表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新世紀の殉教者

天国発 冥府行き

作者: keisei1

 朝方 機械音に起こされて僕は目覚める

 何を怯えてるの 何を怖がっているの

 本には書いてある こう冷たくね

 「悪しき者は追う者もないのに逃げる」


 夕方 帰路につきながら僕は自分に訊く

 何を求めているの 何を欲しがっているの

 本には書いてある こう残酷にね

 「貪欲なる者は業火に焼かれるだろう」


 

 詩人はきっと本当のことも言えない臆病な奴で

 例えや比喩でくらましては 平気な顔をしているけれど

 その胸の内に潜むものは 愛情や思いやりばかりでね

 そいつに苦しめられながら 今日も作り笑いをしているんだ


 逃げて逃げてばかりで 多分後ろ指をさされて笑われているんだろう

 嘘をついてついてばかりで 多分地獄に落ちるまで気づかないんだろう

 傷つけて傷つけてばかりで 多分悪態ばかり叩かれているんだろう

 だけどね 正直すぎる僕は自分をさいなむのにも疲れてしまったんだよ



 朝焼け 心臓の音に起こされて僕は目覚める

 何が欲しかったの 何を求めていたの

 ムービーヒーローは言った こう薄情にもね

 「凡庸なる者よ 君たちの罪を許そう」


 夕焼け 君の電話を待ちながら僕は自分に訊く

 何を恐れていたの 何に怯えていたの

 ムービーヒーローは言った こう情熱を込めてね

 「僕らの行き先に暗闇を与えないでください」



 詩人はきっと本当のことを言えば言うほど罪深くなる奴でね

 例えや比喩で隠しては 平穏が保たれるようにしているけれど

 その胸の内に潜むものは 「愛と平和」そんな言葉ばかりでね

 そいつにすがりすがられては 今日も媚びた笑いを浮かべてるのさ


 だましだましてばかりで 多分誰かを泣かせたことにも気づかないんだろう

 あざむきあざむいてばかりで 多分死んで無になるまで自嘲しているんだろう

 守り守ってばかりで 多分疑いの目ばかり投げられているんだろう

 だけどね 正直すぎる僕は自分をうらむのにも疲れてしまったんだよ



 みんなと見る約束をしていたあの夜空

 その真っ暗闇の先にはきっと光があって

 誰をもの足元を照らすはずだけど 

 今はそれに気づかないまま 僕らはうなだれて歩くしかないんだ


 みんなと見る約束をしていたあの星の向こう

 その嘘ばかりの場所には 一欠けらの本当もあって

 誰をもの進む道を照らすはずだから

 今はそれにいつか気づけると信じて 僕らは顔をあげるしかないんだ


 だって綺麗じゃないか その方が

 だって美しいじゃないか その方が

 だって強いじゃないか その方が

 だってたくましいじゃないか その方が


 でもそんな僕を 君たちは罵るんだろうね

 「嘘つき」って

 それは知っているんだ 

 そして僅かながらの本当が 今僕の手から離れていこうとしていることも


 そうそれは最初から決められていたこと

 僕の行き先には「天国発 冥府めいふ行き」と書かれた看板が立っている

 眩いほどの光に照らされて


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ