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第二十九話 凍れる海

大変、長らくお待たせしました。


サクヤと別れて1分と経たず妾が見たのは、凍り付いていく海だった。

高々と上がった波の形のまま凍り付いた氷壁がいくつも並び、それは沖に進むにつれて徐々に小さくなっていく波もその先端まで凍り付かせていた。

アイシャとムツキの手を強く握り、この氷の真ん中へと進む。

肺まで凍るような凍てついた空気を肺腑に染みわたらせ、よく目を凝らして見つけた。

広大な氷の真ん中でたった一人の男を見つけた。

跪いて、氷に手を押し当てていた。

氷でできた大地に降り立ち、妾は駆け寄った。


「小六!」


「…………」


名を呼んでも、小六は反応しない。

ただ静かに、氷に掌を押し当てている。

妾が来たのになにも反応しない小六。


「小六!なんで何もいわないのじゃ!」


大声で呼びかけても微動だにしない小六。

違和感を覚えた。それはなにか?

小六の体を揺さぶると、わかった。わかってしまった。


「なにか言わぬか!」


押しても、叩いても、抱きしめても……小六は眉一つ動かさない。

小六の体は、氷よりも、冷たく、凍てついていた。


「ふざけるな。ふざけるな小六!なんで、なんでお主が……」


涙が溢れて止まなかった。

なんでこんなことに。そう思っても、どんなに悔いても尽きない。いくら後悔したって足りない。


「…………ェン」


小六の声がした。


「小六!生きておるのか!」


「リ…レン」


「ここにおるぞ。ここに!」


小六を力いっぱい抱きしめる。


「リンレン……俺、やったぞ」


「何も言うな!すぐに温めてやるからな」


すぐに祝詞を唱え火之迦具土之命を呼び出す。

指から滴る血は止めずに二木葉乃男も呼び出し、治癒を施す。

並みの治癒魔法ではすでに助けられないのは、その凍ってしまって今にも崩れそうな腕や足を見れば明白である。


「心、配性だ……」


アイシャとムツキも事態を把握したのか、介抱を手伝ってくれる。

解凍と治癒を同時で行う。

暫くして、小六はどうにか助かった。ただし、彼は頑なに右手を氷から離そうとしなかった。


「一人で無茶しおって……お主、死ぬところだったのじゃぞ!」


「でも、リンレンが来てくれた。お陰で命拾いした」


「何を呑気に……ところで、なぜ右手を離さないのじゃ? 冷たいであろうに」


「離れられないんだよ。これ……」


「どういうことじゃ?」


「……扶桑照天神?とか言う神様が凍らせるの手伝ってくれたんだけど、なんか海の神様と地面の神様がそれに怒っちゃったらしくて、いま謝りにいってるからその間は手を離さないでくれって。離すと大変なことになるらしい」


「神と話をしたのか?」


「うん。なんというか……頭の中から直接声を掛けられているような感覚だったよ」


そりゃ自分の中にその神様がいるのだから当然だろう。と言いたかったが、ぐっとこらえた。


「それよりリンレンがここにいるのは不味いんじゃないか? 国のトップがこんなところにのこのこきたりしちゃ__」


「それは問題ない。それよりもあんなにいきなり出ていきおって!」


「悪かったって」


しばらくして小六は氷から手を離した。同時に小六に神威が戻っていた。

神様同士の話し合いは折り合いがついたらしい。


「さて帰ろうか。城に。やることはいくらでも多いからね」


「それは妾の台詞じゃ!」


笑っていた。自然と妾と小六は笑っていた。


今度は小六に抱えられて空を舞う。

空からついでとばかりに凍った海を火之迦具土之命の炎で溶かす。

髪の毛を肩のあたりからばっさりと切って、それを依り代にした。

氷が解け、いつも通りの海になった。


「さてさて、後始末をすることにするかの」


妾たちは城に戻る。


今度こそ、妾は……いや、私は私しかできないことのために。

一応、これが終話となります。


正直、続きを書くか、どうか悩んでいます。

他の小説を書くのに夢中というのもありますが、同時進行的に2つの作品を書くのは正直苦手なのです。


続編を希望される方が一人でもいましたら、続きを書きたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱりハッピーエンドは良いですね。 でも、この後のやることも少し書いていただけると落ち着きます。 指輪の行方とか。
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