1 インフレは「現預金の目減り」
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は投資をしないとどうなるのか? について個人的な意見を述べていこうと思います。
証券会社の回し者か? と思われるのも嫌なので、今後の株が上がる要因と同時に下がる要因についても提示しますのでそれで投資するかどうかを総合的に判断していただければと思います。
お品書きとして
1 インフレは「現預金の目減り」を意味する
2 株価が上がる要因
3 株価が下がる要因
4 どの商品にどう投資したらいいのか?
5 出口戦略はどうしたらいいのか?/総括
の全5回でお送りします。 ※当初から1回増えました
質問者:
素朴な疑問を持ったんですけど、基本的にここでいう「投資」というのは「新NISAの活用」ですよね?
筆者:
そうですね。
質問者:
筆者さんは政府の推進する政策に対して大概反対なのに、どうして政府の言うことを聞くのですか?
筆者:
確かに本的には政府の言うことに対して反発しているのが僕のスタンスとしてはあります。
一方で、是々非々に検討した上で別の結論に至ることもあります。それが本稿だということです。
また、皆さんは新NISAができた前提条件が「国民を豊かにするため」と”誤解”していると少し見誤るのかなと思います。
質問者:
え? そうじゃないんですか?
筆者:
基本的に投資は長期的に毎月積み立てを行い、”放置”するのが定跡です。
そして老後に引き出すのを主な目的にしているはずです。
つまり、この構図は「年金」とも言えるわけです。
「老後2000万円問題」という言葉がある通り、老後に年金以外の資金が必要なのは明らかなわけです。
ですから、
「年金はこれ以上上げられんから、お前たちで用意しろよ」
という事実上の「年金制度破綻」を政府は宣言しているのです。
つまり逆を行ってしまえば、
「新NISAを活用しなければ老後もままならない」
ことも意味するのです。
質問者:
預金の利息だけではどうにかならないのでしょうか……。
どうにも元本割れが怖いんですけど……。
◇「累積インフレ」の恐ろしさ
筆者:
その気持ちはとてもよく分かります。
しかし、現在物価は年2%を超え、3%前後です。世間の「体感物価指数」では年10%を超えていると思われる方も多くおられるほどです。
この差が発生しているのは、「商品の性質を変える」ことで同じような製品であっても、「値上げしたことにならない」ことがあります(物を減らして値段そのままの”ステルス値上げ”は統計上はカウントされていることになっています)。
そのために、感覚ではそれ以上でもデータでは2~3%しか上がっていることになるのです。
質問者:
企業としても「値上がり企業」とされたくないですからね……。
でも仮に年2%の物価上昇なら大したことが無いのではありませんか?
筆者:
「たかが2%」と思っていてはいけません。
2%の物価上昇は実を言いますと「現預金の目減り」を意味します。
100万円が利率0%の状態で10年預けると年2%目減りすれば10年後には現在の約82万円、20年後には現在の約67万円になるのと同じになります。
実際のところ今後は預金利率は上がっていくことが想定されますが、
実質体感物価はもっと上であることが想定されますので「年5%マイナス」ぐらいが妥当かなと思います。
100万円が年5%目減りすれば10年後には現在の約61万円、20年後には現在の約37万円になるのと同じになるまで減るのです。
つまり投資というのは「儲けたいから」ではなく「減らさないため」に行うものなのです。
質問者:
それだけ強烈に減っていくのであれば手をこまねいているのは問題かもしれませんね……。
◇「インフレ」は政府や企業から「要請」がある
質問者:
でも、政府は物価高対策をしてくれるみたいですし、
今後は物価はあまり上がらないことやデフレになることって考えられないんですか?
筆者:
その可能性もゼロではないですが、限りなくゼロに近いレベルであると考えます。
まず、政府は「インフレにしたい」と思っているんです。
インフレになると預金を持っている人から見ると日々目減りしているわけですが、
同時に借金をしている側からすると「自動的に借金が目減り」していることも意味します。
今現在、日本で最も借金をしているのは「日本政府」そのものです(日銀が買っている国債は返さなくてもいい気が個人的にはしますが、広くはそう考えられていません)。
実際のところ日本の財政状況は改善しており、24年度は税収で支出を賄う「PB黒字化」が目前に迫るところまできました。
質問者:
国民が困窮しているのに政府が黒字寸前ってどうかしてますね……。
筆者:
そして次には大企業が借金をしています。
このお金を持っていてなおかつ借金をしている勢力が
「借金が自然減してくれるインフレ」に対して要請や誘導するのはむしろ「自然」ともいえるわけです。
質問者:
ただ、首相が高市さんになったことから所得税の控除の引き上げは期待できるのではないですか?
筆者:
それだけでは足りないと考えます。
日本は「富裕層」に対して課税しようとする風潮があります。
これを聞くと「当然だろ」と思われるかもしれませんが、「日本の富裕層」というのは「年収1000万円世帯」のことを言います。
年収1000万円世帯だと子供2人もいればもう首が回らないほどカツカツになってしまうほどで、僕は少なくとも富裕層とは思えません。
これが年収1億円以上ならまだ話は分かりますけど、年収が高い方々ほど”資産防衛”のための手段を色々と講じています。そのために中々徴税の網に引っかからないんです。
質問者:
なるほど……そうなると政府はどうすればいいんでしょうか?
筆者:
所得税の壁だけでなく、社会保険料や高額療養費制度や相続税など様々な控除や基準も物価高に合わせて引き上げていかなくては生活は厳しいままだということです。
◇消費減税でも物価は下がらない
質問者:
確かに多くの人が関係するものは所得税だけではありませんからね……。
物価高対策としての財政出動では効果が無いのでしょうか?
例えば消費減税やガソリン税減税などです。
筆者:
特に消費税において皆さん勘違いされていることが多いのですが、
「消費税が下がったからと言って価格がその分下がるわけではない」
ということです。
消費税は文字からしてあたかも消費者が負担しているかのような「錯覚」をさせられていますが、条文を読んでみると実際のところは「第二法人税」としての性質があります。
更には価格決定権は企業側にあるために消費税を減税しても「利益を増やすために価格を下げない」ということは容易に起こりうるのです。
実際のところ欧州での食品消費減税を実施した際に減税分の3割しか価格が下がらなかったというデータもあります。
質問者:
そういうお話以前にもありましたよね。
筆者:
消費税の「本当の悪質性」は給料が消費税控除(減額)にならないために、
「存在そのものが賃下げを推進」しているということなのです。
「実は消費税を廃止すると一番恩恵を受けるのは消費者ではなく、中小企業である」
「消費者が恩恵があるかもしれないのは、価格が下がることよりも賃上げである」
この点を本当に勘違いしないでいただきたいです。
質問者:
その他の減税や給付金についてはどうなのでしょうか?
筆者:
生産力の向上を伴わない減税を行うことは一般の方の購買力が上昇することから、むしろインフレ要因になります。
僕は特に低所得者に対してはインフレを上回る減税になるためにプラス効果を期待しているので、価格が下がるという可能性は低いと考えています。
質問者:
そうなると政府が財政出動や減税をしても物価高は変わらないということなんですか……。
筆者:
日本においては30年デフレが続いたために「物価が上がることが異常」であるかのようにどこか捉えられていますが、
長期的に見た場合インフレというのはこれから先、「当たり前」になる可能性の方が高いと思っています。
また、企業としては「値上がりが当たり前」と思ってくれた方が利益が出せますし、
労働分配率は24年度は51年ぶりの低水準となっており、「便乗値上げ」も多くしていると思われます。
上場企業はグローバル展開している企業も多く、日本国内に還元・投資・賃上げしている場合でもないのかもしれませんけどね。
質問者:
その上で物価が上がれば収入が低い人ほど厳しくなりますよね……。
筆者:
厚生労働省がまとめた24年の国民生活基礎調査によりますと、
「生活が苦しい」と感じる人は58.9%、そのうち児童のいる世帯が64.3%、高齢者世帯は55.8%と、現役世帯の方が苦しいのです。
高齢世帯も年金以外の収入(主に株式や不動産)を持つ方にとってはドンドン上がっているためにむしろ「余裕がある」まであるのでしょう。
※一方で高齢世帯の3%前後は年金の収入が無い「無年金」、
貯蓄が500万円未満の世帯は21.7%であるそうなので、大きく二極化していると言えます。
質問者:
そうなると何か副次的な収益を得なければいけないということですか……。
筆者:
ある程度のリスクは伴いますけどね。
次にポジティブな「上がる要素」について見ていこうと思います。
このエッセイで記述している以外の内容で投資に関する疑問点などがありましたらどうぞお寄せください。
※投資は自己責任です。時にマイナスになることはあります。しかし、後述する通り20年単位で見ればこれまでの経験則で行けば必ずプラスになります。




