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25.魂の姿見

3章スタートです。

応援ありがとうございます!



 チュン・・・・チュチュン・・・・・チチッ・・・・ピピピ・・・・

 翌朝。窓から差し込む陽の光の明るさで俺は目を覚ました。

 昨晩のミオの告白から、俺も彼女に重大な告白をした。彼女の気持ちはそのまま受け止められなかったものの、彼女は今の俺の気持ちを理解してくれ、夢を共にすることを誓い合った。それまでと変わらない日常。だが、以前よりも心の距離というか、互いの結びつきのようなものは強くなったように思う。

 そしてもう一つ、変わったことといえば・・・。

「ん・・・んん・・・んー・・・。あ・・・タクトさん、おはようございます・・・。」

「おはようございます、ミオさん。」

 俺は寝台に寝たまま、顔を右側に向けた。そこに、同じく顔をこちらに向け、ぼんやりと目を覚ましたミオがいる。彼女は身体を俺側に向けて寝ていたようだ。もちろんお互いに服は着ているし、身体も密着はしていないが、同じ布団で寝ていたという気恥ずかしさが込みあげてくる。彼女は身体を起こし、「うーん・・・」と伸びをすると、にこにこと笑いながら語りかけてくる。ちょうど、朝日に照らされ、彼女の顔がよく見えた。

「おはようございます。昨日はありがとうございました。おかげで安心して眠れました。」

「いえいえ、とんでもないです。」

 昨日は目まぐるしい一日であった。ミオにとっては、過去の自分と決別し、新たな一歩を踏み出したものの、心と体にかかった負担は大きかっただろう。それゆえに同じ布団で寝たわけで、どうやらそれが功を奏したようだ。

「今日でこの村ともお別れか。なんだかすごく長く滞在していた気がするなぁ。」

「いよいよモレジオに向けて出発ですね!」

「えぇ、鍛冶工房の数も多いってハッサンさんが言ってましたし、この村よりも大きいってなんだか想像できませんけど、新しい町に向かうのは楽しみですね。」

 俺たちは話しながら、朝食を摂るべく食堂へ向かうことにした。途中で、ロンやシュリカと鉢合わせした。

「おはよう2人とも! ちょ、ちょいとちょいとミオちゃん・・・こっちおいで・・・で、どうだった・・・? え、気持ちを伝え・・・? そうなの、よかったじゃない・・・! それじゃ・・・・。うんうん・・・えぇ? 何も!? どゆこと・・・? そうなのね、うんうん・・・ミオちゃんはそれでいいのね。よしよし・・・。」

 シュリカが物陰にミオを誘い出し、昨晩のことを聞き取っているようだ。別にやましい事は・・・ほとんどないのでいいのだが、時々シュリカから向けられる視線が痛い。ロンの奴も親指を中指と人差し指に挟んでにやにやしてくるし・・・。

 ミオからの事情聴取(?)を終えたシュリカが彼女を伴って移動の列に参加した。歩きつつ、肘でつつかれる。

「ミオちゃん、すっきりした顔してたじゃない。あんた見た目はさえないけど、なかなかいい男じゃないの。」

「おほめに預かり光栄です。」

 そうこうする間に食堂に着いた。今日は珍しくゼオルも起きていて、俺たちが来るのを待っていてくれたようだ。

「おう、来たな! もう飯は頼んであるぜ。」

「ありがとう。みんな怪我もないし、体調は大丈夫そうだね。」

 俺が席に座るやいなや、キュウマが俺の横まで近づいて頭を下げてきた。

「タクトさん、おはようございます! 妹のキョウコと2人で話し合ったんだけど、俺たちをみんなの旅について行かせて欲しいんだ。ゴブに助けてもらったし、恩返しがしたいと思うんだけど、この村は鬼人族の俺たちじゃ暮していくのも、働くのも難しいんだ。だから、冒険者の町っていうモレジオまで行って、そこでゼオルさんみたいに仕事を見つけたいんだ。お願いします! 俺たちを、モレジオまで連れて行ってください!」

 妹のキョウコもとことこと兄の横に並び、同じように深々と頭を下げる。

「うん。俺もゴブから話は聞いたよ。2人とも、大変だったね。事情を知った以上、2人を連れて行くのは構わないんだけど、この旅の目的はギドーさんをモレジオまで安全に護衛することなんだ。だから、ギドーさんの意向を伺わないといけないんだ。ギドーさん、同道は可能ですか?」

 俺はギドーに視線を向ける。他のみんなの視線も、当然彼に注がれることになった。

「ほっほっほ、これでお断りするようなことがあれば私が人でなしと言われてしまいますな。今更ですよ。もちろんご一緒しましょう。これも何かの縁です。キュウマさん、貴方が望むならモレジオの商人ギルドにかけあって仕事の斡旋もして差し上げますよ。最初は簡単な仕事でしょうが、きょうだいで食べていくには困らないはずですよ。」

「ありがとうございます! タクトさん、ギドーさん!」

 2人が旅の仲間に加わることになった。子どもだとは思っていたが、人族でいえばキュウマは13歳、キョウ

コは12歳らしかった。中学生くらいの年の子がもう自立する相談をしているのだから、この世界は本当に厳しいのだと思う。我々が生きていた日本では一部の例外はあるのだろうが、ほぼありえないことであった。

「ヨカッタナ キュウマ。タビノアイダ ケン オシエテヤル。」

 ゴブも嬉しそうだ。

「その・・・乗っかるようで申し訳ないんだけどさ、あたしもついて行っていいかい? 実家のある獣人族の国に戻ろうと思ったらどのみちモレジオは経由するしさ、一緒させてもらえると助かるんだけど・・・。」

 シュリカもまた、同道を希望してきた。これもあっさり承諾されることとなり、ミオが跳び上がって喜んでいる。

 こうして、俺たちは総勢9人のパーティとなり、モレジオを目指すことになったのだった。




「ここだ。すいません、リンネさん、入ります!」

 俺はキュウマとキョウコを伴い、マリの村に着いた日に訪れたリンネの魔法屋を訪ねていた。

 事の発端は数十分前に遡る。食事を終えて部屋に戻った俺たちは旅支度をしていたのだが、キュウマからお金を貸して欲しいというお願いをされたのだ。理由を尋ねると、自分とキョウコの武器を揃えるためだと言う。これには俺たち一行も落ち度に気づいた。

「子どもに戦闘させるかは別だけど、俺も護身用の武器ぐらいはあった方がいいと思うんだよな。後は靴も。キュウマもキョウコも、ほら、だいぶ痛んでいるだろ? 上り坂なんかは荷台から降りて歩くだろうし、最低限の旅装はそろえるべきだと思う。よく勇気出して言ったじゃん。お金借りるのって言いだしにくいよな。」

 ロンも2人を気遣ってそう話した。彼には兄弟がいないので、2人のことは何かと気になるようだった。手持無沙汰にしている2人に何くれとなく声をかけ、これまでの旅のことや、俺たちのことを冗談まじりに話している。2人もそんな兄貴分を気に入ったようで、すでに仲良くなっている。

「そうだな。じゃあギドーさんの荷馬車の積み込みと準備が終わるまで、買い出しにしよう。俺が2人についていくから、ロンとミオさんはシュリカさんの方を頼む。ついでに回復剤の材料とか、食糧の買いだしをしてもらえると助かるな。俺のマジックバッグを渡しておくから、そっちの方を頼む。ゼオルとゴブはギドーさんの手伝いを頼む。村の南側の門に集合しよう。」

 というわけで、準備を進めるべく俺たちは宿を後にした。

 市場へ来た俺たちはまずは武器を揃えることにした。

「キュウマはどんな武器がいいんだ? 体格的にはハンマーとか、メイスとかはまだ早いと思うけど、何か希望はあるか?」

 彼の身長は大体160cmほどである。まだ成長途中だから今後伸びると思うが、現状は大人に比べればどうしても小柄である。長物武器は取り回しが難しいと思ったのだ。それに、この年齢の子どもたちは自己決定させるに限る。キュウマは俺たちに感謝はしているだろうが、心から信頼するのにはまだ時間が必要だと思う。そのような大人から頭ごなしに「〇〇がいいよ」と言われても中々納得できないだろう。

「うん。やっぱり剣がいいな。ゴブも使っているし。」

「まぁそうなるよな。了解。じゃあ剣を中心に探してみよう。」

 剣であれば俺が鍛冶で作るという手も考えたのだが、ハッサンさんの工房をお借りするのも悪いと思った。だから今回は店売りの武器で賄おうというわけだ。武器屋ではなく市場に来たのは、裁縫スキルで使う縫い針や糸などの道具を買うためだ。昨日のモレン湖への狩りでだいぶ素材も増えてきたので、靴を自作しようと思ったのだ。魔物素材で自作した物の方が追加効果が発動する場合も多いからだ。それに、自作した方が安くあがるため、キュウマたちの精神的な負担も減ると思ったのだのだ。

 この日は目ぼしい剣が売っていなかった。仕方なく、普通に武器屋でも売っているブロードソードを買うことにした。品質も普通であるし、特に目立った追加効果もないが、初めて使う武器としてはクセがなくていいだろう。

困ってしまったのはキョウコの方だ。彼女はキュウマと比べてもさらに小柄である。筋力もそこまであるわけではないので、武器を持って戦うという選択肢はかなり狭まってしまったのだ。

「すいませんタクトさん。ご迷惑をおかけしてしまって・・・。」

「心配するなよキョウコ! 大丈夫。お前のこと俺が守ってやるし、お前の分も俺ががんばるからさ!」

「でも・・・。」

 キョウコもなんとか迷惑をかけんとしている気持ちもわかる。だが、体格に合わない物を無理に持たせても仕方がなく、途方にくれている時だ。俺はふと、初日にこの世界のことを色々と教えてもらった老婆のことを思い出したのだ。

 試しに、彼女がかけてくれた魔法を発動してみる。

(うーん、こんな感じか?「念話!」・・・もしもし、リンネさん、聞こえますか?)

(なんだい。タクトかい? 念話は名前を名乗るんだよ。あたしゃ顔が広いんだからね、誰が誰だか忘れちまうわい。・・・どうしたんだい? また買い取りかい?)

(あ、いえ、ちょっと新しい仲間のことで相談がありまして、お店に伺ってもいいですか?)

(構わないよ。まだ店にいるから、いつでもおいで。)

(わかりました!)

 リンネとの念話を終え、市場で買いそろえたかった物の買い出しを済ませ、俺たちはリンネの店へ向かったのだった。


「おう、タクトかい。で、そっちの鬼人族のお二人さんが新しい仲間ってかい? なるほどね。」

 鬼人族であることを言い当てられ、キュウマとキョウコがびっくりしている。2人には額のところに小さな角がある。キュウマは2本、キョウコは1本だ。あまり立ち入ってはいけない気がして質問していないが、おそらく成長とともに角も大きくなっていくのだと思う。2人はその角を、ミオやギドーらと同じように布切れで隠していた。もちろん無用なトラブルを避けるためである。大人になるとわからないが、2人とも角を隠してしまえば見た目は人族の子どもと変わらないので、俺もリンネが2人のことを言い当てたのに驚いた。

 俺たちはリンネに促され、店のカウンター前のいすに腰を下ろした。

「リンネさんが言う通りです。これからモレジオまでの旅に同道させるんですけど、兄の方のキュウマは剣を使うで落ち着いたんですが、妹のキョウコの方で困ってしまって・・・。リンネさんなら何か知恵を拝借できるんじゃないかと思って来たんです。突然すいません・・・。なんとか2人の力になってやって欲しいんです。」

「別に構わないよ。年寄りは暇だからね。そうだね、まず、鬼人族の特性を教えてあげるよ。鬼人族は人族に比べると力と丈夫さが強いし、魔法にも少し適性があるんだ。多くの場合、成人すると戦いに従事することが多い。戦闘向きの種族さ。魔法は火魔法と土魔法、敵の行動を阻害する魔法の適正があることが多いね。後は種族特有の姿を変える魔法が使えるね。半面、弱点もあって、ドワーフ族同様すばやさが上がりにくいね。あとはまぁ、この子たちを前にして言うのも悪いけど、大本のルーツを辿ると魔物の系譜なのさ。だから、戦場で一目置かれる存在ではあるものの、根強い反感や差別はあるね。ま、冒険者にでもなれば話は別さ。冒険者の世界は実力勝負だし、種族も性別も信条もごちゃまぜだからね。」

「とすると、キュウマは剣で戦うので問題ないんじゃないかな? キョウコは魔法か・・・困ったな、俺たちの中に魔法を使えるのは誰もいないんだよな。」

 俺の話を聞いたリンネが、「ちょっと待ってな」と部屋の奥に戻った。そして、何かを恭しく手にもって戻ってきた。オーブのようなものを、カウンターに乗せた。ゴブリンオーブと形は似ているが、いったいこれは何だろうか。

「こいつぁ『魂の姿見』ってマジックアイテムさ。魔力を込めると相手の所持スキルや適性がわかるんだ。こいつでお前さんたちを見てあげるよ。」

 とんでもないレアアイテムである。この世界はスキルの有無で人生が大きく変わるとみてよい。その有無だけでなく、適正までわかるとなると、伝説級のマジックアイテムではないだろうか。

「すごいアイテムですね! 魔石よりなによりレアなアイテムじゃないですか!?」

「それがそうでもないんだよ。このアイテムを使うには大量の魔力がいるのさ。相手の情報をより多く見ようと思えばそれに比例して消費魔力も増えるしね。そもそもが、スキルを持っている人間はそう多くはないし、大抵スキルに準じた仕事に就く奴が多いのさ。だから、わざわざこの『鑑定』っていうのかね、これにお金を払う奴は少ないね。レアアイテムであることは間違いないけどね。ま、各国の王や魔導士を抱え込めるくらい力のある領主なんかだと、富国のために持っていることも多いかもしれないけどね。どれ、キョウコっていったかい? この宝珠に触れてごらん。」

「は、はい!」

 キョウコはそう言って、恐る恐る宝珠に手を振れた。そこへリンネが魔力を注入していく。すると、宝珠が淡く光を放った。

「・・・なるほどね。あんたは火魔法と妨害魔法に適正があるよ。魔力も知恵も悪くないから、その2種類の魔法を磨いていくといいね。ただしどれくらいで見に着くかはあんた次第さ。がんばりな。」

「火魔法と妨害魔法!? 私にそんなものが使えるかもしれないんですね。わかりました。ありがとうございます!」

 素直に喜ぶキョウコを俺とキュウマが見つめている。子どもが喜ぶ顔というのは、いつだって周りを温かくするものだ。

「ありがとうございます。でも、魔法ってどうやれば使えるようになるんですか? まさか『ファイヤー!』って唱えたらすぐってわけじゃないですよね?」

 俺の問いにリンネが可笑しそうに笑っている。

「ハッハッハ! そうだね。前も説明したが、魔法は他の武術と同じで、長い年月をかけて習得するからね。誰かに師事して教わるか、その属性の魔法に関連する行動を取りつづけるとかね。これでも、適性がなけりゃ使えるようにはならないから、この子は適性があるだけ貴重だよ。ただ、もしも1つでも身に付ければ可能性はぐっと広がるよ。その感覚を掴んじまえば、後は他人の魔法を見てイメージから模倣することも、自分で魔法を編み出すこともできるさ。もちろん、そんなに簡単なことじゃないけど、0を1にするよりは、1を2にするのは楽だからね。で、どうするかい? 火魔法の初級魔法はファイアボールだ。初級魔法だからダメージは低いけど、ある程度の距離まで飛ばせる火の球を出せるよ。スキルブックの在庫もあるし、人気の品じゃないから40万ギルだ。その子の鑑定料60万ギルと合わせて、合計100万ギルだね。」

「「100万!?」」

 キュウマとキョウコが素っ頓狂な声をあげた。俺は声はあげなかったものの、やはり以前言っていたように、魔法の高さに愕然となった。

「以前仰ってましたけど、やっぱり魔法って高いんですね。鑑定もすごい額だな・・・。はい、100万ギルです。」

「「ちょ、ちょっとタクトさん!?」

 2人は俺がぽんと100万ギルもの大金を持っていたこと、そしてそれを躊躇なく支払ったことに驚いたようだった。

「ちょちょちょっと待ってください! タクトさん、マジかよ!? 100万ギルだよ? なんでそんなに簡単に払えるんだよ!? お、俺たちまだ会ったばかりなのに!」

 まぁそうだよな。昨日まで見ず知らずだった大人がいきなりものすごい大金を自分のために払えば、誰だっておかしいと思うだろう。場合によっては不信に思うはずだ。

「いや、いいさ。2人、特にキュウマにはミオさんを助けるのに協力してもらったじゃないか。キュウマがいなかったら、もしかしたら大切な仲間を無傷で助けられなかったかもしれないんだよ。ゴブやリンネから鬼人族や二人の事を聞いて放っておけないしね。お金はまた稼げばいいよ。それよりも、2人の未来と安全の方が大事だよ。返済はいつでもいいからさ。気にしなくていいぞ。」

 2人はどう答えていいかわからない様子だった。ここで断ったら断ったで、旅の迷惑になると思ったからである。であれば、少しでも役に立つ方を選択するのは間違いではない。しかし、それでも2人は無償の思いやりと言うものを経験したことがなかった。だから、こういう時にどうすればいいのかわからなかったのである。

「なんじゃ、子どもが細かいことを気にるんじゃないよ。タクトはあんたたちの未来に投資したのさ。だったら、ありがたくうけ取って精々励むことだよ。」

「ちょっとリンネさん。だったら少し負けてくださいよ。何すごい年長者っぽいこと言ってるんですか。」

「ハッハッハ! あたしの懐は痛まないからねぇ。それとタクト、いいこと教えてあげるよ。あんたの目利きの極意のスキルだけど、それがあれば相手のスキルや適性を見られるよ。」

「えええ、そうなんですか!? 全然知らなかった。ってかなんで俺のスキルを?」

「フフフ、あたしを誰だと思ってるんだい? リンネ様だよ? これくらいわけないよ。」

 とんでもないババアである。

「目利きの極意は目利き系スキルの最上位だからね。『魂の姿見』がなくても相手の情報を見られるよ。たださ、自分のことがわかるっていうのは選択肢を狭めることにもなるわけさ。わからないから苦悩するけども、その時に遠回りや失敗の経験が人を強くするじゃない? だから、使いどころと伝えどころは気を付けた方がいいね。」

「そうですね・・・。最短の道が最高の道かどうかは相手次第ですもんね。はい、ありがとうございます。肝に銘じておきます。」

「アンタなら大丈夫だと思うけどね。国レベルでみたら、スキルの有無で人の価値を見ちまう風潮もあるからね・・・。ほれ、後他に聞きたいことはないのかい?」

「あ、はい。大丈夫です! 色々お世話になりました。マリの村を離れますが、またお会いしましょう、リンネ

さん!」

 そう言って、3人で頭を下げると、俺たちはリンネの店を後にした。

「いけない、結構時間が経っているな。急ごう!」

「「はい!」」


「しっかし・・・タクト、あんたも底が見えないねぇ・・・なんだいこのスキルの数は・・・。」

 実は、リンネはタクトたちに嘘をついていたのだ。彼女が使った魂の姿見は、実際は触れる必要はなかったの

である。別にこれ自体に悪意はなく、初めはなんとなくのノリでやった演出であった。

 キョウコの鑑定を行った後、魔力に余裕のあったリンネはキュウマとタクトの鑑定を行っていたのだ。キュウ

マは鬼人族らしく、剣術に適正があるらしかった。まだ子どもであるので、スキルは勿論所持していなかった。

 問題はタクトの方だ。リンネが姿見を見た途端、膨大な量のスキル情報が表示されたのである。スキルを持っ

ているだけでもすごいのに、それが異常な数、彼は所持しているのだ。しかも、個々のばらつきはあれど、すで

にスキルLvが20付近になっているものもある。タクトは見たところ30代半ばくらいなので、その年齢でこれ

だけのスキルを獲得しているのは異常事態である。

「このことを国が知ったら・・・戦争になるよ・・・。間違いなく・・・・。」

 さらにリンネを驚かせたのは彼の持つ特異なスキルだ。目利きの極意はその存在が認知されているものの、極

めて希少なスキルだ。それこそ先ほど彼らに話した通り、国が魂の姿見で富国強兵を試みているのだ。このスキ

ルさえあれば、膨大な魔力をくう必要がなく、より多くの人間を鑑定させ、自国へ適材適所、強制的に宛がうこ

とができてしまうのだ。

「それにこのスキル・・・なんだいこりゃ・・・。」

 極めつけはタクトのスキル「貴方の人生に幸多からん事を」だ。こんなおかしな名前のスキルは全く前例がな

い。スキル名からだけでは詳細はわからないが、何かとんでもない可能性を秘めた、使いようによっては極めて

恐ろしいものであることだけはわかった。

「もしかしたら、タクト、あの子はこの世界を変える、そんな可能性を秘めた子なのかもしれないね・・・。」


 そうつぶやいたリンネは、タクトたちが先ほどまでいた空間をしばらく見続けていたのだった。




「おーい、タクト! 遅いぞ、待ちくたびれちまったぜ!」

 3人で慌てて南門に走りこむと、すでに他の6人が手持無沙汰に待機しているところだった。ゼオルが業者台に座っている。まずは彼が馬車を操るようだ。

「すまない! 遅くなった。それじゃあ、早速出発しよう!」

 6人へ頭を下げ、キュウマとキョウコを荷台に乗せる。俺はいつも通り、馬車の後方へ移動した。


「行こう! モレジオの町へ!」



 こうして、俺たちは再び馬車を進めはじめた。

 目的地は冒険者の町モレジオである。


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