天国発 冥府行き
朝方 機械音に起こされて僕は目覚める
何を怯えてるの 何を怖がっているの
本には書いてある こう冷たくね
「悪しき者は追う者もないのに逃げる」
夕方 帰路につきながら僕は自分に訊く
何を求めているの 何を欲しがっているの
本には書いてある こう残酷にね
「貪欲なる者は業火に焼かれるだろう」
詩人はきっと本当のことも言えない臆病な奴で
例えや比喩で晦ましては 平気な顔をしているけれど
その胸の内に潜むものは 愛情や思いやりばかりでね
そいつに苦しめられながら 今日も作り笑いをしているんだ
逃げて逃げてばかりで 多分後ろ指をさされて笑われているんだろう
嘘をついてついてばかりで 多分地獄に落ちるまで気づかないんだろう
傷つけて傷つけてばかりで 多分悪態ばかり叩かれているんだろう
だけどね 正直すぎる僕は自分を苛むのにも疲れてしまったんだよ
朝焼け 心臓の音に起こされて僕は目覚める
何が欲しかったの 何を求めていたの
ムービーヒーローは言った こう薄情にもね
「凡庸なる者よ 君たちの罪を許そう」
夕焼け 君の電話を待ちながら僕は自分に訊く
何を恐れていたの 何に怯えていたの
ムービーヒーローは言った こう情熱を込めてね
「僕らの行き先に暗闇を与えないでください」
詩人はきっと本当のことを言えば言うほど罪深くなる奴でね
例えや比喩で隠しては 平穏が保たれるようにしているけれど
その胸の内に潜むものは 「愛と平和」そんな言葉ばかりでね
そいつにすがりすがられては 今日も媚びた笑いを浮かべてるのさ
だましだましてばかりで 多分誰かを泣かせたことにも気づかないんだろう
あざむきあざむいてばかりで 多分死んで無になるまで自嘲しているんだろう
守り守ってばかりで 多分疑いの目ばかり投げられているんだろう
だけどね 正直すぎる僕は自分を恨むのにも疲れてしまったんだよ
みんなと見る約束をしていたあの夜空
その真っ暗闇の先にはきっと光があって
誰をもの足元を照らすはずだけど
今はそれに気づかないまま 僕らはうなだれて歩くしかないんだ
みんなと見る約束をしていたあの星の向こう
その嘘ばかりの場所には 一欠けらの本当もあって
誰をもの進む道を照らすはずだから
今はそれにいつか気づけると信じて 僕らは顔をあげるしかないんだ
だって綺麗じゃないか その方が
だって美しいじゃないか その方が
だって強いじゃないか その方が
だって逞しいじゃないか その方が
でもそんな僕を 君たちは罵るんだろうね
「嘘つき」って
それは知っているんだ
そして僅かながらの本当が 今僕の手から離れていこうとしていることも
そうそれは最初から決められていたこと
僕の行き先には「天国発 冥府行き」と書かれた看板が立っている
眩いほどの光に照らされて