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 メッセスが、アッと小さく呟く。


「その者たち用に一戸建てを手配し、寮母とコックを付けてはどうでしょう? 孤児院のような形です」


「メッセス! それいいじゃん!

なら、小さい宿をそのまま人材とともに買おう。宿屋の親父と女将なら、寮の管理人にぴったりの仕事だよね」


「それは相応しいお仕事ですね。

サポーター用とメイド用もそれでいいんじゃないですか?

孤児たちと同じ寮だとフユルーシ様の仰るように入り口にも気を使いますが、ランクの違う宿ならそれらの問題も解決しますね」


 ニーデズがピースを作る。


『あー、それは前世っぽいなぁ』


 俺はなんとなくニヤついた。


 最近、メッセスにはスルー機能が備わった。前はイチイチ『それは何ですか?』と聞いてきたが『学園で時々使われる』と言い張っていたら、メッセスの知らないワードや行動は学園の流行りという結論をメッセスが出したようだ。


 こうして、ニーデズのピースサインはメッセスにスルーされた。


「じゃあ、とりあえず三軒」


「わかりました。それぞれに見合いそうな宿を探しておきます」


 タァサスガルフセンターから歩いて十五分の場所にはヘイブリという街があり、宿も十軒ほどある。アキオード兄夫婦が住まう屋敷は小高い丘の上にあり、タァサスガルフセンターまで歩いて十分、ヘイブリまでは歩いて十五分。高位貴族はその距離でさえも歩かないけどね。食材運びの商人などは荷車を引いてくるらしい。

 ちなみに、ヘイブリには孤児院はなく、ヘイブリで孤児になると領都ガーシンの孤児院へ入れられる。〜閑話休題〜


 父上たちを招待する前に話し合っておいた内容も、やってみると変わることが多々ある。


 翌朝、朝食の席にはハルベルト長兄とスプリナ義姉上も同席した。


「フユ。週末の視察の報告は?」


「は? はい??」


 ハルベルト長兄の言葉の意味がわからず前のめりに聞き返す。


「父上母上と改装した球場へ行ったのだろう?」


「俺たちの遊びに付き合ってもらっただけですよ」


「ならなぜ、父上も母上も帰ってこないのだ?」


「それは、そのぉ、オータミィ義姉上と母上が久々に会って楽しんでいたから? ですかね?」


 父上とアキオード次兄がガルフが楽しそうで、父上が気に入ったようだとは言える雰囲気ではない。


「あら? それなら、わたくしもナツシェリア様と一緒に行きたいわ」


「はへ??」


 スプリル義姉上からのツッコミに俺は目をしばたかせる。

 ナツシェリアは俺の姉、我が公爵家の第二子にして長女。マッセイ公爵家の跡継ぎサマケッド殿に嫁いでいる。


「それはいい。久々にサマケッドと飲み明かすのも楽しそうだ」


「サマケッド義兄上もですか?」


「サマケッドはナツを離さないだろう?」


 俺の兄弟たちは夫婦仲が良すぎなのだ。


「アキ兄さんに聞いてみないとなんとも」


 ガルフセンターの管理は俺に任されているが、宿泊はアキオード次兄の屋敷となる。


「アキが嫌がるわけないだろう。一応、昨日早馬を出しておいた」


「きっ! きのう???」


 俺もびっくりしたが、ニーデズも口を開けている。


「俺たち、昨日帰ってきたばっかりなんですけど」


「わかっている。土日だけ往復するのは大変だろう。フユもニーデズも木曜から学園の休みを取ってきなさい」


 ハルベルト長兄は決定事項のように告げた。


「それってつまり、木曜日には俺たちもタァサスの屋敷へ行くということですか?」


「そうだ。

ニーデズ。ついでだから、君の荷物はすべて水曜の夕方に持ってこれるように纏めておきなさい」


「……あの……」


 意味がわからず首を傾げるニーデズ。

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