断りたい勧誘
人口の所を直しました
「単刀直入に言う。我々の勇者になってほしい。」
「「「・・・・。」」」
何を言っているんだこいつは?
みんながそんな感じの表情を浮かべている。それはそうだろう。突然訳のわからない所に連れて来させられ、勇者になってくれないかとか言われたら誰だって彼の頭を疑う。
そんな俺たちの表情を無視してコスおは話を続けた。
「まあ、こんな事を突然言ってもわかるまい。まずはこの国の生誕から話そう。」
わかってるなら初めからやれ!
俺も含めて全員がそう思った。
こいつ話すの下手くそだな。
「まず、我が国は〜」
俺たちの心の声など届かずに話を進めていく。
この国の名はセンドラル王国と言う。
人口は300万人程度。
この世界には後5つほど国がある。
この世界には人間種以外もいる。
その中の二種の獣人と魔族と仲が悪い(というより天敵に近い)。
最近お告げがあり、このままだと人類が滅ぶらしい。
元老と枢密院と国王が議論した結果、俺たちを勇者として呼ぶ事になった。
勇者とはかつて、人類をあらゆる害悪から救った異世界の住人である。
その者達を呼ぶ儀式、「異世界転生」を行い、俺たちを呼び出した。
「異世界転生」は過去に数度行われており、文献が数多くあった為方法を知るのは容易だった。
「異世界転生」の魔法陣がこの神殿にあった為ここに呼び出した。
要点をまとめるとこんな感じの事を言っている。
こんな話を3時間も聞かされ、途中ウトウトしてたから。抜けている部分があるが、もうどうでもいい。だって話が長すぎて、イライラしていて頭が破裂しそうだからだ。
早く終らせろ!というかもっと話をまとめろ!もう集中切れたわ!
「まあ、つまり〜」
まだこいつは話すのか!
そしたら、流石に話が長すぎると悟ったのか1人の初老の男がコスおの所に行き、何かコショコショ話している。途中途中で、コスおが嫌そうな顔をしていた。
初老の男との話が終わると今度はめんどくさそうに話始めた。
「まあ、これで最後だが」
あ、これ絶対文句言われたな。
十中八九拗ねてるよ。いい歳して。
「我々と共に人類を救ってくれたあかつきには何でも三つ願いを叶えよう。」
コスおが最後の最後(たぶん)にとんでもない爆弾を落として来た。
「「「・・・。」」」
みんな顔がポカンとしている。
それはそうだ。やっと長い話が終わると思ったらとんでもない爆弾を投げつけられてきたのだ。誰だって処理落ちする。
「ほら!言ったではないか!突然こんな事を言ったらこんな風になると!」
なんかコスおが初老の男を叱咤しているようだが、話が下手なお前が悪い。
「やはり最初から説明して・・・」
そんな危ない事をコスおが言った。その言葉に俺は背中から冷や汗を出し、恐怖を覚えた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ国王!」
今度はコスおの言葉にかぶせる様にして、1人の男が叫んだ。
ブレ高1だ。ちっ。
「つまり、人類が滅ぶかもしれないから僕たちの力が借りたい。その報酬として願いを3つ叶える。そういう事か?」
「あ、ああ。すごくまとめるとそんな感じだ。」
おお、よくやったイケメン。あの長い話を止めてくれるとは。評価を改めなくちゃな。・・・ちっ。
コスおは何か物足りなそうな顔をしてるけどこの際無視だ。知らん。
「では、話はこれで以上だ。
改めて言う。我々の勇者になってはくれないか?」
嫌だよ。
頭に浮かんだ単語はそれだけだった。
こんな無理やり連れてこられてなんで命懸けなきゃいけないんだよ。
それに、手出すけはできても勇者になるのは立場上無理だ。
まあ、こんだけ人数がいるんだ。一人くらい文句言う奴いるだろ。
「わかった!引き受けよう!」
何でだよ!
ブレ高1がまた奇行に走っている。この状況でどうやればそんな答えが出るんだよ。やっぱりイケメンは苦手だ。
ちっ、ぺっぺっ。
「困ってる人がいるんだ!見捨てるわけにはいかない!」
きもちわるっ!
何言ってんのこいつ。馬鹿じゃないの。
そんな恥ずかしいセリフをよくいけしゃあしゃあと言えるな。見てるこっちが恥ずかしい。
しかもこいつ、退路を断ちやがった。
もしこの状況下で嫌だなんて言う奴がいたら悪者扱いされかねない。困っている人を助けないのは悪とされるのだ。どんな理由があろうと。こんな形で退路を断つなんて卑劣な!やはりイケメンは嫌いだ。かー、ぺっ!
「ちょっと、いいかしら。」
唐突に放たれた言葉に周りの視線がその者に集中する。
声を上げた主は声から分かっていたが女子だった。
髪は長髪でメガネをかけている。THE委員長みたいな奴だ。
おお、こいつならこの状況を冷静に判断して、断りやすい雰囲気を作ってくれそうだ。
「私たちが戦うのはわかったわ。でも私達は一介の学生にすぎないわ。どうやって戦えと言うのかしら。」
前言撤回。
こいつ、やる気まんまんだ。
一見冷静になって反抗している様に見えるが違う。こいつは戦う力さえあれば命を懸けて戦うと言っているのだ。つまり、正義感が強くでた委員長だったのだ。
うわーん。
なぜだ!あんたなら何かめんどくさいのに理屈は通ってる事言ってくれる奴だと信じてたのに。
「それに関しては後ほど騎士団長より説明を行う。大丈夫だ。そなた達にはちゃんとした強い能力が付与されている。」
「なるほど。わかったわ。なら手を貸しましょう。」
何でだー!
今のコスおの言葉のどこに戦う意思を固める言葉があったんだよ!
この流れはまずい。余計断りにくい状況が出来てきている。
他の女子を見てみると、不満はあるが断りにくい、どうしよう。という顔をしている。無理もない。同情の目を向けていると、ブレ高1が今度は俺たち(手を貸すとは言ってない奴ら)の方向を見てしゃべりだした。
「ここにいるみんな!僕達は選ばれて此処に呼ばれたんだ!人類を救えるのは僕達しかいないんだ!一緒にここにいる人達を救おうよ!」
突然、勇者の勧誘をしてきやがった。
何だてめぇは?コスお達の回し者か?
ちっ、ちっ、ぺっ。
しかし、俺の思っている以上にブレ高1の勧誘の効果は絶大だった。
彼の顔をマジマジと見た女子達の目が変わった。全員、ぽ〜としている。うわっ!
「「「はい!私も人類の為に戦います!」」」
全員が同時に同じことを言った。
女子達がやられた!
もう、正常な判断ができていない。女子達の目にはあのイケメンしか映っていない。彼のいう事に逆らいたくない。人類を救う手助けをすれば彼と一緒にいられる。もう、そんな考えが顔にまで出ていた。
くそっ。残ったのは男子だけか。何とか冷静な・・・やつは希望的にあと1人しかいない。
だって残った2人男子のうち片方の奴が肩を回してブレ高1の所に歩きだしてんだもん。
「俺も協力するぜ。」
こんな声が聞こえたんだもん。もう無理だよ。8:2とか卑怯だよ。
「・・・・俺も手を貸すよ。」
そこで俺も諦めた。すまないなもう1人の男子よ。
この流れで俺だけやらないのはまずい。カッコいいやつなら此処で、俺はそんな者に興味はない。俺は1人でやらしてもらう。とか言えるのだろうが、実際は無理だ。
なぜなら、本当にこの世界が異世界ならそんな何も知らないで外に飛び出すのは愚行にきするからだ。生きるために必要な事、衣食住。そして情報だ。それの全てがゼロの今、1人で何も知らずにどこかに行くのは馬鹿のする事だ。社会はそんなに甘くないんだよ。
別にあの状況で反抗する勇気が無かったとかそんなんじゃないんだからねっ。