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反対側のホーム

作者: 執行 太樹

毎日に追われる、大学生の私。

毎朝、通学で満員電車に乗り込んでいる時、いつも反対側のホームに入ってくる電車を見かける。

私は、いつもその電車が気になっていた・・・・・・。




 電車の窓には、うっすらと自分の顔が映し出されていた。乗降口に押し込められた私は、間近に見えるそれを、ぼんやりと眺めていた。


 平日の朝の電車は、相変わらず混んでいる。ましてや4月初めとなると、出勤する人や学校へ登校する人など様々であった。大学4回生になったばかりの私は、毎朝人が溢れかえりそうな電車に自分の体を押し込み、登校していた。


 大学生活は、忙しかった。授業や課題、アルバイト、それに今年から就職活動が始まった。そのせいで、毎日が目まぐるしく過ぎていった。いつも何かに追われていた。そんな日々を、私はただただ、ひたすらに過ごしていた。


 人混みに身を任せながら、車窓から外を見ていると、反対側のホームに電車が入ってきた。反対側のホームは下り方向のため、その電車の乗客はまばらだった。登校時にいつも見かける電車だった。


 あの電車に乗ったら、どこに行けるのかな・・・・・・。その電車を見るたびに、いつも私はそんな事を考えていた。眼の前に見える電車。でも、どこか遠い存在に感じていた。いつものように、私はその電車をぼーっと眺めていた。




「それで奈緒は、何がしたいの?」




 ふと、高校生の頃に友達から言われた言葉を思い出した。


 今振り返ると、私の人生は何かしたいこともなく、周りの人々に流されながら過ごしてきた。


 したいことがないから、とりあえず大学へ進学した。したいことがないから、とりあえず大学へ通った。そして今、したいことがないから、とりあえず就職活動している。


 毎日を、ただ何も考えずに過ごしてきた。今までは、それで良かった。しかし、そのしわ寄せは、確実に私の身に迫ってきていた。私は、したいことを見つけようとしないまま毎日に追われ、今日も満員電車に乗り込んでいる。


 私の人生は、このままただ過ぎていってしまうのか。私は、本当にこのままで良いのか。いつしか、そんな事を考える時間が増えていった。今も、電車から見える外の景色を眺めながら、声にならない思いを抱いている。




 私は、何がしたいの・・・?




 そう自分に問いかけた。次の瞬間、何かの力が私を動かした。


 私は乗っている電車の乗降口へ足を向けた。すみません、降ります。電車の乗客をかき分け、そして満員電車から外へ出た。気がつくと、私は反対側のホームへ向かって駆け出していた。


 自分でも何をしているのか、不思議に思った。ただ、はっきりと分かったことがあった。




 私は、ワクワクすることがしたい!




 反対側のホームへ続く階段を勢いよく駆け上がりながら、私は自分にそうつぶやいた。私の人生は、私が切り開く。心から、そう強く思った。階段を駆け上がっている間、私の心は軽やかに踊っていた。


 




お読みくださり、ありがとうございます。


ご感想等ありましたら、よろしくお願い致します。

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