問17 借りてきた猫の気持ち
想像力強化訓練の方でお話したとおり、
今回のお題は【借りてきた猫の気持ち】です。
そして、しいなここみ様の『してはいけない』企画に
無理やり乗ってみました。
ごめんなさい、乗ってみたかったんです。
オレはいま、飼い主に連れられて飼い主の友人が住むマンションの前にいる。
まさか今の時代に"貸し出される"とは思わなかったな。
すごく昔、ネズミ捕りのために他所の家から猫を借りるって文化があったって聞いたが、現代で、しかも都会のマンションにネズミなんてまずいない。
オレに求められているのは……
この部屋で普通に過ごすこと。
仲間たちから聞くのは『飼い主が旅行に行くから預かってもらう』ってパターンだが、今回はそうじゃない。
というのも、今日から1週間世話になるこの家の家主が「猫と一緒に生活してみたい」と飼い主にゴネたらしい。
飼い主もオレも変だと思ったさ。
お前が泊まりに来ればいいんじゃね?って。
そいつ曰く「私が借りてきた猫みたいになっちゃうから」だってさ。
その気持ちは分からなくもないし、オレもそれほど神経質な方じゃないから引き受けることにした。
まぁオレの気持ちなんて伝わらないけどな。
飼い主は用事があるらしく、マンションのロビーでオレが入ったカゴを友人に渡してすぐ帰っていった。
1週間だけど、少しは別れを惜しんでもいいと思うんだが?
エレベーターで9階まで上がり、すぐ近くのドアを開けて玄関を抜け、部屋に入れてくれた。
「置いてあるものは好きに使ってね。なんなら女の子連れ込んでも良いからね」
9階のベランダまでよじ登って連れ込むわけないだろう。
オートロックもエレベーターもボタンが押せねえよ……って、なんだこれ。
リビングの四隅に設置されたキャットタワー。
壁に張り巡らされたキャットウォーク。
床に長く置かれた布製トンネル。
この家主、仮の借り猫にどんだけ本気出してんだ!?
ダメだ身体が疼く。
でも、今はまだ大人しくしなければならない。
オレは"借りてきた猫"だからな。
〜〜〜
ようやく家主が眠ってくれた。
めちゃくちゃ撫でられて嗅がれて、終わりのない地獄のような時間が終わってくれた。
さて……ここに来てずっと気になっていたことがある。
隣の部屋から漂ってくる、今までに嗅いだことのない匂い。
引き戸が閉まっていて中は見れなかったが、家主が眠ったなら行動に移そう。
軽い引き戸なら猫でも開けられることをここの家主は知らないらしいしな。
戸の隙間に前足を差し込んで頭も突っ込みながら開ける。
戸が開いて身体が部屋に滑り込むと同時に、それまで弱く感じていた匂いが強く押し寄せてきた。
これは、植物の匂いか?
匂いの元は床に敷き詰められたもののようだ。
軽く足で触ってみると……すごく良い感触!
なにこれ!なにこれ!
もう!もうガマン出来ないにゃーーー!
〜〜〜
気が付くと部屋の照明がついていて、家主が仁王立ちでこっちを見ている。
オレの目の前、目下には、植物の茎を編みこんだ床がボロボロになっていた。
うん。オレが爪でバリバリやった。
だって気持ちよかったんだもん。
……!これは、怒りの波動か。
かなり強いものが家主から吹き出している。
オレは本能で感じ取りすぐさま行動する。
くらえ!奥義:猫かぶり!
猫なで声を出しながら、仁王立ちする家主のスネに頭を擦り付ける。
この奥義をくらって立っていたものは誰もいな……なんで首根っこ掴むんですか?
カゴに入れられてしまった。
あの部屋は、〇〇しちゃいけない部屋だったのか。
次回のお題、まだ考えてないです。
あとで追記します。