リスタート!!
うぉい!
「世界がヤバイ!! 」人間以外の動物は、すべて本能でそれを察しただろう!!鳥は飛ぶのを!魚は泳ぐのをやめ!地球の裏側にいる犬でさえ死を覚悟した!!
ーーーあの少年が現れるまではーーー
この不協和音の元凶である異形の者が、町の離れにある城にいた。 全身の肌が黒く、赤い縦線模様が入っているその男が、成りに似合わぬ台詞を己が血と共に吐く。
「バ、バカなぁ!!この私がぁ!!人間の手によって産み出された
この私がぁ!!人間の手によって滅びるとはぁ!!」
苦しそうな顔で、自らの敗北を悟ったように、さらに呟く「これが・・・人間の出す本気だというのか・・・」
弱々しくなった顔で、男が見上げた目線の先には一人の少年がいた。そしてこう口を開く。
「いいや、違うぜ。これは・・・俺の本気だ・・・」
希望のない顔であった異形の者は、ほくそ笑んでこう言った。
「私はまた現れる。必ず貴様の前に現れる!!その時まで忘れてくれるなよ・・・私の名は・・・」
ーーーギルガルゼーーー
「俺の名前は坂巻進だ、覚える必要はねぇぜ。どうせ、忘れちまうからよ」
ニヤッと笑うギルガルゼの顔が白く光る!! 少年がとどめめ一撃を放つ!! 凄まじい爆発と共に戦いは終決!! 世界を巻き込もうとするギルガルゼの野望は一人の少年によって未然に防がれた。被害は一つの町だけ。
しかし、この事件を覚えているものはいない・・・今は・・・。
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そして時は、そこから半年を経た春!!舞台は海沿いの白い建物に移される!!
世界の中心と言われる大都市 エルサティール。そこにはこの世のテクノロジーが全て集まっている。高いビル群は勿論、空飛ぶ二輪車、注文すれば瞬時に届くデリバリーフード、犯罪を犯すものななら直ぐさま犯人を特定出来る情報網などだ。
そしてそのエルサティールの最南端にある、一部屋二万か?と思える程のボロアパートもとい寮に、一人の少年がジリジリと機械的に喋る時計で目を覚ます!!
「んん、、、んあ、あぁもうこんな時間か、、、」
午前七時半の出来事である。
ここだけ見ると何気無い朝の場面だが実は彼、六時に起きて優雅に朝を満喫しようとしたのだが、まだ寝れると睡眠の悪魔に負けだ後なのだ。
ごく平均的な長さの白い髪をかき上げる。そして胸元にワッペンが付き、袖と中央に白いラインが入った黒い学ランを床から拾い上げ、重い体を慣らしながら身支度を終わらし寮を八十メートル程後にする。
すると、道路脇にボロボロのゲームセンターがある。外観は完全に潰れている感じだか、中にあるアーケードは、日焼けした画面を通り越して僅かばかりの濁った光を放っている。
「ん?」
そこになんとぉ!!か弱い女の子が大柄な男に何かをされそうになっているではないか!!
「なぁお嬢さん、俺と楽しいことしねぇか?」
怯えた顔で少女。
「や・・めてくだ・さい」
寮を後にした少年はこう思った。うわーこれはギリギリまで寝ようとせずに一回目の目覚ましで起きときゃ良かったかー
後悔先に立たずである。
「その手を離しな!」 体が重いと感じながらも、出会ってしまった以上見過ごせない。そんな紳士の精神と体の燃費の悪さを最悪な相性だと恨み、大柄な男に立ち向かう。
「アァ?なんだてめ・・・」男は青ざめた。少年の制服を見た瞬間に。
「て、てめ、エイデンの学生か!?」
鋭い目付きで少年はこう返す。「そうだ、分かったらどっかに行きな」
「こ、このぉぉぉ!!」男はビビりまくる。
「こ、このうあぁぁぁぁぁ!!」
追い詰められた男は少年に殴りかかる!! 窮鼠猫を噛むだ!!
久しぶりだな、敵意を向けられた攻撃は。それにしても本当に遅いパンチだ、この間に千発は叩き込めるぜ。そんな思考を巡らせる前に
「ぶふぉえ!!」
ーーー少年はぶっ飛ばされたーーー
男のパンチを顔面に食らったのだ。
見えていたような見えていなかったような、どのみち体はついてこなかったけどな!そう少年は思ったはずだ!!
何より驚いたのは少年ではなく!! 男!! というよりは助けてもらえると思っていた女の子だぁ!!
「や、やったぞぉぉ!!俺はエイデンの生徒を!!レベル持ちを倒したぞ!!」
嬉しさで天を仰ごうと上を向いたとき、そこには一人の少女がいた!! 男に言い寄られていた少女とは別の少女がいた!!蒼髪で2つ結びの少女がいた‼︎ かかとおとしの体勢でいた!!
男は思った。何で少女がいるのだろうとか、何故かかと落としをしようとしているのだろうとかではない!!何故この角度でパンツが見えな・・・「ブンギャ!!」
そのまま不細工な顔に少女のかかとが落とされた
心の中でさえ言い切ることは出来なかった。この男に関しては上を向いて歩くべきではなかった。
「ふぅ、ったくもう!なんでこんな場面に出くわすのよ!」
男を倒した少女は少しご立腹だ。
「ごめんなさい~」男にちょっかい出されていた少女が泣きなが謝る。
「あ、あなたのせいじゃないのよ、あの男にムカついてただけだから!」慌てて訂正する。
「また変なのが出る前に早く逃げた方が良いわよ」
「あ、ありがとうございました!!」スタスタとその場を後にするちょっかいを出されていた少女。 意外とアッサリに。
問題は片付いたっと。 そう思おうとしたが、あることに気付く。
「・・・・・」
蒼髪の少女は大柄な男にワンパンでのされた少年の元に歩き、覗き込む様に見る。
「あの・・大丈夫・・ですか?」 恐る恐る聞く少女はここで驚愕する。
「あぁ!その制服、あんたエイデンの生徒じゃない!」
気絶のフリなのか、本当に気絶していたのか、少年がようやく目を覚ます。
「あぁ・・・そういう君も同じ制服じゃないか・・これからヨロシク」微笑む少年 それに対しグワァッという表情をする少女。
「ヨロシクじゃないわよ!! あんたエイデンの生徒ってことはレベル持ちでしょ!」
当たり前じゃん何いってんの?という顔で一言。
「うん」
「うん。じゃないわよ! 良い?この世界には二種類の人間がいるの!レベル持ちとそうじゃない人間よ!レベル持ちっていうのはね!それだけで! レベル持ちじゃない人間が何しても勝てない体になってるの! アンタの体にもバルハーストって言うエネルギーが流れてるでしょ!生まれて半年で体に馴染むはずなのに!なのに!何であの男に負けてるのよ!」
良い?この世界には・・・から少年は聞いていなかった。
「まぁあれだ、手加減してたんだよ」
アンタ・・・気絶してたじゃない。そう言いたげなジト目で少年を見る。
「ってかそろそろヤバイぜ、今日は」 少女には少年が話を誤魔化そうとしている様に見えたが、冷静になって言葉の意味を考えてみた 。
「あぁ!入学式の時間じゃない!」
今日は彼らの通おうとするエイデン学園入学式。少年が早起きしようとしたのはこのためであった。
「急ぐわよ!」 そう言って、とても慌てながら学園行きの自動運転列車アルタメーカに乗り込んだ。
列車は、少年のいる町からエイデン学園までの直通で、生徒、関係者専用。エイデン学園は離島にあるのだ。そしてその島自体が学園の所有物。直通で学園専用なのは別に優遇されているからではない。下校中の生徒が暴れて被害を与えたことから、町民からの苦情で隔離しているのだ。
そんな列車の中で景色を見ている少年に、少女は。
「さっきは・・・ごめんなさいね。」
元気のあった出会いの面影を残しつつ新しい一面を見せる少女の謝りかた。
しかし、少年は思う。
え?どれのこといってんの?心当たりがありすぎる。
そんなことはお構い無しに少女は続け、列車内の雰囲気がうって変わる。
「あなたも必死になってあの女の子を助けようとしたのよね。なのにあんなこと言って・・・ごめんなさい」
少年の瞳孔は開いた。強気な少女の言うごめんなさいが、彼の何かしらの記憶と重なる。その瞳に映る少女の姿は少年の見たかったものなのかもしれない。
やっぱりなと、今度は微笑みながら嬉しそうにして少年はこう言った。
「来てくれると思った。だから、立ち向かえたんだ・・・」
あまりに突拍子も無く意味も分からない答えだったので、驚いた表情を少女はした。すかさず少年は続ける。
「坂巻進。俺の名前だよ。今度こそ、ヨロシクな」
朝の日差しや初めてみる列車内からの景色も相まってか、少女から見る少年は、少し不思議な感じがした。上手く表情を探せないまま少女は、答えた。
「ジュゼル=ペン=ベル・・・私の名前 」
その時改めて認識した。
白黒のリボンを着け、2つ結びにした蒼髪の少女を 白髪で蒼眼の少年が。
少し痩せ細った、どこか掴み所のない少年を 腰まで髪の長い、蒼眼の少女が。
ぬぉい!