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 ウルトの痛くない発言に俺は呆れた声を出した。


「腕に当たっても足に当たっても痛いって」


「ですが、ボールが足りなくなりませんか?」


 メッセスが何やらメモしている。時計を見ているから十球の時間でも確認していたのかもしれない。


「ならボールを増やせばいいだろう?」


「急に増やすことは難しいです」


「時間を決めてお客様にお休みいただきその間にボールをできるだけ回収してはどうですか?」


「ニーデズ! ナイスっ! それいいね」


「それでしたらお茶のタイミングも同じになるのでキッチンも悩まないですね」


「メッセス。給仕のメイドはどうする?」


「それならば……」


 俺たちの現場会議は白熱していく。


〰️ 〰️ 〰️


 そしてある程度サービス内容を決めたところで父上と母上とアキオード次兄夫婦を招待した。


 キレイに整えられた球場に父上の眉が下がる。父上にとっても思い出の球場なのだろう。


 メイドに案内された四人は夫婦に分かれてウッドチェアセットに腰掛ける。


 俺は四人から見えるところに立った。


「本日はタァサスガルフセンターにご来場いただきましてありがとうございます。

まずは遊び方をご説明いたします」


 ニーデズが頭を下げて前に出た。ニーデズの脇にはドライバーワゴンが置かれている。


「こちらにございます道具はボールを飛ばすための物でドライバーと申します。

まずは見ていただいた方がわかりやすいと思います。

フユルーシ様。お願いします」


 ドライバーを一本抜いて、長い方のティーをニーデズに渡す。ニーデズがティーエリアの芝生にティーを刺してボールを置く。


「おいおい。そんな細い棒みたいなもので飛ぶわけがないだろう!」


「まあまあ、父上。ちょっと見ててよ」


「フユ。あそこにいるのはウルトか? あんなところで何をしているんだい?」


「アキ兄さん。ウルトはボールの捕捉のためにいるんだよ」


 どう見てもクリケットのホームランの距離よりも遠くにいるウルト。父上とアキオード次兄は眉を寄せた。母上と義姉上はキョトンとしている。


「では、実演技させていただきます」


 頭を下げてスタンスを取り直す。


『スッパーン!!』


「「「ナイショーッ!!!」」」


 いつもの声がかかる。

 チェア席を見れば、父上とアキオード次兄は立ち上がり口を開け、母上と義姉上はキラキラとした瞳でボールの行方を見ていた。


「なっ! なっ!」


 父上が言葉にならない言葉を漏らす。


 ウルトが百メートル辺りにフラッグを立てた。


 さてもう一球。ニーデズが用意してくれて俺はスタンスを取る。


『カッツーン!!』


 俺は態とボールの上の方を打ち、ボールは転がっていき飛距離はでない。芝は長めなのでオールラフみたいな状態であるので転がりも少しである。


「「「「オッケー!!」」」」


 このヨイショ掛け声も決めてあるものだ。微妙な打球はヨイショ掛け声はバラバラでも構わない。とにかく『貴方を応援して見ていますよぉ』アピールがお客には大切。


「いやぁ~~、失敗失敗。全部を上手く当てるなんて無理だねぇ。わっはっは!」


 二球目にはフラッグは立たない。『失敗もあるよぉ』とアピールしておく。


「このようにしてですね……」


 ニーデズが説明している途中なのに父上はドライバーを一本手にした。メッセスが父上に駆け寄る。


「こちらはティーといいまして、長い物と短い物がございます」


「どう違うのだ」


「長い方が遠くに飛びやすく、短い方が当てやすいです」


「フユは?」


「俺は長い方だね」


「では、ワシもそれにする」


 メッセスがポケットから長いティーを取り出してボールをセットする。俺は目配せでニーデズに指示してアキオード次兄の世話をしに行かせる。


「父上もアキ兄さんも、ドライバーが周りの人に当たらないかを確認してから振ってくださいね」


 初めてなので持ち方だけ教えて自由に打ってもらう。

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