第五話 目指すは妖還師
更新が非常に遅くなりまして、まことに申し訳ありませんでした。
ちゃんとため込んでた分は放出するつもりなのでご安心を!
その翌日、サーラはある決意を秘めてアランと対峙していた。
「…………妖還師になりたい、だって?」
驚きと困惑をまぜっかえしたような声音が、サーラの耳朶を震わせる。
今日は戸惑った顔が見られた、などという奇妙な満足感を覚えながら、サーラは頷いた。
「そうよ。私、自分で出来ることは何が何でもやりたくなる性格なの。せっかく妖精の姿が見えるのに妖還師になろうとしないなんて、私からしてみればそっちの方が異常だわ」
怒ったように宣言するサーラに、アランはあまり表情を動かさずに苦笑した。しかしサーラにはすぐに苦笑と分かる。何しろ眺めまわすようにいつも見つめているのだ。見分け方もお手の物だ。
「僕が指南することになるけど、いいのか?」
「いいに決まってるじゃない」
言って、サーラは口元をほころばせた。
一般的に、妖還師になるには二つの方法がある。王立学校の“妖精科”に入学して王国の国家試験を受ける方法と、すでにフェアロードになっている人に教えを乞い、一人前だというお墨付きを国に示してもらう方法だ。
しかしこの二つには大きな違いがある。王立学校に入学すれば、早い者は半年後には国家試験を受けられるが、フェアロードに教えを乞うている場合、いつフェアロードになれるかは教えている側さえ分からないのである。突然『もうこの者に教える必要はない』と感じる日が来るらしいが、それが一か月後なのか、はたまた十年後なのかは全く予想がつかない。ゆえに、フェアロードになるためにフェアロードのところへと向かう者達は少なく、王立学校で切磋琢磨し、国家試験を受ける人たちがほとんどなのだ。
しかしフェアロードに教えてもらった場合は、フェアロードになった時にはすでにずば抜けた能力を宿しているものなので、それを狙ってフェアロードに弟子入りする者達もちらほらといる。しかしそれも年に数人だ。
それでもサーラは後者を選んだ。
それは別に深い理由があったわけでも何でもない。単純に、彼女からしてみれば既に目の前にフェアロードがいるというのに、王立学校に入学して試験を受けるなんてまどろっこしいことはしたくなかっただけである。
「……僕は人に教えたことがないしどれくらい時間がかかるのかもわからないけど、それでも良ければ。……それでいい?」
戸惑いながらもちゃんと考えてくれたことに喜びつつ、サーラは大きく首を縦に振った。
「もちろん」
「じゃあとりあえず明日から始めよう。どれだけ時間がかかっても恨まないでくれたらそれでいいよ」
「恨むわけないじゃない」
どうせ、すぐ終わってしまうんだから。
そう口の中だけで呟き、サーラはにっこりと笑った。