30.依頼
中学生時代にやったアークザラッド3をなぜか思い出しました。
依頼をこなしていくのが楽しかった・・・。
いつも応援ありがとうございます!
今後も頑張ります。
モレジオに拠点を構えることを決めた俺たちは、翌日、早速もう一度役場を訪れた。今回は俺だけで役場を訪れた。他の面々には宿をいつでも引き払えるように準備してもらっている。
「おはようございます。アサンさん、昨日はありがとうございました。」
昨日と同じ窓口に行くと、アサンさんが出迎えてくれた。
「おや、タクトさんですな。おはようございます。今日もいらっしゃったということは・・・。」
「はい。本拠を構えることにしました。」
俺の返答をある程度予想していたのだろうが、昨日の今日で決めてきたことに驚いている様子であった。昨日同様、イスを用意してくれる。
「ホントですか!? もしやとは思いましたけど、決断がお早いですね。我々としては住民の方が増えるのは大歓迎ですが・・・それで、どちらの物件になさったんですか?」
俺はアサンさんに紹介してもらったメモを取り出した。
「この、主街区の大通り沿いの物件をお願いします。昨日あの後、外見だけですけど見にも行ってきました。広さも手ごろそうですし、店をやるにも一番いい立地だったんで。」
「この物件にされたんですね。えぇ、ここは商いをするには一番でしょうね。人通りも多いですし、荷の出し入れもしやすいはずです。それで、月割りになさいますか? それとも、まさかとは思いますがご購入で?」
「あはは、さすがに一括で買える資金はないですよ。逆にお尋ねするんですが、住宅の購入は分納はできますか? 最初に大きな金額を入れて、少しずつ納めていくような。」
現代社会では極めて一般的な方法、というか当たり前の方法であるが、果たして・・・。
「すみません。他の町や村ではそのような方法も認められているのでしょうが、このモレジオの規定ではそのような支払い方はお断りさせてもらっております。」
「あー・・・そうなんですね。」
昨日と今日しか会っていないが、すっかり打ち解けたアサンさんは申し訳なそうに説明してくれた。
「はい。この町は人口流入率は高いですから、正直分納はありがたい側面もありつつ、だれがどれくらい支払ったかを把握するのに手が足りなくてですね・・・。ですので申し訳ありませんがお断りしているんです。」
まぁ確かにそうだよなぁとも思う。パソコンなどで帳簿管理をしているならいざ知らず、この世界の文明レベルでは紙による記録が一般的だ。人の出入りの激しいモレジオでそれを管理するのは難しいだろう。
「わかりました。そうしたら、月割りでの契約をお願いします。とりあえず2か月分くらいで大丈夫ですかね?」
「えぇ、勿論です。この物件は町で管理しておりますので、次回も賃料の支払いはこの窓口までお願いします。賃料は2か月分で60000ギルです。」
家賃の支払いについては、実は昨晩ちょっと口論になったのだ。普通に俺がずっと払おうとしたのだが、さすがにそれはと、ゴブを除く一同が難色を示したのだ。ゴブが反応しなかったのは金にがめついのではなく、内容がぴんとしなかったからだが。みんなは順番で払うとか、全員で頭割りしようなど、色々と意見を出してきたのだが、結局、俺とミオがみんなと一緒にいる間は俺が代表して出し、パーティを分かれた後は残った者で相談して決めようということに落ち着いたのだ。
「承知しました。はい・・・60000ギルです。よろしくお願いします。」
「確かに頂きました。いやぁ・・・60000ギルといえばかなりの大金ですよ。それを昨日の今日でお決めになって、さらにぽんとお支払いされるとは、タクトさんはさぞや名のある方なんでしょうねぇ。」
「いえいえ・・・そんなことないですよ。」
アサンさんの言うのももっともで、今回俺たちが選んだ物件はいわば一等地だ。勿論もっと上のグレードもあるだろうが、この町のメイン通り沿いの物件である。店舗用地としてはかなりの好立地であった。この世界の物価基準にそれほど詳しくないのでイメージしづらいものの、町の露店で買える食べ物の価格が200円前後であるので、大体現代日本の1/2から1/3の物価指数である。RPGなどでもよくあることだが、食べ物や装備品の価格に比べて宿代が異常に安い。今日まで世話になっていたランクの高い宿でも全員で1泊1200ギルであったことを考えるとかなりちぐはぐである。逆に冒険者関連の装備品がいかに天井知らずであるともいえる。
今回拠点に選んだ物件を購入するのに1200万ギルかかる。手持ちの額ではもちろん買えないのだが、俺のスキルがあれば魔石の種類によっては数日で払えてしまう可能性がかなり高い。
(まぁ、ミオさんやロンも言ってたけど、普通はそもそも魔物を倒しても必ず素材を落とすようなことはないんだよな・・・。素材自体もこの辺りで手に入る物だとたかが知れてるわけだし、薬草なんて良品でも15ギル前後だもんな。つくづくイアソンにもらったこのスキルが強力すぎるってことなんだよな・・・。)
「それでは私の方で物件のカギの付け替えを鍵職人にいらしておきます。鍵は何本ほどご入用ですか? 基本は3つで、それ以降は1つにつき追加の料金が発生しますが・・・。」
「ちょっと多いんですけど、6つ追加で合計9つでお願いします。」
「わかりました。職人に依頼しておきます。この後すぐに連絡しますので、昼過ぎにはできていると思います。昼過ぎに私が立ち会って現地で鍵の受け渡しをしますので、その時に料金の方は請求させて頂きますね。そういえば、お店も開かれると仰っていましたよね? 登記に店名が必要なんですが、もうお決まりですか?」
「はい。『クローバー』でお願いします。」
「クローバーですね? 変わったお名前ですね。かしこまりました・・・。これで手続きは以上です。それでは、ようこそモレジオへ。また後でお会いしましょう。」
こうして、俺たちは一時的ではあるが、モレジオの住民となったのである。
ちなみに、「クローバー」という店名は花言葉からである。クローバーの幸運という花言葉にあやかったものだ。店に関わる人たちに、少しでも幸多かれと願ったのだ。
「ただいま。契約してきたよ。」
俺は宿に戻り、事の顛末をみんなに伝えた。みんなの方も宿を引き払う準備を済ませてくれたようで、いつでも出られるといった様子だ。
「お疲れ様です、タクトさん。ありがとうございました。」
ミオが笑顔で出迎えてくれた。
「ありがとうございますミオさん。みんなもご苦労様。今、鍵を職人さんに用意してもらっていて、昼過ぎには引き渡しができるみたいだ。思ったより早くて良かったよ。」
現代日本で物件の契約ともなれば、諸手続きにかなり時間を取られるものだ。契約してから実際に住むまでに数週間かかるなんてざらである。そのあたりがざっくりしているのは大変ありがたい。
「それまでの時間はどうする? 待つにしても結構あるね。」
「なぁなぁ、そしたらよ、ギルドに行って依頼でもこなさねぇか? ここで待ってても暇だしさ、ランク上げは進めた方がいいんじゃないかな?」
シュリカの問いにロンがそう提案した。
「そうだな。俺も依頼ってどんなものがあるのか興味あるし、昇格にどれくらいこなさないといけないか知りたいな。素材にしろ魔物討伐にしろ、この辺りの事も知りたいしな。」
「ようし! 今日もがんばるぞ、な、キョウコ!」
依頼と聞いてキュウマも俄然力が入ったようだ。冒険者としての独り立ちを願う彼にとっては、一刻も早くギルドに駆け込みたい胸の内だろう。
「じゃあアタシはついてっても足手まといだから、新しい拠点で必要そうな道具やら何やらを揃えておくよ。ゼオル、アンタも付き合っとくれよ。ギドーさんもお願いできるかい? 店の場所、詳しいだろ?」
「うへぇ・・・女の買い物はなげぇからなぁ・・・」
「あんだって!?(ギロッ)」
シュリカに頼まれ、ゼオルが辟易した様子で嘆いていたのだが、一睨みで黙らされている。もはやお馴染みとなった2人のやりとりだ。一方で、ギドーさんはシュリカの頼みを申し訳なそうに頭を下げて断りをいれている。
「シュリカ殿、申し訳ありません。私は店舗のことを同業の仲間に連絡をしにいきたいのです。それに、仕入れ先を工面しなくてはなりません。すみませんがそちらを優先させて頂けないでしょうか・・・?」
ギドーさんの言葉に色々と気づいたシュリカであった。
「あぁそうだよね。こっちこそごめんよ、よろしくお願いするよ。荷物持ちはコイツが2人分働くから大丈夫さ。」
「おいコラ! 俺はお前ぇの手下じゃねぇぞ! シュリカ!」
「やかましいよ! つべこべ言うんじゃない!」
2人の夫婦漫才はさておき、俺もギドーさんとは相談したかった。
「ギドーさん、俺からもよろしくお願いします。新しく店を始めても、同業者と食い合ってもしょうがないですし、横のつながりは大切ですもんね。販路や仕入れ先なんかはお任せしますので、よろしくお願いします。」
「勿論ですよ! 腕がなります。初めはあまり手広くやらない方がいいでしょうから、タクトさんが調合したポーション類が主な商品ということでよろしいですよね?」
「えぇ、品質のいい物を安定して価格で供給できれば、この町でなら確実に収入になりますもんね。」
「わかりました。お任せください。」
ギドーさんも胸を張ってこたえた。自分の店を持てるのは嬉しそうだ。
「ゴブ。申し訳ないんだけど、ゴブが良ければギドーさんの護衛をお願いできるかな? ギドーさんならトラブルはないと思うけど、何かあった時にゴブが近くにいてくれると安心だ。」
俺の問いかけに、頼れるゴブリンは鷹揚に頷いてくれた。
行動は決まった。俺たちは昼過ぎまで、それぞれの目的を果たすべく行動し始めたのだった。
冒険者チームの俺、ロン、ミオ、キョウコ、キュウマは昨日も訪れた冒険者ギルドへとやってきた。今日は前日のようなトラブルもなく、スムーズに依頼窓口まで来ることができた。
「おはようございます。依頼の受注ですか? それとも報告ですか?」
女性職員さんが丁寧に応対してくれた。他の窓口もそうだが、冒険者ギルドは活気に満ちていて、職員の皆さんのやる気がすごい。それはそれぞれの冒険者にも伝播しているのか、町の花形であることがこういうところからも頷ける。
「受注でお願いします。こちらが冒険者カードです。Eランクでも受けられる依頼を教えて頂けますか?」
職員さんは俺のカードを受け取ると、さっと確認して返してくれた。この辺りは日本の役所と遜色ない。
「かしこまりました。現在受注できる依頼はこちらのようになっております。」
と、職員さんは黒板のようなものを持ってきてくれた。低ランクほど毎日多種多様な依頼が舞い込むのか、いちいち紙に書くようなことはせず、すぐに書いたり消したりできるこちらに依頼が記載されていた。かなりの数があり、どれにしようか迷っていると、後ろのロンが1つの依頼を指さして言った。
「タクト、そこの上から4番目の『石材採集』はどうだ? タクトの道具なら採集しやすいだろ? この辺の魔物なら俺とキュウマたちだけでも大体なんとかなりそうだけど、最初からタクトも討伐系じゃない方が安心なんじゃないか?」
ロンはこういう気遣いができるのだ。彼の言う通り、土地勘のない俺としてはいきなり魔物と確実に戦闘を行うものよりも、採集だけで済む可能性が高い方を選びたいところだ。それに、素材として利用できる石ならば、今後のためにいくつかゲットしておきたい。
「そうだな。ありがとう、ロン。みんなもそれでいいか?」
「私は大丈夫です。」
「俺たちも問題ないよ。」
全員の了解が得られたので、職員さんに受注の旨を伝えた。
「かしこまりました。詳細は依頼主からのメモがありますのでそちらをご覧ください。ご心配であれば依頼主に
直接伺うのも手です。石材が多く得られるのは町の西出口を街道沿いに進んだ先の荒野です。採集依頼ではありますが、街道及び荒野には当然魔物が出没しますので十分お気をつけてください。」
「ありがとうございました。」
これがゲームであれば、俺は受けられる依頼は一気に受注して最短でこなしていく派だ。その方が時短になるし、いちいち受注と報告を繰り返すのは面倒だからだ。しかし、ここは現実世界。自分たち以外にも冒険者はごまんといるのだ。すぐにこなせない依頼を大量に抱え込むのはいらぬトラブルの元であろう。
こうして、俺はギルドでの初の正式な依頼をこなすべく、仲間とともに荒野へ向けて出発したのだった。
1時間目後、俺たちは目的地の荒野に到着した。道中は特に魔物に襲われることもなく、平坦な道のりであっ
た。というか、ここに来るまでに数回魔物が接近してきたのだが、俺たちと同じように街道を歩く冒険者たちが我さきにと討伐してくれたおかげで、特に俺たちは疲弊することなくここまで来られたのだ。
どちらかといえば、困ったのは魔物よりも人間である。やはり町の西側出口の周辺にも貧民街は広がっていて、物売りや物乞いが群がってきたのだ。向こうも生活がかかっているからとてもしつこく、無視を決め込むのも精神的にくるものがったのだ。
「タクトさん、早速目的の石材を探しましょ! 依頼書には見た目の特徴とか書かれていますか?」
キョウコが場を明るくするように明るい声で尋ねてきた。物乞いたちの怨嗟の声に鬱々としていた俺は、だいぶその声に救われた。
「あ、そうだな・・・依頼書によると、荒野の岩場周辺にある石材がいいらしい。『目利きのできる冒険者と同行するのがおすすめ』って書いてあるから、俺やロンは近づけばわかりそうだな。ひとまず岩場を探してみようか。」
「っていうかさ、岩場ってあれじゃないか?」
キュウマが少し離れた場所を指さした。彼の言う通り、遠目にも岩が露出した場所があるのが見える。
「OK。あそこに行ってみよう。」
「皆さん! 武器を。右手と左手からそれぞれ3体ずつ、接近してくる気配があります。」
ミオが緊張した声で警告してくれる。
俺たちは警戒感を一気に引き上げ、身構えた。しかし、視界にはいつまで経っても魔物の姿が無い。ミオよりもスキルLvは低いが、俺も気配察知スキル持ちだ。先ほどから確かに魔物の気配を感じているのだが、一向に姿が補足できない。
「下です!!
ミオが大音声で叫んだ。
彼女が叫ぶのと、足元に振動を感じのは同時だった。俺たちは身に迫る危険から、本能の赴くまま、咄嗟に跳びさすった。
「モボォ!」
周囲に砂埃が舞い、足元の地面が崩れ、突然鋭い爪が地面に生えた。というより、何者かが地面から襲い掛かってきたのだ。不意をつかれ、左足にダメージを負ってしまった。俺と同様、動きがあまり速くないキョウコも腕を浅く切られたようだ。
「ッツ・・・!」
地面から現れたのは、鋭い爪を持つ、モグラのような魔物であった。全身を毛に覆われており、地中を移動してきたからか土を被っている。
「こんのぉ! せいやっ!」
ロンが自分に近い1体に一太刀を浴びせようと鋭く踏み込んだ。そのまま水平に剣を薙ぐ。
「っくしょぉ! 毛が邪魔で本体まで届かねぇ!」
普段なら敵に致命傷を与えるとロンの剣が、今日は体毛に阻まれてしまった。
「ロン! 斬撃は効果が薄い! みんな、刺突で試してみてくれ!」
俺の指示を受け、キュウマが体重を乗せた突きを放つ。モグラの体長はそれほど大きくないため、キュウマでも斜め上から撃ち落とすような攻撃が可能であった。
「モボォォッ!」
モグラの体にキュウマの剣が突き刺さる。思った通り、線での攻撃よりも点での攻撃の方が効果が高いようだ。体力もそれほど高くないようで、キュウマの一撃を受けた一体はすでにふらついている。
「互いに背を守りながら確実に一体ずつ攻めるぞ!」
とはいえあの鋭い爪の攻撃力は油断ならない。俺は自作したメイスを振り被り、手近な一体に向け渾身の一撃を放った。咄嗟に魔物は両手の爪を交差させて身を守ろうとしたが、爪ごとメイスの一撃に砕かれた。
「すごい! タクトさん、斧よりもメイスの方が得意なんですね!」
ミオが横目に俺の様子を見ていて驚いている。本格的に棒型の武器を握って戦うのは久しぶりであったが、スキルの効果も相まって斧以上に取り廻すことができている。斧よりも重量がなく、さらに刃の向きなどに意識を向けなくていいので、戦闘面のセンスがあまりない俺にも扱いやすい。
「この調子でいこう! 爪の一撃にだけは気を付けて!」
奇襲さえ耐えることができれば、爪モグラ、素材で名前が判明したがモルテンというらしい、はそこまで強い魔物でもなかった。俺が一撃で葬った後、手負いの一体をキョウコの魔法スキルで倒した後は、数的な優位もあり無傷で倒すことに成功した。キョウコの傷は軽微だったので自然治癒に任せ、俺の方は初級回復ポーションで全快させた。回復の後素材を確認したところ、一種類の魔物であったのに様々な素材を得ることができた。
土竜の髭(6)・・・モグラ型魔物の髭。土属性が宿っており、魔法アイテムの素材になる。
モルテンの爪(4)・・・モルテンの鋭い爪。土中の土や石を掘って進むのに適した硬い爪。爪そのものも武器防具素材になるが、防具やアクセサリーを作成する際に使用することで防御力に追加効果を発生させることができる。
モルテンの針毛(11)・・・モルテンの外皮に生えている毛。硬い繊維でできており、防具素材になる。
石炭(5)・・・石炭。鉄の製造に使用する。
鉄鉱石(5)・・・鉄の原料となる鉱石。鉄の製造に使用する。
※( )は個数
モルテンの魔石(2)・・・防具の地属性抵抗が上昇する。
6体のモルテンからこれだけの素材を得ることができたのは大きな収穫である。
「やった。石炭と鉄鉱石だ。鍛冶で使える素材が手に入るのは助かるな。さすがはモグラって感じかな。」
ミオが自分のことのように喜んでくれる。
「よかったですね、タクトさん。依頼の主目的とは違いますけど、遭遇したら狩り貯めておくといいですね。鍛冶の修行でも使えますし。」
「ロン、ちなみに、例えばここで手に入れたモルテンの素材を欲する依頼があれば、その場で受注してすぐに報告できるのか?」
ロンは俺の問いに頷いた。
「ああ、昨日キュウマたちと似たようなことがあってさ、残り1個依頼をこなそうと思って窓口に行ったら、持ってた素材がすぐ納品できたぞ。だから、この荒野で遭遇する魔物は危険が無ければ倒しておくといいかもな。Lv上げにもなるしな。」
そういうことなら話は早い。奥の岩場で石材を得たら、時間の許す限り魔物を狩る方向でいこうということになった。
それから、目的の岩場に着くまでに7度の戦闘を行うこととなった。戦闘回数を重ねるたび、モルテンの奇襲にも慣れ、被弾は無くなった。最初の戦闘と同様、奇襲さえしのげばあとは対処もしやすい魔物で助かる。さらに、俺たちをよろこばせたのはスキルの獲得とレベルアップだ。俺の「貴方の人生に幸多からんことを」のおかげで、パーティ全体のスキル発現率とスキルレベル向上速度が上がっている。ミオの気配察知はLv26になり、俺はLv17,ロンはLv14、キュウマとキョウコは覚えたばかりだが既にLv3になっている。後は、各々の武器スキルLvだ。俺の棒術はLv14で、斧術と同じになった。やはり取り回し的にもこちらの方が良いので、攻撃力自体は劣るがこちらをメインに使っていくつもりだ。ロンの剣術はLv15で、ついに抜かれてしまった。「貴方の人生に幸多からん事を」は、俺自身のスキルレベル上昇速度が当然最も早いのだが、ロンやゴブ、キュウマは剣の修行も事欠かないからか、めきめき上昇している。キュウマはLv8まで上がっている。キョウコの火魔法はLv5だ。こちらは手数と魔法力の問題で物理攻撃系統よりも成長がゆっくりではあるものの、つい最近戦力になったとは思えない成長スピードである。最後にミオの剣術はLv11だ。
「ようやく岩場についたな。そんなに距離はないと思ったのに、魔物との戦闘が多くて時間かかっちゃったな。軽く食事にしよう。順番に持って行ってくれ。」
俺はマジックバッグから包みを取り出した。
「よーし飯メシ! 頂きまーす!」
早速ロンが大口で頬張っている。今日のメニューはライデンシープの肉を玉ねぎと炒めて味をつけたものをパンに挟んだサンドイッチだ。
「美味しいです! お好み焼きも美味しかったですけど、こういう軽食でもタクトさんのお料理は最高ですね。」
キョウコがにこにこしながらパクついている。こういう所は年頃の女子だ。
あっという間に各々食事を終えると、周囲の探索にかかった。そして、10分くらい辺りを探したところ、俺の
目利きスキルに反応する石を発見した。
「ロン、来てくれ。これだ。他の石よりもちょっと青みがかっている、そうそう、それだ。」
目利きスキルを発動すると、脳内に情報が流れ込んできた。
ジア岩石・・・火山岩の一種。青みがかった見た目が特徴的な岩石。硬度の割りに加工がしやすく、建築や各種製造に使用される。
「へー、これが石材かぁ。普通の岩みたいに見えるけど、2人には違いがわかるんだな。」
キュウマが感心したように言っている。確かに、依頼の前情報や目利きスキルがなければ気づかないかもしれない。
「どれ、じゃあ収集するか。っしょ・・! やっぱ重いな。マジックバッグがなかったらかなり大変だぞ、これ。」
素材とはいえ、ようするに岩である。両腕で持てる大きさの物でも重くて当然である。ただ、俺はマジックバッグを持っていて、その中にさえいれてしまえば重量を感じなくなる。これがなかったら大きな荷車が必要だろうから、たくさんの依頼の中で受注者がいなかったにも頷けた。
俺たちは手分けしてジア岩石を探し、袋に転がして収納できる物をいくつか集めた。依頼では3個、としか書かれていなかったが、とりあえず発見できた物を9個ほど袋に詰めることに成功した。残った分は次回の依頼に使用してもいいし、何かの素材になるかもしれない。
「よしっ、そろそろ戻ろうか。帰りも戦闘があるだろうし、物件の受け渡しに丁度いい時間になるな。」
時刻は1時を回っている。俺たちは収集を切り上げ、元来た道を戻ることにした。
帰りもやはり4度ほどモルテンと遭遇したものの、危なげなく勝利を納め、多数の素材を得ることができたのだった。
「こんにちは。依頼を終えて戻りました。報告お願いします。」
俺たちは朝受付をしてくれたお姉さんの前に再び戻ってきた。お姉さんは俺たちの無事を喜んでくれた。
「お疲れ様でした。ご無事で何よりです。石材収集の依頼ですね。収集品は確かに受領しました。依頼達成です。
人数分の冒険者カードをお願いします。」
「あ、忘れてました。どうぞ、よろしくお願いします。」
「お預かりします。・・・はい、結構です。皆さんのEランク依頼達成回数は1回です。ランク昇格には10回の依頼達成か、同程度の功績が条件です。引き続き頑張ってくださいね。こちらが報酬の800ギルです。追加で依頼を受注されますか?」
ゲーマーの性としては「受けます!」と言いたいところではあったが、ここはぐっと我慢し、翌日以降に持ち越すことにした。依頼主は1分1秒でも早く達成してほしい人ばかりだ。最初から翌日以降の達成予定とわかっているのに受けるのは気がひけた。
「いえ、今日はここでやめておきます。明日以降、またお願いします。」
俺たちは窓口のお姉さんに礼を言うと、新しい拠点へ向けて歩き出したのだった。




