既視感
「あれ、寝てたのか…?」
周りを見渡してみれば、前にみた時と同じような病室にいることがわかった。
「あれ?夢落ち???夢だったの!?どこから!?」
「いや、夢じゃないよ?」
「んんっ!?」
びっくりして振り返ると、そこには前に見た病院の先生がいた。
「夢じゃないってどういうこと…?」
実際には言葉の意味はわかっていたが、聞かずにはいられなかった。
「そのままの意味さ。君は人質にされて、屋上に連れていかれ、犯人に乱暴に扱われ、血だらけで死にかけていた。」
絶句。夢だと思ったいたことが夢でなかったと簡潔に証明されてしまった。
しかし、夢ではなかったというのであれば、彼には疑問に感じることがある。
「あれ、じゃあ俺は何で死んでないんですか?」
「うーん、奇跡だね。本当に奇跡だった。たまたま助かった。」
「え、奇跡って、そんな」
「本当のことなんだよ。君が発見されたときすでに時間ががたちすぎて、生き残れる確率なんてないも同然だった。なのに君は奇跡的な回復で生き延びた。これは医療技術がすごいとか、そんなもので表せないよ。まさしく奇跡でとてつもなく運がよかった」
二ヤリと笑いながら話す病院の先生の言葉に彼は「ははっ」と乾いた声を出しながら、『運が良かった」という言葉の意味をかみしめる。
そういえば、最初は車に引かれそうになったが、横から車が飛び出してきて運よく助かった。
その次は間違えて刺されて、死ぬかと思ったけど、前の事件で救急車が近くにいて運よく助かった。
そして今回は傷が開いて発見も遅くてやばいって状況だけど、運よく助かった。
そう。彼は生き延びているのだ。どれだけ危機迫る状況に巻き込まれいても、奇跡的に助かっているのだ。
「先生、俺めっちゃ運がいいのかもしれません。」
彼はまるで希望に満ちた目で思ったことを伝えた。
「うーん。でも本当に運が良ければそもそも死ぬようなことに巻き込まれないんじゃないかな、ましてや二回も」
先生はすこし遠慮がちに彼の運の良さを否定した。
「それは…確かにそうですけど。でも二回じゃなくて三回なんですよ。刺される前に一度トラックにはねられそうになったんですけど、ぎりぎりで他の車と衝突して」
そう言って彼は、トラックにはねられそうになったことを細かく話した。
「刺されたときに近くに救急車がいたのはそんな理由があったんだね。でもそんなに偶然って重なるもんかな?もしかしたら死神なんかが君のことを狙っているのかもしれないね」
そんな事情を聴いて、先生は更に顔をニヤリとさせて笑った。
「死神なんて怖いことそんな笑顔で言わないでくださいよ…」
「冗談だけど、本当に死神みたいなものに狙われてるならもしかしたらまだ何かあるかもしれないし、一様僕が監視をしとくから、安心してね。」
彼にとってはうれしくも、「この人は実験動物を観察する感じで監視とかいってるんじゃないだろうか…」なんてものすごく失礼なことを考えていた。
それからしばらくたち、先生の予想は当たることなく、何も起きなかった。
監視がなくなるとき、先生は期待が外れたみたいな顔をしていた気がした。
先制の予想は外れたが、実験動物感覚という予想は当たっていた気がする。
病院生活を続け、ついには二本の足で歩けるようにまで回復し、退院まであともう少しというところだった。
トイレを催した彼は病室からトイレに向かって歩いていた。
トイレの前には、清掃中という立て看板が立てられていた。
「清掃中か、運わるいな~。いっこ下にいくか」
しょうがなく、別のトイレへと行くために階段へ向かう。
そしてその階段から足を踏み外し、ごつんと頭を打った。
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「はぁ、あなたなんでそんなにしぶといの?」