どうやら、勇者の方々は凄いそうです
「まずは、自分のステータスについて確認する所からだな。」
騎士団長を囲うようにして集まった俺たちは、一字一句聞き逃さない様に耳を傾けた。
「そなたらはステータスというのを知っているか。」
俺は知っている。魔王をやっていた時によく耳にした単語だ。しかし、俺はそんな物は一度も見た事がない。というか見れなかったのだ。俺の父親がステータスを見れないように封印したらしい。その気になれば、そんな封印は壊せたが、俺はそのまま放置した。それが父親との唯一の繋がりだったからだ。俺の父親は、俺が4歳の時に人間の勇者に殺されてしまったらしい。別にその性で人間に恨みを持ったとかは無かったが、俺が魔王の息子として証明する為には父親の力の痕跡が必要だっのだ。別に居心地が悪いものでは無かったし、必要ならばと思い放っておいたのだ。他の者にとってはかなり強い封印だったらしく、俺のステータスは魔法で覗こうにも誰もそんな事は出来なかった。だが、今はあの時とは体が違う。いくら意識を体の内部に向けても、封印されている感じはしない。だから、今なら見る事が出来るだろう。
ステータスは弱くなってしまった俺にとって必要な情報の1つだ。見方を知っとくのは重要事項だ。
「まあ、これと言って難しいことではない。ただ、『ステータス』と念じればいい。それだけだ。やってみたまえ。」
案外簡単なやり方に、少しガックリした。まあ、簡単ならそれに越した事はない。早速やって見るか。
呪文を唱えると、俺の眼のまえに半透明の紙らしき物が浮かび上がった
『ステータス』
名前
【織田 真央】
職業
【勇者:LvMAX/99】
【魔族:LvMAX/99】
【神勇者Lv351/1313】
【魔王:Lv224/666 】
【剣士:LvMAX/99】
【剣聖:LvMAX/100】
【剣王:LvMAX/120】
【剣神:Lv1/13】
スキル
【眷属/強欲の大罪《マモン》】
【メタリコ】
【物理攻撃軽減/中】
【火魔法攻撃軽減/中】
【水魔法攻撃軽減/中】
【土魔法攻撃軽減/中】
【風魔法攻撃軽減/中】
【雷魔法攻撃軽減/中】
【光魔法攻撃軽減/小】
【闇魔法攻撃軽減/小】
称号
【ヲタク】【勇者】【元魔王】
【神への挑戦者】【神に恐れらし者】
【剣神】
俺の初めに思った感想。
お・か・し・い・だ・ろ!
なんで職業に魔族があるの?しかも、LvMAXで。俺人間だよ。しかも、なぜ魔王があるの?勇者と魔王が同時に職業にあるのはおかしいですよね。というか、称号のヲタクってなんだ。
「「「・・・・・?」」」
全員が自分のスキルを見て、疑問の表情を浮かべている。俺見たいな事になってそうな人はいなそうだけど。俺のこれは絶対人に見せられないやつだ。
「ふむ、そろそろ説明をしたほうが良いな。
諸君等の目の前には半透明の紙が浮かんでいると思う。その紙に書かれている事が、ステータスと呼ばれる物だ。それは、基本的には他の者は見る事ができない。なので、諸君等のステータスについて私に教えてほしい。1人づつ私が分かる物は説明させてもらう。では、右の頭の良さそうなそなたから時計周りでいこうか。」
騎士団長さん、騙されないで。そいつバカですよ。
「わかったわ。
まず、【勇者Lv1/99】【魔導師Lv1/100】の2つね。後、覚えていただきたいのだけれど、私の名前は伊良角志乃花よ。」
え?2つ?
「なるほど、流石勇者と言うべきか。どうやら、志乃花殿は魔術の才があるようだ。魔導師と言うのは魔術師より上のランクの職業だ。魔術師としての才能が飛び抜けて保有してしている人でも、そのごく一部だけに与えられる職業だ。現在、この世界にそれを保有している者は1人しかいない。それを、生まれながらにして持っているというのは1000年に1人いるかどうか、と言われるくらい貴重だ。もはや、これは俺より宮廷魔術師長の方から学んだ方がよかろう。一応、既に話は王よりつけられているはずだ。」
「あら、騎士団長様ではないのですか?先程、魔法をお使いになっておりましたし。」
「すまないが、俺が魔術系で扱えるのは最高でも中級魔法なのだ。ここの宮廷魔術師長ならば、魔術系の大級魔法を多数扱える。そちらの方が良いだろう。それに、魔術師の事はは私より、宮廷魔術師長が聞いた方が早いしな。」
「なるほど、了解したわ。でもその前に1つ質問よろしいかしら?」
「ああ、遠慮なくどうぞ。」
「騎士団長様が今おっしゃった魔術系というのは、どういう部類のものなのかしら?」
「おっと、これは説明不足であったな。この世界の魔法には大きく分けて、2つ程ある。1つは先程私が放った無から火を起こす魔術系。もう1つが、剣などの武器や自分の体を基盤にして放つ戦闘強化系だ。どれ、わかりやすく見本を見せてやろう。」
マハウスは自分の腰にある剣を抜いた。先程の様子見とは違い、しっかりと剣を構えている。
「まあ、軽く見せるのでよく見てくれ。
『斬撃破』」
マハウスが剣を振るうと、剣からカマイタチの様な透明な刃が飛んでいき、風と共に地面を割った。刃はそのまま進んでいくと力を失っていき、最後には消えていってしまった。
「これが、戦闘強化系の魔法だ。己の磨いた武術に魔法を加える事で、何倍にも力を増幅させるのだ。これなら、近接に思える剣などで、遠距離攻撃が放てるようになる。だが、これは魔術系の魔法とは根本的にやり方が違うのだ。なので、2つに分けられ、別々に学ぶのだ。志乃花殿は、職業的に魔術系にすぐれておるはずだ。わかってもらえたか?」
「ええ、ありがとうございました。それでは、私は宮廷魔術師長からご指導賜ります。宮廷魔術師長はどこにおられるのですか?」
「ああ、それなら心配することはない。メイドが案内してくれるだろう。」
いつの間にか、後方にはメイドが待機していた。
「志乃花様。私目がご案内させて頂きます。」
状況に納得した委員長は皆との別れのあいさつ的な事を言っていた。これが最後ではないのだけど。
「それじゃあ、皆。がんばってね。まあ、もしかしたら私と同じ人がいるかもしれないわ。その時はよろしくね。」
そして、そのまま委員長はメイドに連れられ、どっかにいってしまった。
「それでは、次の者頼む。」
「え、あっ。はい。私ね。えーと、
【勇者Lv1/99】【疾槍Lv1/100】の2つです。後、私の名前は唐木田籐子です。」
「ほう、これもまた珍しい物をもっておるな。」
「え、そうなんですか?」
籐子が嬉しそうに反応をしている。
ヤバイな、ほとんどの奴の名前を忘れているわ。あいつが名前言うまで全然わかんなかった。
「ああ。【疾槍】というのは【槍使い】の上ランクの職業だ。これも、先に説明した魔導師と同じだ。いくら強い槍使いでも、この職業に到達したものは数える程しかない。私の知っている限りでは、現在その職業の者が最後にいたのは30年くらい前だ。」
「え⁉︎そんなレアなやつだったの!ラッキー。」
どうやら、自分の職業を相当気に入ったらしく、ぴょんぴょん跳ねている。イケメンの方を見ながら。
「職業から察するに、そなたは走るのが得意なのだな。」
「嘘⁉︎どうしてわかったんですか。」
一々反応がデカイなこいつ。発情期か?
「そなたの職業はそういう者にしかなれないものだからだ。疾槍というのは槍の使いに長け、さらに速度がズバ抜けて早い者だけが到達できる。」
「なるほど。中学陸上部の時の槍投げと高校陸上部の短距離がこんなところで役に立つとは・・・」
「まあ、そういうことだ。そなたは俺が稽古をつけさせて貰う。少し、そちらで準備体操していてはくれないか?」
その後は、レア職業のラッシュだった。
|お嬢様女(公美)が委員長と同じの【魔導師】。
担当:宮廷魔術師長
サムライ女(涼子)が【剣迅】という、抜刀術に長けた剣士の上ランク職業。
担当:騎士団長
とにかく明るいバカ(黄玉)が【極・魔獣使い】という、魔獣使いの上ランク職業。これは宮廷内に使える者がいないため、騎士団長の知り合いから教えて貰う事になるらしい。
担当:騎士団長の知り合い①
隣にいた奴(姫帝)が【最高位賢者】という【賢者】の上ランクの職業。魔導師と同等の職業で、回復系魔法が多い。
担当:宮廷魔術師長
頼りたくなる男(武志)が【剛斧戦士】という【斧戦士】の上ランク職業。歴史上において、この職業にまでたどり着いたのは1人しかないらしい。なので、騎士団長の知り合いの斧使いに頼むそうだ。
担当:騎士団長の知り合い②
イケメン(爆ぜろ)が【剣聖】という俺と同じ職業だった。剣士の上ランク職業。これも【剛斧戦士】と同じで、これにたどり着いた者は歴史上に1人しかいないらしい。幸い、騎士団長はこの世界でも五本指に入る剣士だったので訓練は大丈夫なそうだ。当のイケメンは、世界一の剣豪にになるとやる気全開となっていた。
そして、ついに俺の番に来てしまった。俺は悩んでいた。ありのままの事を伝えるつもりはないが、下手な事を言えば嘘だとバレてしまう。悩みに悩んだ末に、俺が出した結論は
「俺の職業はそいつと同じで【剣聖】だ。」
一部の事実だけを伝える事にした。
職業が被っていても別におかしくはないので、一番無難な選択をしたつもりだった。
「・・・・。」
お前がこのお方と同じなわけがないだろっ!という目線止めて頂けませんか?女子のみなさん。
そして、イケメンはというと
「そうか!君も僕と同じなのか。共に剣の道を歩もう。でも、僕は君にはまけないよ!僕たちは仲間でありライバルだ!」
唐突のライバル宣言。その恥ずかしいやつに俺を巻き込まないでくれませんかね。
うざいし、あついし、イケメン爆ぜろ。
「・・・ふむ、【剣聖】を2人も育てるなど、腕がなるな。」
まあ、こいつを簡単に騙せたから良しとするか。
最低目標を達した俺は、ここを出る日を少し早めようと計画し直した。
「それでは、最後にそなただ。」
「っ!」
ついに来てしまった。という感じのオーラを出している。
「あ、あの、えと、わた、ぼ、ぼくの、しょ、しょくぎょうは、【魔導師】です。」
おお!よく言えたな。そう思っていると、またもや俺の方に視線を向けて
「っ!」
目が合った瞬間にそらされた。なんか怖くなってきた。
「ふむ、ではそなたも宮廷魔術師長の所だな。」
「うっ!あ、はい。」
男の娘(仮)は、そさくさと逃げるようにメイドに着いて行った。
え、なに?俺なんか悪いことした?
「それでは、私の担当になった者達よ、改めてよろしく。この騎士団長のマハウスが、力の限りを尽くしてそなたらを立派な勇者にしてみせる。」
騎士団長はこの場に残った俺たちを見回し、1人1人と目を合わせていく。
「良い目をしている。」
俺はやる気がないので、死んだ魚の様な目をしていると自分でもわかるのだが。
「それでは早速だが、そなたらの現在の実力を図るために俺と勝負をしてもらう。」
どうやら、初回からめんどくさい訓練になりそうだ。