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ムーン・セイヴァーズ  作者: 白洲ヨム
Chapter-03 『Elucidator』
29/173

Section-2

更新履歴 21/9/18 文章のレイアウト変更・表現の修正


 卒業式についての話し合いを終えた後、僕はすぐさま、『ムーン・セイヴァーズ』のプレイを開始した。


 クラスメイト全員と共に、いつものレクリエーションルームへと移動して。


 そこから仮想空間内に再現された、本物と見紛うほどのリアルな宇宙に向かい、本物さながらの戦争を始めたのだ。



 しかしその後いくらも経たない内に、僕は戦局に対して、ややネガティブな感想を抱くことになっていた。


(なんか……あんまり、状況が良くないな)


 なぜなら味方の戦いぶりに、いつもよりもずっと苦戦している、という印象があったから。

 皆が揃って、いつも通りに戦闘し、いつも通りの敵と戦っているはずなのに。

 これは何やら、ちょっとばかり不可解な事態と言えるだろう。


 ゆえに僕は、改めて戦場全体を俯瞰し、戦闘中のクラスメイト達を観察していく。

 その些細な異変が、本格的なトラブルへと変貌する前に、詳しい原因を見定めておこうと考えたのである。


(えっと……みんなはどんな感じかな?)


 そこで最初に見えたのは、栗原さんのD-2ストライカーと、橘君のA-2グラディエーターだった。

 二人は味方の先陣を切り、肩を並べて敵陣に突撃している。

 要は最も危険な、部隊の切り込み役を担っているわけだ。


 その役割を具体的に説明すると、まずは栗原さんの機体が、高い加速力と重装甲を頼りに敵へ突撃する。

 次いで接敵と同時に、拡散式の連装プラズマキャノンと、大量のマイクロミサイルランチャーを撃ち放つ。

 自機の火力を総動員して、広範囲の敵に強烈な先制攻撃を加えるために。


 そうして大打撃を受けた敵に対しては、さらに橘君が追撃をかけて、思う存分大暴れする。

 その高い格闘性能を活かし、遠距離からでは落としきれぬ固い敵を、どんどん斬り捨てていくのである。

 結果相手の戦力は、開始早々大幅に削減……というのが、この部隊のいつものパターンだった。


 ちなみにその後、敵が態勢を立て直してからは、突撃隊の二人はいったん後退する。

 そしてそれと入れ代わりに、朝倉さんのC-1ガーディアンと、斉川君のC-2タンクが前へと出ていく。

 正面に壁を形成しつつ、厚い装甲と潤沢な火力を駆使して、真っ向から敵と撃ち合うことを目的として。


 そんな二人をサポートするのは、春日井さんのA-3アサシンと、柳井君のB-2スナイパーだ。


 春日井さんは、懐に入られると弱い斉川君を、その高い近接戦闘力で護衛する。

 また動きが鈍く、遠距離から一方的に撃たれがちな朝倉さんは、柳井君が狙撃によって支援を行う。

 それぞれの特性を活かし、相方の弱点を補うのである。


 そしてそんな仲間達を、アキラちゃんのE-1コマンダーが後方から指揮し、その護衛および苦戦する味方の救援は、僕のB-3ブラスターが担当する。

 各員の強みと弱みを考慮した、たいへん合理的な配置と言えるだろう。


 実際今回の戦いも、皆がこの役割分担通り動き、きちんと戦果を上げている。

 僕としてはやはり、この編成を考えたアキラちゃんに、相変わらず凄いなあと感心するしかない。


 しかし頭ではそう考えているのに、僕はなぜか、確認したその現状に対し――


(……何か、足りない気がするな)


 出所不明の、強い違和感を覚えた。

 自らの言葉通り、何かが不足している、と思わずにいられなかったのだ。


 その原因を探して、僕はもう一度、自軍の戦力を詳細に検分してみたのだが。

 結果として、少しばかり贅沢な欲求にたどり着いてしまう。


(遊撃部隊が欲しい、かな)


 安定した機動力があって、縦横無尽に戦場を駆け巡れる上、汎用性も高く様々な状況に対応可能――そういう便利なチームがいたらいいのに、と強く感じたのである。

 それならもっと、戦いが楽になるはずだから。


 いやむしろ、なぜそういう役割の人達がいないのだろう。

 アキラちゃんであれば、僕なんかよりもずっと早くその問題に気づき、対策を講じていてもおかしくはないのに。

 何かそうできない理由がある、ということなのかもしれないが……


 そう降って湧いた疑問に囚われ、僕の注意が、少しばかり散漫になっていたところへ――


『久保君』


 不意にアキラちゃんから、よそよそしい口調での通信が入った。

 下の名前で呼ばないのは、普通の通信だと、皆に聞かれる可能性があるからだろう。

 察するにその内容も、個人的な話ではなく、ゲームに関する事柄に違いない。


 であればこのまま、独りぼんやりと考えに浸っているわけにもいかない。

 なので僕は、泡を食って我に返りつつ、急いでその言葉に応じる。


「う、うん。何? 志藤さん」


 案の定、そこで僕へ告げられたのは、とびきり事務的な作戦指示だった。


『美山さんが苦戦しているみたいなので、彼女の援護をお願いします』


 それに促され、美山さんの様子を確認すると――


(……確かに、苦戦中だ)


 彼女の搭乗するD-1トルーパーが、多数の小型機に囲まれ苦戦中、という光景が目に入ってくる。

 きっと機体の特性上、ああ言った細かい敵への対処が難しいのだろう。


 それでも普段は、そこを望月さんのE-2サテライトリンカーがカバーし、大物を仕留めて高い戦果を上げるのだが。

 今は彼女が不在なせいで、あまりその辺りがスムーズにいってないらしい。


 そう、実は今回の戦い、望月さんが参加していないのだ。

 精神状態がとても悪いから、落ち着くまで休ませたい、という美山さんの意向によって。

 まあ教室での振る舞いを見る限りでは、それも納得の話なのだが。


 となると先ほど、全体的に戦闘がうまくいっていない、と感じたのもそのせいだろう。

 単独戦闘を強いられた彼女の担当エリアが弱く、作戦遂行上の穴となっているわけだ。

 支援が必要というのは、確かに妥当な判断である。


 そんな風に状況を把握した僕は、すかさずそのアキラちゃんの指示に、肯定の言葉と出発の挨拶を返してから――


「うん、了解。じゃあ、行ってきます」


 すかさず機体のスラスターを起動、美山さんの元へと向かった。

 やっと自分の出番だな、なんてらしくもなく気分を高揚させながら。


 そしてほどなく、彼女の近くへ到達すると、連携を取るためまず一声かけておく。


「美山さん! 援護に入るよ!」


 美山さんはその申し出に、ほぼ迷いなく応じた。


『久保君? ……わかった、お願い!』


 それを聞き届けた直後、僕は彼女の援護を行うため、素早く自機の主兵装を準備する。

 全長が機体と同じくらいある、長大な手持ち式のプラズマ砲を構えたのだ。

 一応名称は、『マルチプルプラズマランチャー』と呼ばれている。


 こいつはそのサイズに見合った高い火力を有する上、射出形式を収束と拡散で切り替え可能――一点を集中して撃つか、放射状に広い範囲を撃つか選べる――という利便性を併せ持つ武装だ。

 まあそのせいで多少、射程と速射性能が犠牲になってはいるが、基本は頼りになる僕の相棒である。


 ゆえにそいつを敵に向け、しっかりと狙いを付けてから、即座に引き金を引いた。

 もちろん美山さんを巻き込まぬよう、モードを収束型に設定して。


(行けぇっ!)


 すると砲身の先端から白い光が放出され、敵に向けて一直線に進んでいく。

 結果その光は、彼女にまとわりついていた『バグ』の内一機に直撃し、そいつを瞬時に爆裂させ吹き飛ばした。

 挨拶代わりの一発が、首尾良く決まったというわけだ。


(よしっ! やったぞ!)


 ただその成果に満足し、悦に入る僕の前で――


(……! こっちにも来た!)


 敵集団が半分に別れ、その内の一方がこちらへ迫ってくる。

 『バグ』とそれに混じった、少数の『ハウンド』の一群だ。

 接近戦が苦手な僕としては、できる限り距離を取りたい相手である。


 とは言え別に、想定外の不都合な事態、というわけでもない。

 なぜならこれで、美山さんを狙う敵が減少し、彼女の方は動きやすくなるはずだから。

 むしろ期待通りの結果、とさえ言えるのだ。


 なので慌てず騒がず、プラズマランチャーを拡散モードに切り替えると、それを押し寄せる敵に容赦なく浴びせかけた。

 相手はその攻撃を正面から受け、こちらに近づけぬまま、次々と撃ち落とされていく。


 もちろん中には、その弾幕をくぐり抜け、一気に肉薄してくる奴もいたのだが――


(やらせないよっ!)


 僕はそんな連中に対し、今度は肩に積んだプラズマガトリング砲を発射、距離が近い奴から順に仕留めていった。

 やはり接近を許さず、ほぼ一方的に。


 これは射程も威力も控えめだが、速射性能に優れた武装であり、こういう連中の対処には最適なのだ。

 おかげで戦いは、かなりこちらの有利に進んでいく。


 しかしそうやって、万事が順調に行くかと思われた、まさにその時――


(……! 新手か!)


 集団の後方に何機か、『バグ』と異なるタイプの増援が出現した。

 あれは僕らが『サンフラワー』と呼称している、名前そのままにヒマワリを模した、特殊な形状の中型エネミーである。


 その武装は主に、花弁状の部位に搭載された連装ミサイルランチャーと、中央部に鎮座する大型のプラズマキャノンだ。

 また敵に接近されると、植物の蔦のような鞭状の武装での格闘も行う。

 射程に隙の無い、優秀な攻撃機と言えるだろう。


 ……なんて言うと厄介そうに聞こえるが、しかし僕はその連中のことを、それほど大きな脅威とは感じていなかった。


(あのくらいの数なら、なんとかなるな)


 なぜなら火力装甲共に平凡な上、機体サイズも比較的小型なので、他の強敵に比べると対応が容易だから。

 バランスは良いが、深刻な脅威にはなり得ないのである。

 油断さえしなければいい相手、と言ってしまって構わないだろう。


 ゆえに僕は、未だ十分な距離があるそいつらに向けて――


(なら、これで!)


 射程と精度に強みのある、背部の連装レールカノンを使用し、相手の間合いの外から正確な砲撃をお見舞いする。

 敵が動く前に、こちらから先制攻撃を仕掛けたのである。


 すると狙い通り、僕の攻撃は目標へ命中、その装甲をあっさりと貫徹した。

 結果としてそいつは、大きな爆発を起こして四散し、瞬く間に宇宙の藻屑へと変わっていく。

 やはり性能的には平凡、この対処法で問題は無いようだ。


 そう自身の戦術の正しさを確信しつつ、僕は攻め寄せる『サンフラワー』達を攻撃、一機一機着実に撃ち落としていった。

 もちろん付近の敵も、変わらずガトリング砲で迎撃しながら。


 そのせいで多少忙しくはなったが、しかし対処不可能というほどではない。

 このままであれば、きっと勝利はすぐそこのはずである。


 そんな思惑の通り、僕がそのまま迎撃を続けていると、敵の数が目に見えて減少していき――


(よし……これで全部かな)


 そう大した時間をかけることもなく、見事攻撃してきた敵の掃討を完了する。

 一応それなりに被弾はしたが、深刻なものはほぼ無い。

 かなりうまく戦えた、と言えるだろう。


 その戦果に深く安堵しつつも、僕は間を置かず視線を巡らし、付近で戦闘しているはずの美山さんへ注意を向けた。

 まだ彼女が苦戦中なら、すぐさま助けに行かねばならないからだ。


(美山さんの方は大丈夫かな?)


 もっともその心配は、次いで呆気なく取り越し苦労に終わる。


(……大丈夫、みたいだな)


 向けた視線の先で、美山さんが一機の『ゴーレム』に対して突撃を行い、プラズマランスで撃ち貫く様が見えたから。

 全く心配無用、みたいな雰囲気である。


 しかもそれを見た他の小型機達が、不意に動きを変え、先を争うように撤退を始める。

 きっと今の奴が撃墜されたことにより、主力の大型機が全滅したから、そうするしかなくなったのだろう。

 要はこれにて、彼女の救援は無事完了、というわけだ。


 それを確かめてから、僕はすかさず美山さんに通信を入れ、賛辞も含めつつねぎらいの言葉をかけた。


「お疲れ、美山さん。さすがだね」


 美山さんはそれに、ホッと一息、といった口調で応じる。


『うん……ありがとう、久保君。

 おかげで助かったよ』


 どうやら加勢に来た甲斐は、それなりにあったということらしい。

 役に立てたようで、こちらとしても何よりである。


 僕はそう胸を撫で下ろししつつ、彼女のお礼に、『どういたしまして』と返した後――


(さてと、コンディションチェックだ)


 間を置かず、機体の点検作業を開始した。

 今なら軽く一息つけそうだったので、先々のことを考え、戦闘の影響を確かめておこうとしたのだ。


 もっともその作業は、思いのほかあっさりと終わる。

 戦闘後に抱いた印象の通り、機体の損傷がいずれも軽微なものだったから。

 まあ時間的に短い戦いだったし、ある意味それで当然なのだが。


 ただそんな風に、自分の機体へ意識を集中したせいか――


(『スプリガン』……だったよな。

 この……危険なロボットの名前)


 僕はふと、自分が搭乗している物に対して、ほんの少しだけ嫌悪感を覚えた。

 実は今さらながらに、よくよく考えたらずいぶん非人道的な兵器だよな、と認識したのである。


 だってこの機体の搭乗者、なんとあらゆる感覚器官を機械に繋がれた状態で、内部に格納されているらしいのだ。

 そして自分の意志での乗降は許されぬまま、激しい戦いを強いられている。

 前に読んだ、ゲームのプレイガイドに付随する設定資料集で見たから、それで間違いはない。


 要は良く言っても檻に入れられた囚人、悪く言えば機体のパーツ同然、みたいな立場であるわけだ。

 ほぼ人間扱いされてない身分、とさえ言えるだろう。


 一応そうでなければ、人間が生身で宇宙戦闘を行うのに十分な能力が確保できない、とか。

 敵による機体へのハッキングを防ぐため、直に搭乗者と接続する必要があった、とかそんな理由があったようだ。

 それ自体はまあ、理屈としてわからなくもない。


 とは言え本来、何をどう考えても許されざる行為であろう。

 本当に自分やアキラちゃんが、そういう扱いをされていたらと想像すると、肝が冷えるばかりだ。

 これも人間追い詰められれば何でもやる、という現実の証明なのだろうか。


 ……なんて物思いに、僕はしばし耽っていたわけだが。


(……余計なことだったな)


 そこですぐ、あくまでこれはゲームの設定でしかない、ということを思い出したので――


(よし、次いこう)


 素早く頭を切り替えて、続く戦闘の方へと意識を戻し、それからアキラちゃんへ通信を入れようとした。

 次に自分が何をすべきか、彼女に指示を仰ぐために。


 だがその寸前、まるでそんな僕の先回りをしたかのように、アキラちゃんが指示を発する。

 どこか追い詰められたような、妙に堅苦しい口調で。

 しかもその内容は、僕達全員にとって、少なからず驚くべきものであった。


『各員に伝達。

 現時刻をもって、当部隊は戦闘行動を終了します。

 速やかに母艦へ撤退してください』


 それを聞いて僕は、内心で思わず驚きの声を上げてしまう。


(ええっ……もう撤退?)


 その『ここで撤退する』という彼女の判断が、かなり意外なものだったから。

 ゆえにすぐさまレーダーに目を向け、近場だけでなく、周囲の戦況まで詳細にチェックしていく。


 なぜなら――


(まさか……そんなに状況が悪いのか?)


 僕の知らぬ間に、敵の大きな攻勢か何かがあったのではないか。

 それにより戦況が悪化したせいで、彼女がこんなにも早い撤退を決断したのではないか。

 そういう不吉な予測が生じたので、それが事実なのか、自分の目で確かめようとしたのだ。


 しかしその僕の危惧は、結局のところ、単なる取り越し苦労に終わった。


(……大丈夫そう、だな)


 味方はかなりの優勢で、むしろ勝利直前に近い状態だったから。

 レーダーを見る限り、敵はすでに撤退を開始しているし、そう捉えて間違いはない。

 要はここで退く理由など、何ひとつ無いというわけである。


 もちろん今回の任務である、『指定したエリアの敵を掃討する』という目的は達成済みだから、撤退自体に問題は無い。

 命令違反により、ペナルティを受けることはないはずだ。


 それでもまだ、味方の継戦能力にはかなりの余裕がある。

 ならばこのまま別の戦場に移動し、もう少しポイントを稼ぐのもありではないか。

 僕としては、ついそんな欲を出してしまうのである。

 自分にしてはやたらと積極的だな、と少々違和感を覚えるくらいに。


 ちなみにそういう気持ちは、クラスメイト達も同じだったようだ。

 次いで戦場のあちらこちらから、アキラちゃんの消極的な指示に対し、抗議にも似る声が続けざまに上がってきた。


『えー、私達まだまだ行けるよー』

『志藤ちゃん? ちょっと弱気じゃない?』

『志藤? まだ十分行けるんじゃないのか?』


 その内容は、総じて彼女の判断への不満か、あるいは疑問を呈するものである。

 まだ戦える、というのは皆の一致した意見らしい。


 となるといくら、一度は撤退の判断を下したにしてもだ。

 これほど誰もが、その決定に異を唱えている以上、基本はそれを受け入れるしかないだろう。

 アキラちゃんの性格を考えれば、そういう流れになると見てほぼ間違いはない。


 ……と、僕は単純に予想していたのだが。

 しかし意外にも、続く彼女の言葉によって、それは完全に覆されてしまう。


『いえ……敵の増援がある可能性も否定はできませんので、余裕を持って撤退しておきたいのです。

 申し訳ないですが、よろしくお願いします』


 アキラちゃんが即座にそう言って、皆の不満を制したのだ。

 真面目で穏やかな口調ながらも、裏側に断固たる決意をにじませて。

 例え反対されても、自分の考えを押し通すつもりのようだ。

 いつも冷静なアキラちゃんにしては、珍しく頑なな態度である。


 僕はそれを、強く訝しみつつも――


(ちょっと変だけど……でも)


 普段世話になっている身で、アキラちゃんにそこまで言われれば、まあ反論のしようもないか。

 そう潔く踏ん切りをつけ、彼女に承諾の返事をする。


「了解。久保擁介、B-3ブラスター、帰投します」


 するとその言葉を皮切りに、他のクラスメイト達からも、諦め漂う力無い声が上がった。


『りょうか~い……』

『はいよ~……』

『……了解』


 どうやら皆も、これ以上の抵抗はしないつもりらしい。

 やはりなんやかんやで、アキラちゃんの判断力は信頼されているのだ。


 もっとも皆が、そうして作戦の終了通告を受け入れた理由は、ひょっとしたら彼女への信頼だけではなかったのかもしれない。


 なぜなら、僕自身――


(『増援』、か……) 


 アキラちゃんが発した、その何気ない一言に、妙に心を乱されてしまったから。

 きっとその不安が後押しして、ああも素直に、彼女の判断を支持することができたのだろう。

 無論、そういう印象を受けた原因は、我ながらさっぱり掴めてはいないのだが……


(……でも、まあ)


 ただそういう様々な憂いを残しながらも、僕はそれら全てを、勝利の余韻でごまかした。


(勝ったから、いいよね)


 そして張り詰めていた気を緩め、のんびりと母艦への帰投を開始する。

 当然周囲への警戒も、完全に解いてだ。

 レーダーに反応が無い以上、もう付近に敵はいないと判断していたから。


 しかしそんな風に、すっかり危機感を失った僕の耳へ――


(……?)


 次いでふと、ひどく意外な呼びかけが届いた。


『みんな、待って!

 まだ危険だから、絶対に油断をしないで!』


 そうたっぷりの焦りを含んだ口調で、僕らに警告を放った人物。

 それはなんと、精神的な問題により、今回のゲームには参加していないはずの――


(え……? 望月さん?)



 望月和歌さん、その人であった……








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