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魔王が勇者じゃおかしいですか?  作者: 引 小森
魔王復活編
9/21

魔王は中2病?

前回の投稿で間違いがあったので訂正しました。


【憤怒の大罪《マモン》】

【強欲の大罪《マモン》】

「ふん!へや!」


「中々やるではないか。顔の良い勇者よ」


「僕の名前は大河だ!」


現在、騎士団長とイケメン(燃えろ)が剣をぶつけ合っている。イケメン(爆ぜろ)

の方はガチでやっているが、騎士団長はまだ少し余裕がある様だ。

訓練が始まって1時間。全員に職業にあった武器を配られた。もちろん、俺の武器は剣だ。

騎士団長との試合は、すでに俺とイケメン(消えろ)以外の奴等は全員倒されてしまった。騎士団長は案の定強かった。イケメン(失せろ)以外の奴等の攻撃をすべて体を(よじ)るだけで交わし、剣を一振りするだけで倒してしまった。だが、イケメン(去ね)はそうもいかなかった。他の奴等を五分で倒してきたのに対し、イケメン(召されろ)だけは30分以上も掛かっている。しかも、先程までとは違い防御もしている。どうやら、あのイケメン(削がれろ)は実力はある様だ。


「おらっ!どうだ!」


さっきから気になったのだが、あの恥ずかしい掛け声は何なんだ?


「くらえ!」


「甘い!」


カァン!という軽快な音がして、イケメン(死ね)の剣が弾かれた。なんだか、スカッとした。


「くそっ!」


悔しがっている。はっ!痛快だな!


「惜しかったぞ。大河よ。」


騎士団長が手を差し伸べ


「次は負けません!」


ガッチリと握手を交わす2人。何かを通じ合っている様だ。騎士団長はあいつと同じ類の人だな。

イケメン(ざまあ)がこちらに帰ってくると周りに人が集まっていく。


「大河さんすごい!」


「只者ではないとは思ってはいたが、まさか、ここまで出来るとはな。」


「いや、それほどでもないよ。負けちゃったし。」


「それでもいい戦いだったぞ。」


「ありがとう。」


他の奴等がイケメン(ぺっ)の事で騒いでいる中、騎士団長がジッと俺の方を見ている。え、なに?俺にその気はないよ。


「それでは、最後はお主の番だな。」


騎士団長の声は先程とは違い、何か意気込んでいる様に思えた。

その声に気付いたのか、騒いでた奴等が急に静かになり、全員の視線が俺に集中する。

俺は黙って立ち上がり、剣を片手に地面に引かれた線の上に立つ。


「準備はいいか?」


「構わない。」


「それでは、行くぞ!」


騎士団長は先程までの試合とは違い、俺の攻撃を受けること無く突撃してきた。


「っ!」


てっきり、先程までと同じ様な感じで試合をすると思っていた俺は、回避のタイミングを逃した。


「ふん!」


騎士団長はそのまま俺を縦に真っ二つにする勢いで剣を振り上げた。


「・・・仕方ねぇ。」


そのまま振り下ろされた剣は、俺を真っ二つに・・にはせず、俺の真横を通り過ぎ、地面を抉った。


「なっ!」


騎士団長は驚きの表情を浮かべた。なぜなら、自分が振り下ろしたはず(・・・・・・・・)の場所から大きく外れていたからだ。


「チェックメイト。」


すでに、俺の剣が騎士団長の喉元に当てられていた。


「参りました。」


こうして、俺の戦いはものの数秒で勝利してしまった。

俺は黙って元いた位置に戻った。冷静を装い、地面に座りながら何もない大地を見ている。他の奴等は視線を集めるだけで近づいてくる気配はない。

ひと段落し、感情の波が押し寄せてきた。

さっきの俺、死ね!

チェックメイトって何?チェスなんてルールも知らないのに何知ったかぶりしてんだバカ!あれ完全に中二病だよな!何に目覚めてるんだよ!恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい・・・


「それでは今日はここまでとする!明日までに個人ごとの練習メニューを考えておく。ビシバシいくので覚悟してくれ。それと、明日は戦闘ステータスについての説明から入るから今日より早いうちにこの場所に集合してくれ。以上だ。お疲れ様。」


騎士団長は一通り言い終えると、そのまま城の中に入っていってしまった。


「「「・・・・・。」」」


しばしの静寂が続いた。これは、先程の試合を見た驚きによる放心なのか、俺の中二病発言に対する気まずさなのか、俺にはわからない。ただ、前者であることを望む。


「行こうか。」


誰かがそう呟くと、全員が流れる様に城の中に戻っていった。俺も悶え苦しみながら後ろをついていく。誰も俺のほうに目を向けないが、そのままこちらを見ないでほしい。あれを見られていたと思うと、恥ずかしさで肝臓あたりの臓器を吹きそうだ。


俺たちが談話室に戻ると、委員長たち魔法組がソファにくつろぎながら、お茶を飲んでいた。部屋に入ってきた俺たちを見て、何か妙な空気が渦巻いていることに気づいている。委員長は全員分のカップにお茶を入れると、ソファに座る様に俺たちに促した。

だが、俺だけは遠慮して部屋に帰った。あの時の状況をここに居る奴等の前で話されて、正気を保てる自信がない。


「・・・・。」


無言で自室に入り、部屋全体に断音魔法『サイレント』を展開する。それにより、この部屋は外からの音は入らず、また、中からの音も漏れないようになった。


「・・・さて」


ガン!ガン!ガン!

ひたすら部屋の柱に頭をぶつけた。


「うわー!うわー!もうやだ!外に出たくない!明日からどんな顔して外歩けばいいんだ!知り合いのいない場所に行きたい!」


先程まで、内側で暴走していた感情が外に溢れ出す。この部屋に縄がなくてよかった。

100回くらい頭を叩いたところで、その勢いのままうつ伏せにベットにダイブした。数十分後、やっと顔が赤くなくなったので仰向けになり、天井を見上げながら今後の予定を考え直した。


「・・・よし、もういいや。今日の夜にここを出よう。」


俺はそう結論付けた。

別に、恥ずかしいくて外歩けないからという理由ではない。ただ、冷静に考えるとこの状況はまずい。遅かれ早かれ、俺はここを出るつもりでいたが、このままではここを出れなくなるかもしれない。俺は無能を装う事で、ここを出た後の追っ手が来ないようにする計画だった。有能な人間を大事にするのはどこの国でも同じだ。これでも俺は、かつて世界征服した魔王だ。俺の力が衰えたとしても、その事実はかわらない。この世界でレベルを上げていけばそのうち、元の力まで戻ると伊耶那岐も言っていた。これ以上目立つ前にここを出る方がいいな。この世界の情報に関しても、その気になれば他の人間から知れば良い。

俺は軽く身支度を済ませると、夕食に呼びにきたメイドに「今日はもう寝るから、誰も中に入らないようにしてほしい」と伝えた。これで、明日の朝食までは時間が稼げる。後は、この部屋の金目になりそうな物を幾つか持っていくだけだ。制服のポケットに空間魔法『アイテムワールド』を使った。この魔法によって生まれた空間には生き物以外であるなら、何でも無限に入れる事ができる。しかも、その空間内にある物の重量は存在しないので、重すぎて持ちきれないという事はないのだ。結構力の使う魔法だったが、難なく成功した。もう大分魔法に慣れてきたようだ。

俺があらかた金品になる物を詰め込んだ後、少しの眠気に襲われた。色々と準備をしていたので、大分時間が経ってしまった。すでに外は真っ暗の真夜中だ。睡魔の誘惑に負けた俺は、1時間くらいベットで仮眠をとることにした。

寝始めてから50分位経った頃。何者かが俺の体を揺らしているのに気付いた。


「へ・・・カ。バ・・ル・・カ」


まだ、意識が覚醒していないためか声が断片的にしか聞こえない。薄っすらと目を開け、俺の体を揺らしている者を見た瞬間。一気に意識が覚醒した。

そこには、


金髪の少女が俺の体にまたがっていた。


「・・・へ?」


まさかのイベント発生?


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