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ムーン・セイヴァーズ  作者: 白洲ヨム
Chapter-13 『Last mission』
153/173

Section-8

更新履歴 21/11/3 文章のレイアウト変更・表現の修正


 A-1アサルト、B-1アーチャー、B-3ブラスター、D-1トルーパー。



 それが俺達の前に現れたコピー野郎――志藤は確か『ドッペルゲンガー』と名付けていた――のタイプの内訳だ。

 そいつらは現在、互いに連携を取りながら、高速でこちらとの距離を詰めてきている。

 接触して戦闘になるのは、もはや時間の問題と言えるだろう。


 その突きつけられた現実を前に、俺は凄まじいまでの焦りを覚えた。


(くそっ、こんな時に……!)


 なぜならあのコピー野郎は、個々の戦闘能力が非常に高いから。

 容易に仕留められぬどころか、こちらが撃破されてしまう危険すらあるのだ。

 要はただでさえ苦しい今の状況に、さらなる困難が降りかかってきた、ということなのである。


 するとそこで、同じく局面の厳しさを認識したらしい志藤から、撤退の指示が飛んでくる。


『橘君! いったん下がってください!

 その敵には全員で対処します!』


 確かに現状、相手は四機でこちらも四機だから、合流すれば数的不利だけは解消できる。

 戦い自体が避けられぬ以上、一度退いて態勢を整える、というのは極めて妥当な判断だろう。


 しかし一方、全員で戦うとなれば、その間ずっと母艦が無防備になってしまう。

 コピー野郎どもの相手はできても、他の敵の攻撃は防げなくなるのである。

 艦が損傷している現状で、それはあまり望ましくない選択肢と言えよう。


 そう今後の展開を憂慮した俺は、それを打開するため、とある覚悟を決めた。


(俺がやるしかない……!)


 自分が先手を打って奴らに仕掛け、一機でもいいから撃墜しておこう、と考えたのである。

 そうしてあらかじめ数を減らしておけば、連中の相手だけに集中せずに済んで、後の戦いが必ず楽になるから。

 一撃必殺の武装を持つ俺の機体なら、それも十分に可能なはずだし、挑む価値はあるはずだ。


 もちろん強敵である奴らに対して、単独で突撃するのは極めて危険なのだが。

 それでも今は、贅沢を言っていられる状況ではないし、とにかくやってみせるのみである。


 ゆえに俺は、望月に再度、自分の支援を要請してから――


『……すまん! いったん一人で突っ込む!

 すぐに戻るから、それまで支援してくれ!』


 それへの返事が来るよりも早く、すかさずスラスターをフル稼働させ、眼前のコピー野郎どもに突撃した。

 先の指示を無視して、たった一人で。


 当然志藤は、そんな俺の行動に驚き、こちらを制止しようとしたが――


『え……? 橘君? 待っ……』


 俺はそれを躊躇なく振り切って、さらに加速しつつ前へ進んでいく。

 自分がやらねば皆が危ない、という使命感のような熱い気持ちに、激しく突き動かされながら。

 そのせいで自分が、完全に冷静さを失ってしまっている、という事実には全く気づかぬままで。


 そんな俺の姿を見て、敵は即座に迎撃態勢に入ったのだが。

 たださすがに、一人で突っ込んでくるとは予測していなかったのか、若干ながらその動きが鈍い。

 付け入る隙は少なからずある、ということだ。


 なので迷わず、俺は一気に手近にいたアサルトへ接近、そのまま格闘武器の間合いに捉えた。

 あちらの態勢が整うよりも早く、こちらは攻撃態勢に入れたわけだ。

 四対一で戦う以上、余計な時間をかけるのは自殺行為だし、このまま早期決着を図るとしよう。


 それゆえ間を置かず、持った大型ブレードを振りかぶり、アサルトに対し一閃したのだが――


(落ちろ!)


 しかし残念ながら、事はそう思惑通りには進まなかった。


(くっ……仕留め損なったか!)


 なぜならアサルトが、素早く俺の攻撃に反応し、シールドを構えて受け止めたから。

 必殺を目論んで放った一撃が、あっさり防がれてしまったわけである。


 もちろん受けたシールドは破壊できたし、それを構えていた腕にも、余勢を駆って深手を負わることができたのだが。

 ただ結局のところ、致命傷には至っていない。

 最初の仕掛けに失敗し、かなり不利な状況に追い込まれた、と言っていいだろう。


 案の定その直後、俺は周りの敵から袋叩きにされてしまう。


(ぐっ……くそっ!)


 四機それぞれに激しく攻撃され、為す術なく被弾し続ける羽目になったのだ。

 具体的にはアサルトのショットガン、アーチャーの大型プラズマライフル、ブラスター及びトルーパーのプラズマキャノンを、四方から絶え間なくに撃ち込まれた。

 砲火で構成される滝の中に押し込まれた、とでも例えるのが適切かもしれない。


 一応望月のビットが、ある程度は止めてくれていたものの、それも長くは続かなかった。

 伴っていた四機全てが、やがてその猛攻に耐えきれなくなり、バリアを貫かれ爆砕してしまったのである。

 以降はただただ、押し寄せる砲火に蹂躙されるばかりであった。


 その結果として、機体が大幅に損傷しただけでなく――


(しまった……!)


 大型ブレードをアーチャーの狙撃に射抜かれ、その刀身部分を完全に破壊されてしまう。

 後に残ったのは柄の部分のみであり、当然これだと戦闘の役には立たない。

 使用の継続を諦め、このまま投棄するしかないだろう。


 しかも先ほど望月のビットが落とされてしまったせいで、すでに防御面も丸裸である。

 要は敵を一撃で仕留められる武器を失った上、身を守る手段も無くす、という大失態を演じたわけだ。

 自分から仕掛けておいてこの有り様とは、情けないにも程がある、と己を卑下するばかりだった。


 もっとも、今の俺にはそんな暇すら無い。

 次いでアサルトが突然加速し、格闘武器を構えつつ、目前にまで接近してきたからだ。

 おそらくこちらが主武装を失ったのを見て、一気に仕留めようと目論んだに違いない。


 ゆえに慌てて、俺は武器を予備の小型ブレードに持ち替え、突進してきたアサルトを迎え撃つ。

 そして直後に振り下ろされた、敵の斬撃を受け止め、そのまま何度か激しく切り結んだ。

 とりあえず戦闘自体は可能、ということである。


 しかし次いで、そんな俺の甘い認識を嘲笑うかのように――


(なっ……無視する気か!)


 ブラスターとトルーパーが進路を変え、軽く迂回して母艦の方へと向かい始めた。

 どうやら弱体化した俺の相手は、アサルトとアーチャーだけで十分、と判断したらしい。


 もちろんこれは、極めて由々しき事態である。

 だって栗原の機体は小回りの利きづらさ、望月と志藤の機体は装甲の薄さが原因で、三機とも一対一での戦いは苦手なタイプだから。

 このまま俺が不在の状態で連中と戦えば、間違いなく苦戦を強いられるはずなのだ。


 要は俺の勝手な行動が原因で、部隊の危機を招いてしまったわけである。

 戦況を有利にするつもりが、かえって味方を窮地に追い込む結果になった、と言えるだろう。

 単独で突撃なんて無謀な試みをしていなければ、少なくともこういう結果にはならなかったのに、と悔やまずにはいられない。



 しかもそんな風に、自らの失態なんかに気を取られていたせいで――


(ぐっ……またか!)


 再びアーチャーの狙撃を食らい、今度は小型ブレードまでも破壊されてしまった。

 これで残されている武装は、本来装備されていないショットガンのみ。

 もう苦手な射撃武器の撃ち合いをするしかない、という状況なのである。


 そうしてすっかり追い詰められた俺を、眼前の二機は、さらに連携を取りつつ攻め立ててくる。

 アーチャーの援護を受けながら、アサルトがより強引に押し込んできたのだ。

 無論格闘武器を失った状態で、まともな近接戦闘を続けるのは難しい。


 ゆえにたまらず、俺は全力で後退したのだが、しかしそれで逃げ切れるわけもない。

 結局ひたすらに被弾を重ね、そのまま機体にダメージを蓄積させていくのみとなってしまった。

 このままでは遠からず、こいつらに撃墜されることになるだろう。


 ただその危機的状況に対し、これはもう捨て身の特攻くらいしかないか、と俺が考え始めたところで――


(……え?)


 急に横合いから猛烈な砲火が出現、距離を詰めてきていたアサルトとアーチャーに降り注ぐ。

 二機はその直撃を避けるため、押し退けられるようにして俺から距離を取った。

 つまりはどこからともなく、支援砲撃が届いたわけだ。


 その突然の事態への驚きから、俺は一瞬だけ思考停止に陥っていたのだが。

 次いでそこへ、必死に俺の名を呼ぶ、誰よりも聞き慣れた声が届く――



『ミッキー!』









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