奴隷
「……この少女が、上級ギフトを持っている奴隷なのですか?」
「はい、その通りでございます」
改めて、目の前の無表情の美少女を観察する。
……なんというか、本当に生きているのか心配になる。
背の丈は、俺の胸元辺りまでしかない。白い肌に、長い黒髪。恐らくこの世界でもこの少女の容姿は、可愛いや綺麗といった分類に入る方だと思う。
そして、獣人――たしか猫耳族だったか――特有の猫耳に、長い尻尾。この国には獣人差別などは特に無かったはずだが、この国で猫耳を見たのは今が初めてだ。というか、そもそも王都周辺に猫耳族の集落は無いはずだが……。
まあ、そこら辺のことはバーバランさんのことも含めて後でもう一度アナザに確認しておこうか。今はそれよりも、少し気になることがある。
「すみません、疑うわけではないのですが、この少女が所持しているギフトなどのことは、一体どうやって確かめたのでしょうか?」
疑ってはいないとは言いつつも、男に疑いの眼差しを向ける。
というのも、相手のギフトを確認する方法なんて神官に視てもらう以外に聞いたことがない。もしかしたらそういった魔法もあるのかもしれないが、単にこの少女が自分の口で言っただけということなら話は変わってくる。
そんなことを思っていると、男は笑顔を崩さずに答えた。
「この奴隷は、以前この商館に勇者様がいらっしゃった際に、勇者様が直接視られた代物ですのでご安心下さい」
思いがけない単語に、俺は眉を顰める。
「勇者様?」
「はい、勇者様が奴隷を買われた際に、勇者様に無償で全ての奴隷の【ギフト】を視て頂きましてね。今いる奴隷の中で、この奴隷が唯一上級のギフトを持っているのですよ」
「……なるほど」
そういえば、あの勇者は奴隷を連れていたな。たしか活発そうでこの少女と同じ猫耳族で……。
「……」
勇者が連れていた奴隷の容姿を思い出し、俺は一抹の不安を覚える。
チラリと少女の様子を確認すると、先ほどまでと同じ生気の感じられない無表情のままで、瞬き一つしていない。
まさか、とは思いつつも、少女には聞こえないように、商館の男に近寄り小声で話しかける。
「……一つお聞きしたいのですが、勇者様が買った奴隷は、この猫耳族の少女の家族だったなんてことはないですよね?」
しかし、商館の男は俺の行動を察することが出来ない野郎だったらしく、嬉々と、大声で答えた。
「おお! よくぞお聞き下さいました! 正しく、勇者様が買われた奴隷は、この奴隷の姉にあたる人物でございます。つまり、この奴隷は、勇者様のお仲間の妹ということです」




