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ムーン・セイヴァーズ  作者: 白洲ヨム
Chapter-13 『Last mission』
149/173

Section-4

更新履歴 21/10/30 文章のレイアウト変更・表現の修正


『状況を開始します!』



 その凜とした志藤の号令に、声を揃えて俺達が応じ――


『『了解!』』


 一斉に前進を開始した直後、前方の敵集団に、顕著な変化が生まれた。


(……動いたか!)


 比較的近くにいた敵の一部が、こちらを向くように旋回し始めたのだ。

 きっと俺達が突進してくるのを見て、迎撃の準備に入ったのだろう。

 ついに戦端が開かれた、ということである。


 ただまあだからと言って、今さら迷うことも考えることも無い。

 作戦はすでに決まっているし、退却という選択肢も許されてはいないから。

 やるべきなのはひとつ、このまま真っ直ぐ、目の前の敵に突撃をする事だけなのだ。


 その覚悟を胸に、俺はいったん、前方の敵を細かく観察する。

 接触前にもう一度、連中の大まかな構成を確かめ、戦い方のプランを立てておくために。


 そこでまず最初に感じたのは、『バグ』や『ゴーレム』が少ないこと。

 またそれとは逆に、『サンフラワー』『ビッグアイ』『クロコダイル』が多い、ということも感じた。


 たぶん後方支援を担当する部隊だから、直接戦闘向けの機体が少ないのだろう。

 総合的な戦力として考えれば、通常の編成よりだいぶ劣るかもしれない。


 しかし一方で、『アングラー』が非常に多く、そこかしこにその巨大な姿が見て取れる。

 こちらは母艦タイプゆえに、無理に前へは出ず、こうして後方で控えているに違いない。

 撃墜には時間のかかる相手だし、速さが最も重要となる今は、なるべく戦闘を避けたいところである。


 またその周囲には、何機か『オベリスク』の存在も確認できた。

 相変わらず目視はできないが、レーダーの反応を見る限り、付近にかなりの数が潜んでいるようだ。

 当然密集している現在の陣形で、やつらに集中砲火されれば、あっという間に部隊は瓦解してしまう。


 ただし実のところ、現状ではさほど警戒すべき相手でもない。

 なぜなら今の互いの位置関係で、あいつが主砲をぶっ放せば、周囲の味方に甚大な被害を出してしまうから。

 俺達を仕留めに来ているのならともかく、他に重要な目的がある今、そこまでする見込みは極めて薄いはずなのだ。


 もちろんこの敵集団を突破した後、背後から攻撃される可能性はあるわけだが。

 しかしそれも、敵の第二陣と接触した時点で、やはり同じ理由から攻撃される心配はなくなる。

 今回に限っては、どう転んでも戦力外、と言い切ってしまって構わない相手だろう。


 実際みんな、そのまま『オベリスク』の砲撃を恐れず突進、各自が戦闘行動に移行していった。

 その先陣を切ったのは、いつものように栗原である。


『いっけー! 当ったれー!』


 いち早く最前線に突出し、こちらを迎撃しようとしていた敵集団に向け、全ての武装を同時に発射したのである。

 挨拶代わりの先制攻撃、というところか。


 そうして撃ち放たれた砲火は、五月雨のごとく前方に降り注ぎ、次々と敵機を粉砕していく。

 おかげでかなり敵の陣形が崩れ、自然と味方側に有利な状況が生まれた。

 斬り込み隊長としての役割は、十二分に果たしたと言えるだろう。


 そしてその後は、同じ場所に留まって、肩部に装着されたバリアを展開する。

 かつてのガーディアンがそうだったように、味方の盾となったわけである。

 あの防御力があれば、例え前線で集中攻撃をされても、すぐに落とされることはないはずだ。


 ただし攻撃役も兼ねる以上、ガーディアンほど防御一辺倒ではいられない。

 この戦い方を続ければ、いつかは攻撃へ移る際に隙が生まれ、そこを敵に突かれてしまう可能性があるのだ。

 当然のことだが、一人で戦わせるという選択肢は無い。


 ゆえに俺は、そのフォローのため――


(お前らの相手はこっちだ!)


 正面の敵陣へと、一直線に斬り込んでいった。

 少しでも相手方の戦力を減らし、栗原が受けるであろう被害を抑えるために。


 そこでまず狙ったのは、栗原の付近にいる『ゴーレム』だ。

 数が少ないとは言え、看過しがたい火力を有するあれを仕留めておかねば、安全など確保しようがないからである。

 その目論見を胸に、俺はさらに前進を続けていく。


 もちろんその途中で、周りの敵から攻撃もされたが、俺はそれに構わず突き進んだ。

 降り注ぐ敵の砲火を、タンクのシールドで防ぎつつ、全速力で『ゴーレム』へ接近していったのである。

 もしこいつが無ければ、こうも無茶な戦い方はできなかったな、とシールドの防御力に感謝しながら。


 そうして軽微な損傷と引き換えに、一機の『ゴーレム』に対し、格闘戦の間合いまで肉薄した俺は――


(落ちろ!)


 即座に大型ブレードを一閃、目前の『ゴーレム』を真っ二つに斬り捨てる。

 結果そいつは、拍子抜けするほどあっさりと爆発、残骸を辺りに撒き散らしつつ果てていった。

 とりあえずは一機撃墜、というわけだ。


 だが直後、その戦果を喜ぶ間もなく――


(詰めてきたか!)


 周囲の『バグ』や『クロコダイル』が、大挙して俺の元に群がってくる。

 巣穴へ侵入してきた外敵に対し、野生の獣が牙を剥いて襲いかかる時のように。

 たぶん『ゴーレム』を仕留めた俺を、危険な相手と認識し、集中的に迎撃してきたのだろう。


 しかもその反応は、これまでの戦闘と比べるとかなり早い。

 どうやら味方の人数が少ないせいで、敵が今まで以上に集まりやすくなっているようだ。

 このままの状態で戦っていると、簡単に包囲されてしまうかもしれない。


 そう自身の立場を把握した俺は、一瞬だけ、いったん退くべきかとも思ったのだが――


(ん……? これは……望月か?)


 ちょうどそれと同時に、俺の周りに何機かのビットが出現、敵の迎撃を開始した。

 おそらく囲まれた俺を見て、望月が支援に寄越してくれたのだろう。

 心強い援軍の到来、というわけである。


 実際そのビットは、俺の周囲を素早く飛び回り、群がる『バグ』どもを次々と落としていく。

 すでに自らも戦闘を始めているはずだが、それでいて動きは十分に機敏だ。

 相変わらず見た目に似合わぬ大したやつ、と言うしかない。


 その支援おかげで、また自由な動きができるようになった俺は、すかさず戦闘を再開した。

 推力全開で移動しながら、小型の敵をショットガン、大型の敵をブレードで仕留めていったのである。

 それこそ暴風雨のごとく、敵のただ中で、縦横無尽に暴れ回りながら。


 すると程なくして、付近の敵の掃討を完了、一定の安全確保に成功する。

 これでとりあえず、すぐ栗原が危険になることはないはずだ。

 戦力が限られていることを考慮すれば、悪くない戦いぶりと言えるだろう。


 とは言えこちらにビットを回した分、望月達の担当エリアは、状況が悪くなっているに違いない。

 艦の防衛と俺の支援を、同時に平行して行い、通常以上の負担を強いられていたはずなのだから。


 そう憂慮した俺は、素早く後方を振り返り、母艦の状況確認を行ったのだが――


(……大丈夫そうだな)


 意外にそちらも、今のところ大きな問題はなさそうであった。

 包囲され攻撃を受けてはいるが、志藤と望月の奮闘の甲斐あってか、十分に持ちこたえていたのだ。

 確実に大丈夫な状況ではないが、しかし救援が必要なほど追い詰められてもいない、という印象である。


 ゆえに再度前へと向き直り、俺はレーダーを頼りに次の敵を探す。

 本来の自分の役割――後に続く味方のための突破口を開く――を果たすため、進行方向の障害を排除しておこう、と考えたのだ。


 結果としてそこで、俺の目に入ってきたのは――


(これは……厄介だな)



 行く手に立ちはだかる、一隻の『アングラー』を中心とした、多数の敵の一団であった……








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