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ムーン・セイヴァーズ  作者: 白洲ヨム
Chapter-13 『Last mission』
152/173

Section-7

更新履歴 21/11/3 文章のレイアウト変更・表現の修正


 円形に並ぶ大量の『ゴーレム』が、ほぼ同時に発射した、暴力的な光の集合体。



 それらはまっすぐ正確に、高速でこちらへと迫ってくる。

 その速度と密度を考えれば、今から回避するのは極めて困難だろう。


 ゆえに俺は、先の志藤の指示通り――


(間に合えよ!)


 即座に栗原のストライカーの方へ移動、滑り込むようにしてその後ろに隠れた。

 間を置かず来るであろう敵の砲撃から、自分の身を守るために。

 見た目は多少情けないが、まあ防ぐのも避けるのも難しいのだから、今はこうするしかない。


 そんな俺の行動に合わせるように、他のクラスメイト達も、続々と同じ場所へ集まってくる。

 ちょっと呑気な例えになるが、突然の雨に見舞われ、皆で慌てて雨宿りをしたような状態である。


 またそれに合わせて、栗原がバリアの出力を上げつつ、俺達を覆うように大きく広げた。

 さすがに母艦の正面全てをカバーするには足りないが、しかし十分に役割は果たしてくれるだろう。

 後はとにかく、これが敵の攻撃に耐えられるよう祈るのみだ。


 すると俺が、そう覚悟を決めた直後――


(……くっ!)


 前方に展開されたバリアに対し、『ゴーレム』の砲火が直撃した。

 同時に辺りへは、金属を溶接した時に飛び散る火花のような白い光が、無数に激しく乱れ飛ぶ。

 視界はそれらにくまなく埋め尽くされ、すでに前は全くと言っていいほど見えない。


 俺はその目も眩む空間の中で、じっと敵の攻撃が終わる瞬間を待った。

 今の自分には、できることなど何もない、とわかっていたから。

 そうして判決を待つ囚人のような気分のまま、ひたすらに忍耐を続けたのである。


 結果その後しばらくして、突然例の光が消失し、俺は無事に視界を取り戻す。

 ようやく敵の攻撃が終わりを告げた、ということだ。

 あくまで第一射をしのげただけではあるが、とりあえずは生き延びられた、と認識して良いらしい。


 しかしその成果と引き換えに、次いで栗原から恐ろしい報告が届いた。


『あっ! みんなごめん……もう駄目みたい!』


 それに応じてストライカーの方へ目をやると、先の砲撃を受けた影響なのか、消えそうなほどに弱まったバリアの姿が見える。

 どうやら今の攻防で、稼働のためのエネルギーを使い切ってしまったらしい。

 これでは当然、もし次の攻撃があっても、それを防ぐことはできない。


 だと言うのに、例の『ゴーレム』群とは、未だにかなりの距離があった。

 仮に今から急いで接近しても、第二射までに敵の元へ到達し、その発動を妨害するのは不可能だろう。

 要はこのまま、防御手段を失った状態で、為す術なく狙い撃ちされるしかなくなったわけだ。


 そう状況を把握した俺は、慌てて頭を巡らし、次にどうすべきか考えていたのだが。

 しかしそれと時を同じくして、前方で奇妙な現象が発生した。


(……なんだ?)


 そこに展開していた『ゴーレム』群が、突然次々と爆砕していったのだ。

 まるで見えない何かから、的確に急所へ攻撃を受けたかのように。

 その謎の現象に対し、いったい何事かと疑問を抱いた俺は、すぐ詳細を確かめるために目を凝らす。


 そこに見えたのは、『ゴーレム』群の付近を高速で飛び回る、複数の小さな物体の姿だった。

 どうやらそいつらが、連中に対し攻撃を仕掛けているらしい。


 その光景を目にした瞬間、俺はようやく何が起きているのかを理解する。


(望月か!)


 先の爆発は、望月がビットで『ゴーレム』群を攻撃したからなのだ、と。

 おそらく最初の砲撃を受けている間に、その輝きに紛れて、こっそりあちらへ派遣していたのだろう。

 それで連中に隙ができたところを見計らい、奇襲を仕掛けたのだ。


 おかげで前方の『ゴーレム』群は、大きくその陣形を崩し、かなりの混乱状態に陥っていた。

 さすがに全滅させるのは無理だが、これならすぐに砲撃が再開されることはあるまい。

 要はこちらから仕掛けるチャンスができた、ということである。


 とは言えそれでも、このまま不用意に飛び込むわけにはいかない。

 なぜなら栗原のバリアが失われ、母艦を守る手段が無くなったから。

 このまま無防備に艦を突っ込ませる、なんてあり得ぬ選択なのである。

 仮に仕掛けるとしても、俺達の機体を盾代わりに進むしかないだろう。


 だからか志藤も、次いでそういう趣旨の指示を出そうとしていたのだが――


『すぐに反撃します! まずは私達が前に出て――』


 直後にそれを、柳井の力強い言葉が遮る。


『いや、俺が前に出る!

 みんなはこの艦を盾にして進んでくれ!』


 なんとあいつは、母艦を盾にして進めばいい、と主張してきたのだ。

 先ほど『アングラー』にぶつけられて、装甲があれだけ損傷したと言うのに。

 あまりにも無謀な提案、と呼ぶより他はない。


 ゆえに当然、志藤はその点を指摘したのだが――


『艦を盾に? いえしかし、今の状態では――』


 柳井はあくまでも強気に、自分の意見を押し通してきた。


『それでもまだ、こっちの方が装甲は厚いはずだ!

 さっき攻撃された部分を守ってくれれば、十分に耐えられる!

 みんながやられればどっちにしろ終わりなんだし、ここは俺を前に行かせてくれ!』


 言われてみれば確かに、今の俺達の機体には、母艦の盾となれる耐久力は無い。

 ならばあえて艦の方を盾にして、こちらが攻撃に集中するのもありなのかもしれない。

 戦力は限られているんだし、使えるものは全てギリギリまで使い切るべき、というところだろうか。


 そんな風に俺と同じく納得したのか、志藤もその柳井の意見を、一瞬だけ迷った後に受け入れ――


『……わかりました! では艦を前に!

 私達はそれを盾にしながら進みます!』


 同時にこちらへ、今後の戦い方についての指示を出してくる。


『損傷した部分は、私と望月さんで守ります!

 栗原さんは少し下がって攻撃、橘君は機を見て敵陣に斬り込んでください!』


 であればもちろん、俺達がその決定に逆らう理由は無い。

 なのですぐさま、全員がそれに返事をして、間を置かず戦闘行動に移った。


『『了解!』』


 具体的にはまず栗原が、ほとんど消えかけのバリアを停止させ、次いで少しだけ後退する。

 母艦の方に敵の注意を向けた上で、自身は攻撃に集中しようというわけだ。

 あいつの火力は突破の要となるはずだし、妥当な位置取りだろう。


 また志藤は先に言った通り、望月と同じ位置――母艦の装甲が傷ついた部分――の付近に移動した。

 いくらあそこが弱みであっても、二人なら守り切れるはずだし、やはりこちらも心配はいらない。

 要はこれで仕掛ける準備が整った、ということである。


 それゆえすぐ、俺達は行動を開始し、その陣形のまま前進していった……のだが。

 直後、当然のように――


(来たな……!)


 前に出た母艦が、激しい砲火に晒される。

 先ほど望月の奇襲で混乱していた敵が、ここに来て態勢を立て直し、再度攻撃を仕掛けてきたのだ。

 現状何とか耐えられてはいるが、しかしそう長く続くものでもあるまい。


 そこですかさず、俺はその戦況を覆すための行動に出た。


「望月! 前に出るから支援を頼む!」


 ここが仕掛けどころと見て、望月に支援を依頼したのだ。

 シールドを失った状態で突撃する以上、あいつのビットによる援護が不可欠だから。

 無論母艦の防衛力は低下してしまうが、今は目の前の敵を仕留める方が優先だろう。


 そういうこちらの意図を汲み取ってくれたのか、望月はすぐ迷いのない返事をしてくる。


『はい! 守りは任せてください!』


 それを聞くと同時に、俺は艦の側を離れ、単独で敵陣への突撃を開始した。

 望月が寄越してくれた四機のビットを、護衛のように伴いながら。


 その際にまず狙ったのは、先ほど一斉射撃を仕掛けてきた『ゴーレム』群だ。

 なぜなら火力の高いあいつらを排除することこそが、艦の安全にとって何より重要なポイントだから。

 その目的を果たすため、俺は一直線に前へと進んでいく。


 当然『ゴーレム』達は、光弾の嵐を使って、そんな俺を迎撃してきたが。


 ただそれらは全て、望月のビットが受け止めてくれた。

 この感じならおそらく、主砲の直撃でもない限りは防げるだろう。

 ゆえにその防御力に任せ、俺は一気に連中へと接近し、手当たり次第にその巨体を斬り捨てていく。


 おかげでしばしの後、『ゴーレム』群のほとんどを駆逐できたのだが――


(苦しいな……)


 にも関わらず、戦況はさほど好転してくれなかった。

 敵の数が多すぎるせいで、ちょっと減らしたくらいでは焼け石に水だったのだ。

 この雰囲気だとおそらく、敵陣を突破するまで似た状態が続くことだろう。

 未だ予断を許さぬ厳しい状況、と表現するより他はない。


 しかもそうして追い込まれる俺達の前に、次いでさらに厄介な敵が現れる。


(な……こいつらは!)


 それは四機ほどで編隊を組んでいる、人型の機動兵器の集団だ。

 そいつらは全て、黒と紫が混じり合う地味な色合いをしており、手足はシャープに尖っていた。

 俺の搭乗している機体、『スプリガン』と全く同じように。


 つまりはそう、苦境に陥る俺達を迎撃してきたのは、よりにもよって――


(またこの連中か……!)



 あの厄介極まりない、コピー野郎どもの一団だったのである……








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