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 ニーデズを褒めちぎるハルベルト長兄の言葉に口を挟む。


「ん? フユ、どうした?」


 この柔和そうな笑顔はヤバいことを俺は知っている。意地悪全開か、画策全開か。とにかく裏に何かしらあり、穏やかな状況ではない。


 悪く見えないところがハルベルト長兄の怖いところだ。


「ハル兄上。随分とニーデズの家のことを詳しくご存知なのですね」


「それはかわいい弟と懇意にしている友人のことだからねぇ。知っていて当たり前だろう?」


「ハル兄上の情報力なら当たり前ことなのかもしれませんが、ニーデズはハル兄上に渡しませんよ」


「あれ? そうなの?」


「ニーデズは学園卒業後、俺の秘書にするからっ! ハル兄! 手出さないでよねっ!」


「おお怖っ。フユがハル兄と呼ぶ時は本気なんだよなぁ」


 俺は徐ろに立ち上がった。


「ニーデズ! もう行こう!」


「え?! あ、はい」


 ニーデズも立ち上がる。


「失礼します」


 ニーデズはペコペコと四人に頭を下げて速歩きで俺についてきた。廊下に出てメイドがドアを閉めた音を聞き歩幅を緩める。

 すぐにニーデズが追いついた。


「ニーデズ。俺の部屋で話をしよう」


「はい」


 俺はすれ違ったメイドに茶のセットを頼み自室へ行った。


「フユルーシ様の王都のお部屋は初めてです。とても広いのですね」


「そうなのか? 他の家に行ったことがないからわからないよ」


「ですよね。僕も自室と比べての話なんでわからないですけど」


 メイドはお茶とお菓子を並べてから下がってもらった。


「さっきの話だけど、勝手な事言ってごめん」


「えっと……秘書ってお話ですかね?」


「ああ。本当はガルフ関係で何かしら仕事になりそうだなってなってから言おうと思っていたんだ。だけど、のんびりしていたら、ハル兄にニーデズを取られちゃうからさ」


「ずっと考えてくださっていたのですか?」


「うん、まあ、そうなんだけど。

もし、ガルフ関係の仕事が上手くいかなくても、ハル兄から商会を一つもらえるんだ。元々は卒業したらそうすることになっているんだよ。

だから、ニーデズとメッセスとウルトだけは路頭に迷わせたりしないよ」


「でも、フユルーシ様はその商会よりガルフ関係のお仕事をしてみたいのですよね?」


「うん。偶然だけど前世の知識を使えることを見つけたわけだし。幸運なことにそれをやってみるだけの財源はあるし。ハル兄頼りだけど。

でも、ニーデズもわかっているように全部覚えているわけじゃないし、思い出したとしても前世のゴルフの知識がどれだけのもんだって不安もあるし」


「ですよね。フユルーシ様とドライバーやボールを作ってみて、ただ使うのと道具を一から用意するのでは雲泥の差だと実感しています」


「ニーデズの夢が高官になることなのは知っているんだけど……さ……」


「違いますっ。夢ではないですよ」


「そうなのか?」


「はい。四男として家を離れて、できれば家に仕送りすることが義務だなと思っていただけです。

ハルベルト様のおっしゃるように長兄が頑張ってくれていて、領地の経営は上向きなんです」


「へぇ!」


「義姉上は幼い頃から兄の婚約者で、学園時代に二人で図書館に籠もって農業について学んだそうです」


「それはすごいな」


「ええ。二番目の兄は現在騎士団に所属していて、三番目の兄は二年前に学園を卒業し今は侯爵家の執事見習いをしています。自慢の兄たちです」


「立派な家族だね」


「ええ。だから、僕。ある意味自由なんですよ」


 ニーデズが笑ってくれた。

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