼等の日常


何も代わり映えのしないいつもの風景


けれどそれは永遠に続くものではなかった






「今日はここまでにしよう」


彼はそう言って本を閉じた


「続きはまた今度、君がここへ来た時に」


私はそれに頷き目を閉じてこの世界を抜け出した

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