2人の環境
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頭がくらくらする。
めまいかもしれない。
あの光景を思い出すだけで、心が不安でいっぱいになる。
私を傷つけて生きる思いをズタズタにしたあの男。
生涯忘れることはないその男は、自分の学校の学年主任だった。
心の内に激しい怒りと憎悪を持つ、その男の名は……浩一。
そう。今井浩一。
高校の学年主任で、何故か私に異常に固執する少し変わった先生だ。
私は、あまり先生に恵まれないのかもしれない。中学の時も、特に2年生の時が最悪の担任だった。
父は私が12の時に胃がんで死んでしまった。母は私をどちらかというと、私をおざなりにしていて、それは父が亡くなってからは激しさを増した。そして、「アンタは私の子じゃない」と言って私を家から追放した。
そんな事をすれば、当然、児童相談所などが動きそうなものだけど、頭の回転の良い母は事前に周囲に私が友人の家に一緒に住みたいから、という出鱈目な理由を作って手を打っておいた様だった。自分の親ながら酷すぎると思った。こういうのを毒親っていうんだろうなあ。そんな母に私は愛情のカケラも持っていなかった。
強制的に家を出された私、長谷川美香里は、同じクラスの高梨理恵果と一緒に彼女の叔父の家で下宿をしている。
理恵果は母親から酷いDVを受け続けた原因で、心の病を罹ってしまっていた。その理恵果の叔父の妻が見かねて、彼女を引き取った。もちろん親権についても協議している。
私と理恵果は親友だ。少なくとも私はそう思ってるし、高校を卒業してもずっと親友のつもり。小さい頃から一緒で、また母に対しての苦い経験を持つという、同じ境遇同士なので妙に気が合っていた。
理恵果の家は割りと大きくて、離れがある。その離れに私と理恵果は一緒に生活をしている。時々、心の均衡が崩れて人格が変わってしまう理恵果の傍にいて、一生懸命に私は彼女を助けた。そして、私が過去の虐めに悩まされてたり、魘されて悪夢を見ているときも「美香里、大丈夫?」と言って背中をさすってくれたり抱きしめてくれたりする。
私たちはか弱い存在だ。でも、2人でいれば大丈夫。そう私も理恵果も思ってる。
これから、どんなに辛い思いをしようとも、私たちは生きてやるんだ。そう思いながら空を見上げていた。