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 ワードを分解すれば理解できる言葉だから大丈夫だろう。


「新しい物を開発するための費用を俺が負担する。そうすれば、開発したのがテレストであっても俺にもその品物への権利がありそうだろう?」


「はい? フユルーシ様とニーデズ様が発想したものですから元々権利はありますよ」


 そんなことはわかっているんだよ。それより……


「と、とにかくっ! テレストが試行錯誤をしているうちは商品がなくともお金を払ってよねっ!」


「あっ! なるほど! かしこまりました。フユルーシ様はお優しいのですね。ふふふ」


「ち、ちがっ!! 大事業にするためだからっ!」


 俺の顔色がどうなっていたのかは、知りたくもない。


 後日、テレストも開発費について聞いてきた。


「店の商品は弟子たちが作っておりますので食うには困っておりません。ガルフ練習場へ赴くたびに旅費や宿泊費を負担していただいておりますのに、更にこんなによくしていただいては申し訳ないです」


「ガルフを事業化したい俺の希望代金だから気にしないでよ」


「そうなのですか?」


「テレストが納得するものができたら弟子たち使って大量生産だよ。これからも頼むね」


「はい。ありがとうございます。私も制作が楽しいです」


 テレストが金を受け取ってくれることになって安心した。


 いつの間にかグリップに革が巻かれるようになっていた。


 また別の日には球技場の名前が気になった。


「貴族の遊びにするならさ『練習場』って響きはよくないよね」


「ターゲットは高位貴族の皆様ですよね。確かにコースに行くための練習場ですからね。あの場所だけで遊んでもらうには名前は変えたほうが良さそうです」


 話し合いの結果『タァサスガルフセンター』とすることにした。タァサスとは球技場の近くにある湖の名前であの近辺もタァサス地区と言われている。


 ガルフに関して、前世の知識も大切であるが、この名前の件にも現れているように高位貴族に遊びとして楽しんでもらえる工夫も必要なのだ。


 ありえないほどの広いボックス席。その後ろにある真っ白いウッドチェアは大きめで背もたれもしっかりしている。二つのウッドチェアに挟まれているのは真っ白いウッドテーブル。お客様がいるときには花を飾る予定だ。ウッドチェアが二脚なのは貴族はパートナーを連れていることが多いから。ウッドチェアが日陰になるようにタープで囲む。これらはお客様がいない時には片付けておくので頑丈な倉庫も完備。

 その倉庫から各ボックスへ細い石畳を敷いてある。


『ガラガラガラ』


 その石畳を通ってボックス席へ向かって来るのはドライバー立てだ。これも貴族用に考えた。

 手押しワゴンを細長くした形でドライバーが五本立て掛けられるようになっている。脇にあるティーボックス二つには高さが違う二種類がそれぞれ入っている。

 この仰々しさが貴族の琴線を擽るはずだ。


 球技場の裏手にはキッチンも作り、飲み物や軽い軽食や茶菓子を出せるようにする。連れてこられたパートナーにも配慮するためだ。


 俺が座るウッドチェアの脇にドライバーワゴンが到着した。


「サンキュー」


 本日のサポーター係のニーデズに高飛車に礼を言う。ニーデズは頭を下げた。俺は貴族気取りで立ち上がりドライバーとティーを取る。

 予行練習だから俺もニーデズも演技をしているのだ。


 ニーデズにティーを渡すとニーデズはティーエリアにティーを刺してボールを置く。


 ニーデズが後ろに離れ、俺はスタンスを取って二度素振りをする。半歩前に出て息を吐く。

 スゥとドライバーを上げた。


『スッパーン!!』


「「「「ナイショーッ!!」」」」


 うーん。ヨイショされていた部長の気持ちがよくわかる。気持ちいいね。

 あれ? これも前世の記憶っぽいな。


 ニーデズがティーを指し直してボールを置く。俺がそれを打つ。まわりが声を出す。


 十球終わったところでメッセスが声をかけてくる。


「どうぞ、お茶が入りました」


 俺はウッドチェアに戻る。


 ウルトがフィールドにいる使用人に手を振ると使用人が一番飛んだボールの位置にフラッグを刺してボールを回収する。回収は背負い籠にトングだ。


「うーん。お客が数人いたら使用人にボールが当たってしまうかもしれないから、大会以外はフラッグ無しにしよう。

誰かが打っている間はボールの回収はしない」


「兜を被れば大丈夫だと思いますが」


 どちらかというと護衛系のウルトは考えが豪快というか野蛮というか。

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