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小春と日和  作者: mimuka
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眠り姫

「ふわ~あ」


季節は春。今日はいわゆる春日和。


眠気は最高潮☆


新学期が始まったとは言え、学年が一つ上がっただけで、そんなに緊張感も無かった。


中学生活も2年目にもなれば、慣れが出てくる。


1年の時はまだ、新入生ということで緊張感があった。


来年は受験生だ。今までで1番緊張することは、目に見えている。


だから2年の今が、1番気が緩みやすい。


アタシは桜並木を歩きながら、欠伸を連発していた。


「あっ、ダメだ…」


くらっ…と一瞬、気が遠くなった。


毎日6時間寝てても、この春日和には勝てない。


アタシは家に着くまでガマンできなくなって、方向転換した。


向かった場所は川原の土手。


ここは土手沿いに桜の木が植えられていて、今は満開で見応えがある。


広い土手には広場が作られていて、街から離れているせいか人の姿はあまりない。


草原は整備されていて、昼寝をするにはうってつけだった。


近くに交番があるので、変な人はうろつかないし。


アタシは人から離れ、草原に寝転んだ。


「ふあああ…」


もうそろそろ限界…。


このポカポカとあたたかい陽差しに、優しい風、青空と白い雲が、日常からアタシを切り離す。


「おやすみ…」


誰に言うでもなく、アタシはそのまま瞼を閉じた。


優しく撫でる風に、身を任せながら…。


「…んっ」


近くに人の気配を感じて、眼を覚ました。


「あっ、起きた?」


「えっ…?」


一気に頭の中の霧が晴れた。


眼をパッチリ開き、起き上がると、


「わっ!?」


「おはよう。良く眠ってたね」


いっいつの間にか、隣に見知らぬ青年がいた!


だっ誰だ?


じぃ~っと見ても、見覚えがない。


…つまり、知らない人だ。


知らない人に、多分長時間、寝顔を見られていたワケで…。


カァー カァー


…頭上では、夕日に向かって飛んでいるカラスが鳴いていた。


カラスが鳴いたのなら…帰ろう!


「しっ失礼します!」


カバンを引っ掴み、駆け出したアタシ。


「あっ、ちょっと!」


寝起きとは思えない動きで、アタシはそのまま家の中まで走った。


「ぜぇーぜぇー…」


自分の部屋に着くと、床にバッタリ倒れた。


はっ恥ずかしい…。


見知らぬ青年に、寝顔を見られ続けていたなんて…。


…思い出してみると、青年は結構美形だったな。


多分20歳そこそこ。見た目は遊んでいそうなカンジもしたけど、好青年っぽい。


そんな人に寝顔を見られていたなんて…。


赤っ恥もいいところだ。


しかしあの人も、大人しく座っているだけじゃなくて、せめて声をかけてくれたらよかったのにっ!


…声をかけるのを躊躇うほど、爆睡しているように見えたんだろうか?


「まっまあ、どうせもう会わないだろうし!」


そう自分に言いきかせ、アタシは復活した。


今度から外の昼寝は控えるようにしようと、心に決めて。


それからと言うのも、どんなに眠くてもガマンした。


だけどっ! この小春日和は強いっ!


あの日から10日が過ぎていた。


あの場所へ向かい、キョロキョロと辺りを見回す。


だけど誰もいない。


…でもこの『誰もいない』という環境がマズイのかもしれない。


遊具のある所では、子連れのグループがいる。


それに他にも草原で寝ている人もチラホラ。


だけど人の多い所の方が、安全かもしれない。


…それとあの青年に会わないだろう。


人のいる所はちょっと気恥ずかしいけれど、赤っ恥をかくよりはマシ。


同じように昼寝している人がいるし。


アタシはフラフラしながら寝転んだ。


「ふわっ…。おやすみ」


そしてまた、夢の世界へ飛び立った。



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