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ムーン・セイヴァーズ  作者: 白洲ヨム
Chapter-13 『Last mission』
155/173

Section-10

更新履歴 21/11/3 文章のレイアウト変更・表現の修正


『ミッキー! 今度は母艦が攻撃されてるよ!』



 その声に応じて後ろを振り返ると、先ほど俺から離れたトルーパーとブラスターが、すでに母艦の間近にまで迫っているのが見えた。

 俺達が他の二機の相手をしている間に、連中がそちらへ到達してしまったわけである。


 そいつらには当然、母艦を防衛するため、志藤と望月が迎撃に向かっている。

 あの分だともう間もなく、戦闘が開始されることだろう。


 となれば何にせよ、このまま放置しておくことはできない。

 互いの戦闘能力に差がある以上、接敵すれば苦戦するのは目に見えているから。

 すぐにでも彼女らの元へ駆け付けないと、艦が大きな危険に晒されてしまうわけだ。


 しかしそう憂慮した俺が、味方のカバーのため動こうとしたその直後、開始された両者の戦いが意外な展開を見せた。


(……え?)


 まず異変が起きたのは、一直線に突撃してきていたトルーパーだ。

 そいつは自身を迎撃する望月のビットと、母艦の付近で激しく交戦していたのだが。

 なんとそう時間も経たぬ内に、機体の一部で大きな爆発を起こし、完全にその動きを止めたのである。


 どうやらあいつ、装甲の隙がある部分――急所のようなものを、ビットの攻撃で射抜かれたらしい。

 望月がそこを正確に狙い撃ちして、瞬時に相手の戦闘能力を奪った、ということである。

 それは不自然さすら感じるほどの、あまりにも精密かつ迅速な一撃であった。


 しかもそれに続いて、志藤のコマンダーと敵ブラスターとの戦いも、あっさりと決着がつく。

 一対一の戦闘で、彼女が相手を圧倒、間を置かず撃墜してしまったからだ。

 武装及び機体のスペックにおいて、相手よりも大きく劣っているはずなのに。


 そうして戦いを優位に運べたのは、どうやら相手の動きが読めていたからのようだ。

 志藤はまるで、その操縦の癖やら苦手分野を良く知っているかのように、ブラスターを翻弄していたのである。

 それで互いの性能差を覆し、見事に勝利ができたらしい。


 そんな志藤と望月の戦いぶりを見て、俺の頭には、ひとつの閃きが舞い降りてきた。


(……知っていたのか?)


 トルーパー及びブラスターの戦い方について、あの二人は良く知っていたのではないか、と。

 だからこそ初めて戦った相手に対しても、あれほど適切に対処できたのではないか、と。


 要はその卓越した戦果の理由を、相手の情報を十分に持っていたから、という風に考えたのである。

 おそらく搭乗者についての記憶は消えても、機体の性能に関する記憶は残っていたのだろう。

 まあ実際そうでなければ、あれほどうまくは戦えないだろうし、妥当な推論ではあるはずだ。


 もちろんそれが事実だとしたら、かなりの幸運である。

 もし相手をする機体が違えば、この圧倒的不利な状況を、こうも簡単に打開することはできなかったはずなのだから。

 そう思うと、本当に命拾いをした、と胸を撫で下ろさずにはいられない。


 ただそれと同時に、志藤と望月に対して、別の懸念も湧いてくる。


(それは……大丈夫、だったのか?)


 だってその機体について良く知っていた、ということはつまり、長い時間共に戦っていた……ということにもなるのだから。

 コンビを組む間柄だったからこそ、機体の性能についても良く知っていたわけだ。

 おそらくパイロットの方とも、元々かなり親しかったのだろう。


 そしてそんな連中を撃墜したのだから、きっと先ほどの俺と同じく、そのクラスメイト達の幻影を見たはずだ。

 であればそこで、彼女らは何を感じ、どういう気持ちになったのだろう。

 ひょっとして蘇る記憶に苦しめられ、とても辛い体験をしたのではないのか……


 ……などと、二人の内心に想いを馳せながらも、俺はすぐその憂いを振り払った。


(……考えるな)


 なぜならそれらは全て、本人にしかわからないことだから。

 加えて今は、そんな心配をしていられる状況ではないから。

 何よりも今は、無事に生き延びることこそを優先すべきなのである。


 そう心を定めた俺は、ひと息に気持ちを切り替えると――


(よし……次だ!)


 瞬時に戦場へ意識を戻しつつ、機体のスラスターを起動、母艦の元へと帰参する。

 そして無事に味方と合流した後、まずはと志藤に謝罪した。

 自分の勝手のせいで、部隊が危機に陥ったことを、心底申し訳なく思いながら。


「悪い……勝手なことをした」


 ただし志藤の方は、まさしくそれどころではない状態だったらしく、すぐ焦った口調で次の指示を出してくる。


『今は敵への対応を! このまま突破します!』


 まったくもってその通り、と言うより他はない。

 反省も後悔も、まずは生き延びてこそ、というわけだ。

 今はとにかく、これからのことだけを考えるべきだろう。


 そう認識を新たにした俺は、強引に気持ちを切り替えると、即座に前方の排除すべき敵を見据えた。

 味方の血路を切り開く、という自身の役目を果たすために。


 しかしその直後、今さらながらに深刻な問題にぶち当たってしまう。


(どう戦うかな……)


 敵を倒そうにも、そのための武器が無い、という現実を突きつけられたのである。

 先ほどショットガンを盾代わりに使った上、奪ったブレードの方も、敵機に突き刺したまま捨ててきたから。

 これではほぼ、と言うか完全な丸腰状態なので、どうしたって攻勢になんて出ようがないのだ。


 ただそうして、俺が武装で困っていることを察したのか、タイミングよく望月が助け船を出してくれる。


『橘君! とりあえずこれを!』


 それに応じて彼女の方を振り向くと、望月がこちらに向け、長い棒状の武器を投げるのが見えた。

 おそらく敵トルーパーが使っていた、大型のプラズマランスを回収し、そのまま寄越してきたのだろう。

 一見して傷なども無いし、十分に使えそうだという印象である。


 ゆえにそのフォローに対し、素直に礼を言ってから――


「助かる!」


 投げられたそいつをキャッチして、両手でしっかりと構える。

 そして動き始めた味方と、足並みを揃えて前進、艦の行く手に立ちはだかる敵と衝突した。

 休む間もなく、次の戦闘に突入したわけだ。


 もっともそこでは、当然のことながら――


(苦しいな……)


 いつものように敵を次々と撃破、というわけにはいかない。

 機体の損傷がひどい上に、武器も扱い慣れないものだから。

 現状ではもう、『ゴーレム』を一機仕留めるのにも四苦八苦、という状態なのである。


 当然このままのペースだと、敵陣の突破なんて夢物語にも等しい。

 かと言って無闇に動けば、また先ほどのような事態になりかねない。

 となるとここは、いったいどうすべきなのだろうか……


 しかしそう悩みつつも、どうにか戦闘を行っていた俺の目に、次いで奇妙な光景が飛び込んでくる。


(なんだ……? なぜ退く?)


 なんと進行方向に展開していた敵機が、突如としてその場から退いたのだ。

 まるで俺達に対し、通行できる道を空けたかのように。

 結果としてほとんどの連中が、遠巻きに散発的な攻撃を繰り返す状態になった。


 敵がそうした理由は、もちろん不明だ。

 ひょっとしたらこれ以上の被害が出ることを嫌ったのかも、なんて推測もできるが、やはり詳しいところはわからない。

 現状で確かなのは、間違いなくここが好機だ、という事実のみである。


 実際志藤も、その機を逃すまいとしてか、即座に前進の指示を出してくる。


『総員、全力で前へ!

 空いた場所を通って、一気に敵陣を突き抜けます!』


 ならばと俺もまた、他の皆と共に、迷わずその号令に応じ――


『『了解!』』


 一気に加速し、強引に前へ出て行った。

 多少の被害は覚悟の上で、敵の迎撃を最低限に留めつつ、速度の方を優先して突進したのだ。

 さらに増加していく機体の損傷を、撃墜されなければそれでいい、と割り切りながら。


 おかげでどうにか、それから間もなくして――


(あと少しだ……!)


 部隊全体が、もう敵陣の突破寸前、という位置にまで到達する。

 すでに前方に敵はいないので、後はこのまま通り抜けるだけ、という状況である。

 そう認識すると、まだ早いとわかってはいても、自然と達成感や安堵感が湧いてくるのは避けられない。


 だがその感情は、次いで放たれた柳井の一言によって、瞬く間に暗転した。

 なんとあいつが、悔しげな叫びを上げると同時に――


『こいつは……くそっ! やられた!』



 母艦の装甲が破損している部分で、突如複数の爆発が起こったのだ――








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