整理
「……着いた」
無事に王都に着いた俺は、真っ先にギルドに向かった。
だいぶ遠回りをしてしまったが、それなりに急いできたつもりだ。早くあの冒険者のことを報告しないといけない。
人数はあの弓使いを合わせて合計八人。リーダーはあの長剣の男で間違いないだろう。パーティー構成が分かっている上に、そのリーダーに至っては【魔力視】というギフトを持っていることまで判明している。
これだけ分かっていればどのパーティーなのか、かなり絞れるのではないだろうか。
とりあえず、さっさとギルドに報告しよう。
俺はギルドの扉を開けて中を見渡す。
「よかった、いない」
もしあの冒険者たちが俺よりも早く来ていたらどうしようかと思ってた。あいつらが来ないうちにさっさとやろう。
「うん?」
ふと、他の冒険者の俺に対する視線の質がいつもと違うことに気が付いた。いつもは睨みつけてくるやつがほとんどなのに、今日はなぜかコチラをチラチラと覗うものばかりだ。
……どうしたんだろうか。
そんな疑問は抱きつつも、俺は職員さんに話しかける。
「すみません、少しお話ししたいことがあるのですが……」
「あっ、カカルド様ですね! ギルド長がお呼びですので少々よろしいでしょうか?」
「はい?」
俺が聞き返すと、職員さんが小声になった。
「カカルド様を襲った冒険者について、ギルド長からお話があるそうです」
「え?」
なんでそのことを知っているんだ?
「コチラです」
俺が質問するよりも早く、職員さんに案内される。
……そのことも含めてギルド長が話すってことか? よく分からないが、とりあえずついていこう。
「ギルド長、カカルド様をお連れしました」
そうして、俺は個室に案内され――そこには、見覚えのある顔があった。
「ブルースさん?」
「おう、久しぶりだな」
ソファに座っていたブルースさんが片手を上げる。
「ギルド長というのはブルースさんのことだったんですか?」
「おうよ」
俺が驚きながら尋ねると、ブルースさんはニヤリと笑って答えた。
……職員関係者かもしれないとは思っていたが、まさかギルド長だったとは。
「まあ、まずは座ってくれ」
「あ、はい。失礼します」
俺はブルースさんの前の椅子に腰掛ける。
「さて、改めて俺が王都冒険者ギルドのギルド長を務めているブルースだ。前にも言ったが、お前のことはアナザからよく聞いている。何かあったら俺に言ってくれれば力になるからな」
アナザと親しい関係なのは冒険者仲間というわけではなく、ギルド長とそのギルドの最高ランク冒険者という関係だったからか。
「ありがとうございます。……それで、その、さっそく冒険者に襲われた件ついてお力をお借りしたいのですが」
「ああ、そうだったな。最初に言っとくが、お前を襲った冒険者については既にこちらで対処済みだから安心してくれ」
「対処済み?」
ブルースさんの言葉に俺は聞き返す。
さっきの今でもう既に対処済みとはどういうことだろうか。
そんな俺の疑問にブルースさんが答える。
「おう、実はお前が冒険者に襲われていたところを見ていた者がいてな。その者がいち早く報告してくれたお陰でギルドで迅速に対応がすることが出来たんだ」
「……そうだったんですか」
つまり、俺が安全を考えて遠回りをしているうちに全て終わっていたということか。
「因みに、その冒険者たちはどうなったのでしょうか?」
対処済みということだが、また俺を襲ってくるようなことがあったら大変だ。
俺が質問すると、ブルースさんは少し考えるような仕草をする。
「ん? あー、そうだな。そいつ等は全員地下の牢屋の中に入れといた」
「ああ、なるほど」
ここの地下って冒険者専用の監獄だったな。それなら安心だ。あ、そういえば監獄で思い出したが、この際だからバーバランさんについても聞いてみようか。
「ギルド長、突然で申し訳ないのですが、バーバランという名前をご存知ありませんか?」
俺がそう問い掛けた途端、ブルースさんの雰囲気が一変する。
「……どこでその名前を知った?」
――え?
ドスのきいた重く低い声で聞かれる。
いきなり、どうしたんだ? なにか地雷を踏んでしまったのか?
突然のことに一瞬思考が停止するが、急いでブルースさんの問いに答える。
「監獄で過ごしていた際にそのバーバランという人物に会ったんです」
俺の返答に、ブルースさんが驚愕の表情を見せる。
「……まだ生きていたのか」
まだ、生きていた……?
「どういう意味ですか?」
「……」
俺は尋ねるが、ブルースさんは俺の言葉など耳に入っていないようで必死になにかを考え込んでいる。
……本当にどうしたんだろうか。
そうして黙っていると、ブルースさんは急に顔を上げ慌てた様子で聞いてきた。
「バーバランはどこにいた?」
「どこに? ……普通に牢屋の中にいましたが」
いや、牢屋の中は普通ではないか。
と、そんなことを考えているうちに、またブルースさんはぶつぶつと独り言を呟き始めた。
「――魔力溜まりが消えたのか? いや、確認をするのが先か」
考えがまとまったのか、ブルースさんがこちらを見る。
「とりあえず、お前は今日のところはもう帰った方がいい。明日もう一度ギルドに来てくれ」
「あ、分かりました」
よく分からないが、ギルド長が帰れと言っているのだから素直に言うことを聞いた方がいいだろう。俺の用事は解決したわけだしな。
「では、明日もう一度来ます」
そう言って、俺はギルドを後にした。




