表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ムーン・セイヴァーズ  作者: 白洲ヨム
Chapter-01 『Missing』
13/173

Epilogue

更新履歴 21/9/8 文章のレイアウト変更・表現の修正


『以上で、本日のミッションは終了です。

 お疲れ様でした』



 そうゲームの終了を告げる、いつもの合成音声をバックに、俺は自分の頭から乱暴にゲーム用のヘッドセットを剥ぎ取った。

 色々あって、いつも以上に疲れたな……と、らしくもなく肩凝りなんかを感じながら。


 それからふと思い立って、軽く周囲に視線を巡らせ、辺りの様子を把握しようとする。

 ここがゲームの中でないことを、なぜだか急に確かめたくなったから。


 結果として、目に入ってきたのは――


(……いつも通り、か)


 毎度お馴染みの古いレクリエーションルームと、その中に設置されたゲーム用の各種設備、そしてそこに集うクラスメイト達の姿だ。

 要はきちんとゲームからログアウト済み、ということである。


 それがしっかり確定したことで、俺は不思議とひどく安心した。


(良かった……)


 ゲームを無事終えられた、というごくごく当たり前の事実に、奇妙とも言えるほどの大きな安らぎを覚えたからだ。

 あたかもつい先ほどまで、何か強烈なプレッシャーでも感じていたかのように。


 ただもちろん、単にゲームをしていただけで、どうしてそういう感覚を抱いたのかはわからない。

 自分のことだと言うのに、どうにもおかしな話である。


(……んん?)


 などと、独り首を傾げる俺に対して――


「よっ、キッハー。今回はずいぶんピンチだったじゃ~ん」


 そんないかにも軽薄、と言ったセリフと共に、突然柳井満が声をかけてきた。

 しかもたいへん馴れ馴れしく、こちらの肩へと手を載せながら。


 その調子のいい口ぶりから察するに、どうやらこの男、今回の俺の醜態をイジっているようだ。

 正直に言えば鬱陶しいし、ここはひとつ、適当にあしらっておきたいところである。


 とは言え一応、先のピンチの際には、間違いなく彼にも援護してもらったはずである。

 いくら面倒臭かろうとも、それについてはしっかり感謝しておく必要があるだろう。


 そこでとりあえず、お礼はしっかり言った後――


「ああ……うん、いやホントに助かったよ。

 でもその呼び方はやめてくれ」


 話の流れを切るために、その妙な呼び方について抗議をしておく。

 まあ彼はたびたび、他人にこういう変なあだ名を付けるので、最初に釘を刺しておきたかった……という目的もあるのだが。


 そうしたこちらの反応に、当の柳井は――


「あれ、気に入らなかった~?

 俺はいいと思うんだけどな~」


 やはりそんな風に軽々しく応じてから、何かごまかすように、脈絡のない笑い声を上げた。


「ハハハ、まあ次は頑張ろうぜ~」


 そして激励のような言葉を残して、俺から離れていく。

 一応、面倒なイジりと変なあだ名は回避できたらしい。

 無事に任務完了、と表現していいだろう。


 俺がその戦果に、独り満足していると、次いで久保擁介と目が合った。


(……お?)


 少し物憂げな表情で、こちらをじっと見つめる彼と、偶然視線が交わったのだ。

 雰囲気からしておそらく、苦戦していた俺の状態を心配しているのだろう。


 それを見てようやく、彼こそが今回の本当の恩人である、ということを思い出した俺は――


(ありがとう。それと俺は大丈夫)


 助力に対する感謝の意と、自分はもう心配要らないということを示すため、無言のまま軽く片手を掲げてみせる。


 すると久保は、『どういたしまして』とでも言うかのように、同じく片手を軽く振り返してきた。

 心配そうだった顔に、穏やかな微笑みを浮かべながら。


 次いでそのまま、隣にいた志藤明と連れ立って、静かに部屋を退出していく。

 柳井のやつとは違って、非常にさっぱりした対応である。

 いやはや、実にありがたい。


 そう温厚なクラスメイト殿に感謝しつつ、俺は固くなっている体に力を込め、自分用のシートから立ち上がった。


(さて、と。俺も行くか)


 ゲームが終了した今、もうこの部屋に留まっている理由も無かったから。

 実際みんな、続々と帰り始めているみたいだし、このままその流れに乗るとしよう。


 しかしそう今後の方針を決めて、早速歩き出そうとした……まさにその瞬間――


(ん? なんだ……?)


 突然心に、強烈な違和感が芽生えてくる。

 自分を取り巻く全てのものに対し、これはどこかおかしい、正常じゃないぞという印象を受けたのだ。

 まるで魂の内側から、何かが必死でそう訴えかけているみたいに。


 しかもそいつは、時が経つにつれ、胸の内で際限なく膨れ上がっていった。

 何やら少々、恐怖すら感じるほどの猛烈さである。


 ゆえに俺は、その謎めいた感覚に押されて、再び部屋の中を見回す。


(……何か、変なところあったかな?)


 記憶を呼び起こしながら、部屋の各所を丁寧に、ひとつひとつ検分していったのだ。

 今までと変化している箇所が無いかを、もう一度しっかりと確認するために。


 だが、結局――


(んー……変わらない、よな)


 どれほど観察しても、部屋の様子に変わったところは見つからなかった。

 そこにはゲーム用のシートが、等間隔で『人数分』並べられている、いつもの風景があるだけだったのだ。

 どうやらこの違和感は、単なる自分の勘違いだったらしい。


 そう判断を下した俺は、さっさと気持ちを切り替えると――


(……帰るか)


 すでに退出していたクラスメイト達に続き、自分もレクリエーションルームの外へ出た。

 ホントに何やってんだ、と改めて己の変調を訝しみながら。


 ただしそのまま歩いて校舎の廊下を抜け、玄関から校庭へ出た頃、俺はまたしてもおかしな状態に陥っていた。


(うーん……何なんだろうなこの感じ)


 具体的に言うと、心のひどく奥まった部分に、自分は何か大切な忘れ物をしているのではないか……という感覚が生じていたのだ。

 おまけにいくら否定しようとも、決して打ち消すことができないほどに強く。

 それが原因で、ゲームのやりすぎで頭が変になったのだろうか、なんて疑いさえ芽生えてしまう。


 だからそこで、俺はいったん後ろを振り返ると、眼前に建つ我らが学び舎をじっと見つめる。

 その詳細について、改めて思い返しながら。

 自分の記憶や認識が、揺るぎなく正常であることを確かめるために。



 ここは、県立芦原高等学校第二分校。



 その周りに広がるのは、見渡す限りの緑深き森。

 それを取り囲むのは、平坦な尾根の連なるなだらかな山地。

 そこには校舎の他に、人が造った物の気配は皆無であり、もちろん街の灯火や喧騒も届かない。

 そんな僻地と呼ぶに相応しい場所に建つ、全校生徒合わせて――



 たったの『十一人』しかいない、片田舎の小さな高校である。



 そうして自分の置かれた状況について、全て思い返してみても――


(……うん、特に問題無し)


 結局、何ひとつ間違ったところは無かった。

 つまりおかしいのは自分の頭ではなく、この違和感の方と考えるのが妥当だ。

 きっと色々あったせいで、知らぬ間に疲れが溜まっており、結果こんな訳のわからない思い込みをしてしまったのだろう。


 俺はそんな風に、半ば無理やり結論を出すと、躊躇なくその違和感を投げ捨てる。

 そして迷うことなく踵を返し、そのままいつものように――


(今日も終わったか……)



 学校を後にして、『一人』で帰宅の途についた……

















インターミッション


第147特殊騎兵小隊戦闘記録



 本日発生した、第七次防衛戦闘について報告。


 第四防衛ラインに侵攻してきた、中規模の敵性集団と交戦。

 所定の時間戦闘を行った後、戦場を離脱。

 その際、隊員一名を損失。


 以下に、各員の戦果と評価を記述。



 ID     147265A

 登録名    カイト・キハラ

 機体タイプ  A-1アサルト

 総撃墜数   301

 撃墜スコア  5009pt

 貢献度評価  B+


 ID     147266A

 登録名    *******

 機体タイプ  B-1アーチャー

 総撃墜数   ***

 撃墜スコア  *****

 貢献度評価  *


 ※MIAによりデータ抹消


 ID     147267A

 登録名    スズ・ミヤマ

 機体タイプ  D-1トルーパー

 総撃墜数   171

 撃墜スコア  5322pt

 貢献度評価  B


 ID     147268A

 登録名    ノドカ・モチヅキ

 機体タイプ  E-2サテライトリンカー

 総撃墜数   104

 撃墜スコア  3643pt

 貢献度評価  D


 ID     147332B

 登録名    アキラ・シドウ

 機体タイプ  E-1コマンダー

 総撃墜数   36

 撃墜スコア  1671pt

 貢献度評価  A+


 ID     147333B

 登録名    ヨウスケ・クボ

 機体タイプ  B-3ブラスター

 総撃墜数   187

 撃墜スコア  4691pt

 貢献度評価  B


 ID     147464B

 登録名    マサユキ・サイカワ

 機体タイプ  C-2タンク

 総撃墜数   265

 撃墜スコア  5168pt

 貢献度評価  C+


 ID     147465B

 登録名    マナ・カスガイ

 機体タイプ  A-3アサシン

 総撃墜数   304

 撃墜スコア  6316pt

 貢献度評価  A


 ID     147818C

 登録名    マキ・クリハラ

 機体タイプ  D-2ストライカー

 総撃墜数   229

 撃墜スコア  4971pt

 貢献度評価  C+


 ID     147819C

 登録名    ミキヤ・タチバナ

 機体タイプ  A-2グラディエーター

 総撃墜数   126

 撃墜スコア  6390pt

 貢献度評価  A


 ID     147930C

 登録名    ミツル・ヤナイ

 機体タイプ  B-2スナイパー

 総撃墜数   169

 撃墜スコア  4901pt

 貢献度評価  C


 ID     147931C

 登録名    ユキコ・アサクラ

 機体タイプ  C-1ガーディアン

 総撃墜数   160

 撃墜スコア  4236pt

 貢献度評価  D+



 また当戦闘において発生した隊員の損失は、敵の新兵器によるものであり、現状その対処法は未発見。

 情報を求む。


 ただし現状、戦闘の継続には支障なし。

 よって引き続き、第四防衛ラインの守備に当たります。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ