第90話 全てが欲しい
強めの魔牙大狼と戦い、得た経験値で魔物使いになったようです。
でも、いきなり従魔を連れて帰ったのでは彼女達に異常な力持ちだとバレルと考え、とりあえず魔物使いの力は封印する様です。
Cランクの魔物である魔牙大狼を倒し、その経験値で魔物使いに転職。
これで従魔が得られるなら戦力アップだけど、その辺の知識を全然得ていない。
多分、スキルに教われるのだろうが、今は必要ないかな。
更に、お金稼ぎと経験値稼ぎの為に、魔大狼3匹,魔狼43匹、魔大鹿7匹、魔鹿33匹、魔イノシシ8匹、魔熊5匹、魔豚22匹を倒しながら帰る。
ちなみに、魔物使い技は従魔を探すかどうか聞いて来たが、今は必要ないと機能をOFFにした。
従魔なんて連れて帰ったら、様々な力を持ち過ぎだと、更に転生者だろうと疑われるだろうから。
そんな事を考えながら、魔物を倒していると更にもう一度レベル上限になれたので、今度は錬金術師に転職してみる。
正直、錬金術師技スキルを使う為の準備が出来ていない上に直接強くなれる訳でもない職業だから、まだ早いとも思うのだけど。
本当なら、4級職の魔法薬の作れる魔法薬師や戦闘の為に魔道戦闘士になっておきたい。
しかし、レベル上限が30から40となり、転職までに必要な経験値が2556万から14億7431万に増える。
俺は、経験値増加スキルのお陰で、それ程の期間を必要としないだろうけど、やはり簡単に転職出来なくなるのも不安だ。
4級職は、もっと経験値増加スキルのレベルが上がってから。
そう諦め、とりあえず3級職で一通りレベル上限になっておく方向で行く事に。
帰り道での戦利品は、魔大狼の魔石D3個、魔狼の魔石E43個、魔大狼の牙6個、魔大狼の皮3枚、魔狼の牙86、魔狼の皮43、魔大鹿の魔石E7個、魔鹿の魔石F33個、魔大鹿の肉28個、魔鹿の肉132個、魔イノシシの魔石F8個、魔イノシシの肉32個、魔熊の魔石D5個、魔熊の皮5枚、魔豚の魔石F22個、魔豚の肉88個。
魔蜂の集団も幾つかあったが、街道から離れていたので討伐には行かなかった。
また、魔鹿は角や皮が戦利品にならないとかガッカリしつつ、戦利品処理を終える。
さて、都市が見えてきた。
無事に往復出来た様だ。
それなりの数の魔物を倒したから、宝箱に期待したのだけど、それはダメだったな。
やっぱり、ダンジョンへ行くかCランク以上の魔物を大量に倒す必要がありそうだ。
変装を解き、ステータスウィンドウの偽装状況を確認し、門でのチェックを終えて都市に入る。
ドアを開けて借りている家に入ると、ホッとした表情のクトリアとカトレインが迎えてくれる。
『二人で楽しんだら』と言っておいたのだけど、そんな感じでもないのかな。
黙って、クトリアを抱きしめてキスをし、カトレインにも同じ事をする。
「で、今日二人はどうだったの?」と聞くと微妙な顔をされる。
ああ。俺の成果の方が報告すべき内容か。
まず、彼女達に白金貨1枚ずつ渡す。
すると「えっと。どういう事でしょう」と、クトリアが確認してくる。
「ああ。途中で魔牛を倒しまくって売ったんだ。
だから、この先の不公平分の先払いかな」
と言うと、困った感じか。
「いや。全体の10分の1も渡していないから、気にしなくていいよ」と言うと、二人とも仕舞い込んだ。
お金は大切だからね。
そう言えば、カトレインが侮辱されたみたいに怒ってくるかと思ったけど、静かだったな。
「後の成果は、これだね」
そう言って、『探索系スキルを手に入れるには』、『察知スキル入門』、『魔法使い入門』、『火魔法について』、『薬草と薬草師』、『採掘士と鍛冶』、『土魔法とその応用』、『光魔法と闇魔法』、『時空間魔法とその運用』、『生活魔法とその仕事』、『魔力操作とその応用』の11冊を置くと、興味津々の様だ。
その様子を見て、苦労した甲斐があったかな、とホッとしつつ、
「この内容を俺がチェックして、訂正した方が良さそうなら訂正して、二人に写本を御願いする事になる」
と、これからの予定を伝えると。
「写本ですか?」と、カトレインが不思議そうに聞いて来る。
「ああ。書いて覚えてもらって、自分が書いた分は自分達の資産として持っておいてもらう」
「あっ。そう言う事なのですね」とカトレインがしおらしい。
俺の居ない間に何かあったのだろうか。
「写本と、スキルや転職条件を得る為の訓練と、職業経験値を得る為の狩り。
写本が終わるまでは、この3つが柱になるけど、どうバランスを取る?」
そう聞くと、二人で顔を見合わせて、お任せしますと言われてしまう。
「俺が決めていいの?」
「はい」と二人に声を合わせて言われてしまう。
「なら、写本と訓練が優先。
スキルを得られれば、見える世界が大きく変わるくらいの差がある事もあるから。
だから、写本と訓練が2日に対し狩りが1日とかかな。
まあ、写本が終われば1対1とか1対2で良いのだろうけど」
そう言うと、それでお願いしますと二人が言ってくる。
う~ん。どういう心境の変化だろう。
今晩、刺されたりして。
そんな事を考えながら、二人が造ってくれたスープと肉野菜炒めと買ってきたパンの夕食を終えて、心ウキウキ、夜のお勤めだ。
買ってきた手引書の添削をキリの良い処で中断して居間に行くと、クトリアが待っている。
彼女の手を引き、寝室に行ってベッドに座らせ、その横に座る。
そして「どうしたの?」と、疑問をぶつけてみる。
でも「何が、ですか?」と、彼女には伝わらない。
「二人の雰囲気が変わったから」
そう素直に聞くと。
「……。虚勢を張るのは止めにしようって」と何かを諦めたように言うクトリア。
「虚勢?」
「幾ら背伸びをしたところで、貴方に寄生して助けてもらうだけですから」
「寄生と言うか、共同生活者、運命共同体として助け合うんじゃないの?」
「そんな奇麗ごとには、もう疲れました」と俯き苦笑しながら言ってくるけど。
「……。いや。疲れたと言われてもな」
「貴方の善意にすがるしかないのに、虚勢を張っていても惨めなだけだって」と少し悲しそうに言う。
「いや。君達の全てを手に入れる為にやっている事だから、善意でも何でもないけどね」
「でも、奴隷になるのを強制しないのですよね」と、こちらを伺いながら聞いて来る。
「強制なんて出来ないでしょ」
「普通は、拷問したり追い込んだりして奴隷にするのですけど」
と、俺にその気がない事を一応確認したいようで、そう言ってくるが。
「それでは、君達の心は俺のモノではないでしょ」と、拷問なんてする気はないと言うと。
「そう言う事なんですか?」
「そうだよ。俺は、クトリアの全てが欲しいのだから」
そう言うと、複雑そうに。
でも微妙に微笑みながら黙り込むクトリア。
しばらく、彼女が何か言わないかと待っていたのだけど、何も言わないのでキスから始める。
今迄は、儚そうな表情だったけど、少しは明るい表情になってくれたかな。
全てが欲しい。
主人公は、欲張りなのでしょう。
彼女達は、多分手に入らない。
そう思っているので、思いやりつつ攻めた発言をしていると言うのもあるのでしょうけど。




