第91話 指導書の添削
クトリアとカトレインは、主人公が彼女達が想定していたような男性では無いと気が付き、関係が少し変わって来た様です。
良い方向に向かってくれると良いのですが。
朝起きて横を見ると、クトリアはもう居ない。
昨晩の様子から、少しは打ち解けてくれたと思っていたのだけど。
トイレに行こうと居間を通ると、台所の二人から「おはようございます」との挨拶が。
おお。
二人とも、少しは態度が変わったようだ。
彼女達の造ってくれた根菜のスープと買ってきたパンでの朝食を終えて、今日の事を相談する。
昨日の夜はスキル上げではなく買ってきた本の訂正をしていた。
と言うか、殆ど削除だったけどね。
少知や各種スキルに教わりながら、間違った記載に二重線を引いて読み直すと、一般的な鍛え方になった。
同じ内容の訓練ばかりだと集中して続けるのは難しくなるだろうし、同じ事を行うだけでは取得するまでの期間が長くなるスキルもあるから様々な方法を書いてあるのだけど、その一部を紹介すると。
例えば、察知や探索系スキルを得る為には、目隠しや耳栓をして生活をする。
その時に、周りから発するものを受ける意識していると察知スキルを手に入れられる。
また、熱、気配、魔力、危機、悪意と言ったモノを意識しながら読み取る様に意識すると探索系のスキルが。
体の中や空間に満ちている魔力を意識すると魔力操作や魔力探索スキルが。
そんなのどう意識するのかと言うと、目隠しをした状態で、周りの人に魔法を使ってもらうとか、魔力で灯や火をともす魔石灯や魔石コンロをつけておいて、それの位置を掴もうとする、又はそこから出るモノを感じ取ろうとする、と言った鍛え方だ。
また、薬草師への転職条件を得るには、主たる薬草類の種類や薬効や、その生態を知る事が必要だ。
本に、それらについて基本的な事や情報が載っているので、それを勉強しながら採取に挑戦すれば良いのだろう。
ちなみに、食用の草についても勉強し採取しているのでも薬草師になれた事例があるそうだ。
なので、田舎の方に行くと植物の採取をしている冒険者が多いので、薬草師になれる人はかなり多いそうだ。
なお、この本は殆ど本当の事が書いてあった。
実際の薬草類については、嘘は書けないからかもしれない。
いや。
薬草類に関わる人は多いから、嘘を書くとバレルから書けないのかも。
採掘士の場合は、鉱石の種類や採掘の仕方。
鍛造や鍛冶のやり方、注意点などを勉強する。
まあ、どれも実際に行う事も重要だけどね。
また、生活魔法があれば、何が出来てどれだけ生活が良くなるかを意識し家事をしていれば生活魔法が。
火や土について、毎日意識しながら生活しそれについての理解を深め、且つそれを魔力によってどうすべきか意識していれば火魔法や土魔法が。
『光とは』『闇とは』と意識し、その有難さや怖さを意識し、自分がどう使いたいかを意識すると、光魔法や闇魔法が。
と言った感じの内容なのだけど、嘘が多い多い。
いや。嘘でも無いのかな。
例えば、闇魔法は真っ暗闇の中で生活する方法が紹介されている。
でも、それで闇魔法って手に入るのだろうか。
手に入るのって暗視スキルだと思うけど。
まあ、闇について深く考察するのは手に入れる為の力になるらしいから、闇の中で生活していれば闇について考えるのかな。
う~ん。
魔法系のスキルは、職業に就き一定のレベルになる事やスキル追加の宝珠で得るパターンが殆どで、修行で取得する人なんて殆ど居ない、と言うのもあるからな。
闇魔法の様に、今現在スキルを持っておらず、スキルに正解を聞けない取得の為の訓練に付いては、小知に人族ではそう認識されている、闇魔法を取得した人が弟子にどう指導しているか程度の確認しか出来ないから、拘ってもしょうがないんだけどね。
そんな事も考えつつ、少知スキルや他のスキルに教わりながら、怪しい内容を削除すると、本の内容が5分の1とかになる物もあった。
まあ、写本は大分楽になったけど。
昨日買っておいた羽ペンとインク、薬師技スキルで造った丈夫な紙を束ねたノートを二人に渡し、写本するように言っておく。
と言うか、戦いの世界なのに字を読んだり書いたりできるのか。
この世界は、一つの言語に統一されている。
大陸が7つもあり、何万キロも離れている場所もあるのに、統一できるかと言うと、世界の理を使っているようだ。
なので、最低限の言語能力については、生まれて数年で自然と習得するらしい。
それも教えなくても文字まで。
そこまでしないと、人間だけでなく、亜人や獣人まで居る世界全体で言語を一つに統一なんて出来ないのかもしれない。
では、何故言語を統一する必要があるのか。
人が知りえる事では無いよな、と少知スキルに聞いてみたけど、やっぱり返事は無かった。
多分だけど、魔物と殺し合う世界で各地域が分断気味なのに、言語が統一されていないと言う弊害があると、人族が滅びかねないからかな、と推測してみたのだけど、どうなんだろうね。
そんな事を考えていると、彼女達も問題なく写本とスキルの取得の為の訓練に入った。
まずは、気配や魔力に対する感知能力を上げてもらうのが良さそうだと、1人が目隠しをして30分から1時間程度の気配、魔力、熱等の感知の訓練。
もう一人が、写本をしながら、偶に目隠しをしている人の為に、灯をつけた魔石灯や魔石コンロを移動させ、ある程度の時間で写本と感知の訓練を交代すると言う形で訓練をする事とした。
それで俺はと言うと、今日も走って大き目の都市まで行くか、この都市の近くでレベル上げをするか、かな。
迷ったのだけど、都市間の移動時に盗賊に襲われると言う話を思い出した。
これだけ魔物が溢れる世界で、街道沿いとは言え通る人を待ち伏せできるだけの能力があると言う事は、俺より強い可能性も高い。
隠れて行って見つからなければ良いが、所詮俺が持っているスキルは、ユニーク(特別)でもアルティメット(究極)でも無いノーマル(通常の)スキル。
それに、大き目の都市には俺が隠している事を見破る事が可能な人はそれなりに居るらしい。
なので、更に指導書を探しに行きたかったのだけど、もう少しスキルを鍛えてからにする事にした。
クトリアとカトレインの新たな訓練が始まるようです。
その間に、盗賊と言う不安要素に対応できるよう、主人公は自分を鍛えるようです。




