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 ニーデズの戸惑いもハルベルト長兄には関係ない。初めから決まっていたかのように話をする。


「ニーデズはフユルーシの側近になった。君の両親や兄殿と契約も交わして寮は今週中に引き払う手筈になっている。寮費も食費もいらなくなったと伝えてある。

まだ学生だから多少だが、側近手当があるぞ」


 ニーデズは頭をフル回転させたようだ。パっと立ち上がり深々と頭を下げた。


「いろいろとお手配いただきありがとうございます。フユルーシ様を手助けできるよう頑張ります」


「うん。そうしてくれ。三学年に上がる時はAクラスになるように」


「かしこまりました」


 簡単にAクラスを請け負えるニーデズは凄いなと思った。

 俺のように幼い頃から優秀な家庭教師がついていたわけではない。ニーデズ本人の努力だけで結果を出しているのだ。


 ニーデズはハルベルト長兄に下げていた頭を上げた。


「忙しいと思うが水曜日の放課後に執事を行かせるから荷物を纏めておくように」


「纏めなければならないほどの荷物はありませんので三十分もあれば大丈夫です」


「そうなのか? なら今日にでもこちらへ移りなさい」


「ありがとうございます!」


 ニーデズはもう一度深々と頭を下げた。


「ニーデズ。早く朝飯食べな」


 俺はニーデズを促した。ニーデズは素直に頷き席につく。


「ハル兄さん、本当にナツ姉様も来るの?」


「お前の名前を出せば絶対に来るのはわかっているだろう?」


「…………呼ぶのはハル兄さんなのに俺の名前を出すのかよ……」


 ニーデズが口を一生懸命に動かしながらもこちらの話を聞いている。


「姉様は……その……」


 俺は説明に戸惑った。なにせ恥ずかしい。


「ナツシェリア様はフユルーシ様を大変可愛がっていらっしゃいますの」


「そうなのですね。僕は男兄弟ばかりなので羨ましいです」


「よくない……」


 俺は思わず渋顔になる。


「プッ! ナツは本当に猫可愛がりするからフユに嫌われているんだ」


「嫌ってないよ。ただ、俺はもう十六歳になるのにって思っているだけだ」


「フッ! フフフフ」


 ニーデズに笑われて俺は尚更恥ずかしくなった。


 ニーデズが食べ終わったのを見て俺たちは立ち上がる。


「じゃあ、いってきます」


 挨拶をして食堂を出た。

 扉の前にはメッセスがいた。


「ハル兄に報告したのはメッセスだろう?」


 恨みがましい目で見る。本当はいろいろと改善してからハルベルト長兄たちを呼びたかったところだ。


「いえ。私は大旦那様からのお手紙をハルベルト様にお渡ししただけです」


 ハルベルト長兄は父上が俺たちと出かけると聞いた時から不機嫌だった。自分も行きたいのにというのを思いっきり出していた。だが、俺としてはまずは父上の意見を聞いて改善したかったので、二人は違うタイミングで来てほしかったため、ハルベルト長兄の来たいアピールは無視していた。


 それを煽るように楽しげな手紙が父上から届いたのだろう。父上は本当に性格が悪い。本人はお茶目のつもりなのでかなり重症な悪さだ。


「ちっ! 父上めっ!」


 俺の愚痴にメッセスが少し吹き出す。


「テレストのところに行って左利き用をもってきておいて」


「かしこまりました。私はそれを持って明日先にあちらへ出立いたします」


「え? そうなの?」


「はい。ヘイブリの宿状況も調査したいですし」


 確かに俺たちが一緒だとメッセスは街の調査には行けない。


「これからは学園への通学にはニーデズが付き添います」


 これまでは護衛とは別にメッセスかウルトが同行していた。


「メッセスは知っていたんだね」


 俺の嫌味を込めた視線をメッセスはスルーした。そんなところにスルースキル使うなっ!

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