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ここは、どこだ?


目を開くと、なんとなく白を連想させる場所だった。


ぐるりと見渡して、ある程度自らの中で納得できる場所が思い当たった。


「どこだここは?病室か?」


見渡すと、白い清潔な部屋で寝かされていたことが分かった。


「あら!目を覚ましたの?今から先生と親御さんを呼んでくるから待ってて!」


たまたま様子を見に来たナースさんらしき人が俺の顔をみて、何かを言ってどこかに行ってしまったが、これでここが病院だと確信した。


「俺、なんで病院にいるんだっけ?」


意識をなくす前のことを思い出そうとし、ハッとする


「そうだ、よくわからない女性に背中を刺されて」


そこまで考えると、その時の記憶がフラッシュバックしたように思い出した。


(また生き延びたのか…はは)


しばらくすると、母親と病院の先生が現れた。


彼の顔を見て母親がすぐに彼に話しかける。


「よかった。目を覚ましたのね。」


「う、うん。」


彼の母親は泣きながら、彼に買い物を頼んだことを謝った。


「いや、かあさんが悪いわけじゃないから気にしなくていいよ!」


母親を心配させないようにと、母に罪意識を持たせないようにと、精一杯に笑顔でそう答えた。


その意図をくみ取った彼の母親は、笑顔で「本当によかった」と言った。


「そうえいば、俺はいったい何日ぐらい寝てたんですか?」


と、すこし気になっていたことを聞いてみた。


「そうだね。ここに緊急搬送されてざっと30時間ぐらいだよ。」


「え…3日ぐらい寝続けたみたいな感じじゃないんですね。」


「確かに3日ぐらい意識が戻らない、いや一生意識が戻らない恐れもあったけど、君が刺されたと同時ぐらいに近くに救急車がきていてね。それで君の搬送がスムーズにできたおかげかな。」


病院の先生はニヤリと笑って、とんでもないことをサラッと言った。


(え、一生?)


これ以上聞くのはなんだか怖いので、この話は聞かないようにしよう。


「そういえば、俺、背中を刺されたと思うんですけど、刺した人はどうなりましたか?」


「君を刺した彼女は近くにいた男性に取り押さえられ、警察に引き渡されたよ。もともとは別の人を刺すつもりだったが、ちょうど近くで事故が起こり、皆の注意がそれていたことでチャンスだと思い、近くにいた後姿の似ていた君を間違えて刺し殺してしまったとその場で自供したらしいよ。」


ニヤリと笑ったままの顔で病院の先生は言葉をつづけた。


近くにいた男性とはきっと、轢かれそうになった俺を丁寧に介護してくれた男性のことだろう。


「まぁ君は死んでないけどね。ははは」


なんて結構どぎついジョークを交えながら、病院の先生は彼に刺された経緯を話した。


「はは、そうですか…」


なんて苦笑いしつつ、受け流す。


「間違えて刺されるなんて今どき珍しいね。そんな事件は僕がこの病院に勤めてから初めてだよ。面白いね君」


「はは、そうですか…」


まるでロボットにでもなったように同じ言葉で発する彼を見て、病院の先生は笑顔になっていた。


(この人たぶん、性格悪いわ。医者に絶対向いてないわ)


なんて失礼なことを考えつつも、色々と他にも事情を聴かれ、話し終わるとしばらくは安静にしたほうがいいといわれ、病室を去っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それからしばらく時間がたち、母親には「とりあえず頭の整理をしたいから」と言って、一人にさせてもらった


「一日に二度も死にかけるなんて、なかなかないよなぁ。でも二度あることは三度あるっていうし、まだなにかあったりしてなぁ」


なんて不吉なフラグをたててしまった彼だが、すぐにその予想は的中してしまう。


ドーーーーン!!!


大きな爆発音が病室に響き渡る


「え…?」


何度目だろうか、この言葉を発するのは。


「嘘だろ、本当にまだ何かあるのかよ。俺呪いでもかけられてんのか…?」


バンッ!と勢いよく扉が開かれ、覆面をした男が彼の病室に入って来た。


もしかしたら、別の先生だったりするのかな!あはは!性格の悪い先生の次は手荒な先生か!


「おい、兄ちゃん!ちょっと一緒に来てもらおうか!」


(そんなわけないですよねー)


入ってきた覆面男は乱暴に彼の胸倉をつかみ彼を連れて病院の屋上へと昇っていく。


屋上へと続く扉は事前に鍵を開けられていたのか、すんなりと開いた。


ヒュゴォオオオオ~


風の音が大音量で聞こえ、その音に混じってパトカーのサイレン音が聞こえてくる。


覆面男が拡声器を使って尚且つ大声で何かを警察に向かって言っている。


一方彼は、どうして自分がこんなことに合わないといけないのか、なぜ自分だったのか、沸々と怒りがこみあげてきていた。


しかし、何度か死にかけたからか、こんなことが起きているのにも関わらず、無駄に思考はすっきりとしている。


覆面男を見れば、この人はいったい何故こんなことしてるんだろうっと考えられるぐらいの余裕があった。


泣きながら自らを拉致した覆面男を凝視していると、覆面男は気まずそう顔をそらした。


「すまないな、兄ちゃん。俺の事情が済んだら開放してやるから、もう少し俺に捕まっててくれ。」


なんだかこんな事件を起こす犯人とは思えない言動に、少し気持ちが楽になった。


しかし、相手はこんなことをしでかす犯罪者だ。言われた言葉はあまり信用はできないだろう。


希望を与えておいて、「もうお前は要済みだ」と言われて、開放した瞬間に殺されるなんてあるかもしれない。


しばらくすると、何か進展があったのか覆面男もあわただしく準備を始める。


覆面の男は彼のほうに近より、一言彼に言った。


「もう終わった。これから兄ちゃんを解放する。迷惑かけてすまなかった」


「え?いえ、おきになさらず?」


そんな謝罪をされ、どもりながらもどこかおかしい返答する。


先ほど言っていたことは本当で、この覆面男は俺のことを解放するつもりらしい。


こんなことをする彼には、何か事情があったのだろうと察する。


あぁ、やっと終わったと安堵し、体から力が抜ける。


ばたりと倒れる彼に覆面男はびっくりし、彼に近寄る。


「大丈夫か?まだ人質から開放してもないのに、緊張が解けて力が抜けたか?」


などと聞いてくるので、「あぁ、そうだよ」っと答えようとした。


「ぁ…ぁ…」


しかし、身体に力が入らず、声が出ない。口をパクパクさせながら、自分の状況がわからずに混乱する。


「おい、兄ちゃん大丈夫か!?」


そんな異変を感じ取ったのか、覆面の男は慌てて、声をかける。


じんわりと背中が温かくなる感触がする。


そして彼は刺された背中の傷が開いたのだと気付いた。


病人を屋上まで走らせるよう乱暴に扱えば傷が開くことぐらい予想ができたことである。


だが覆面男はそんな彼の事情など知らなかった。


「そんな…兄ちゃんすまねぇ、今、警察の人を呼んでくるから待ってろ!」


おおよそ犯罪者側が絶対に言わないであろうことを言い放ち、覆面男はどこかへ走っていた。


そんな言葉を最後に彼の意識は遠くなる。


(さすがに、今回は死んだな。ははは。二度あることは三度あるって、本当だったんだなぁ…)


どんどん血だまりが広がり、体の感覚がなくなっていく彼は、自らの死を悟りゆっくりと瞼を閉じた。


そのころ覆面男は階段に戻り、警察に事情を説明しようとしていた。


しかし、何も持たない手ぶらの犯人を見た警察はすぐさまに身動きできないように犯人を押さえつけた。


押さえつけられた犯人が「兄ちゃんが!兄ちゃんが!」と叫んでいたがそこにいた警察官は全く聞く耳を持てなかった。


犯人を確保した後に、数分遅れて人質がいたことを思い出した現場の警察官達は急いで人質の回収に向かったが、なかなか見つからず、とき遅くして、血だらけで倒れている彼をみつけて急いで治療室に運んだ。


もしも、この時警察官が犯人の言葉に耳を貸し、彼の発見がスムーズにいけば彼が助かる可能性は少しでも上がっていただろう。

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