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第87話 ルルバード商会と魔牛の肉

 ニクロス市と言う大きな都市の比較的良心的な商会であるルルバード商会に戦利品の魔牛の肉を売る事にしたのですが、どうも値段が安すぎる。

 それに気が付いたので、売るのを止める方向で進めようとしたようですが。

 ルルバード商会の買取のコーナーに、サンプルとして魔牛の肉1頭分を出してみたのだけど。


 1頭分。


 つまり、足毎に切り分けられた肉の塊4個の魔牛の肉で10万GAUと冒険者ギルドと金額が大して変わらず売るのを止める事にした。


 だって、戦利品処理スキルで処理し、料理人スキルで熟成・長期保存可能にした魔牛の肉なのに。


 冒険者としての査定も入るからと買取価格は安いとされている冒険者ギルドでも、一個2万GAUだから一頭分で8万GAUになる。


 その上、『血抜きをもって徹底すると値段が上がりますよ』とも言われているのに、なんで料理スキルまで使って値段がここまで変わらないんだよ。


 そう切れそうになっていると、


 「ちょっと待ってください。

  この値段では不服と言う事ですか」


 と、買取担当の狼人族の男性に言われる。


 「ああ。これなら冒険者ギルドへ売った方がました。

  いや。数が捌けないとしても、市場へ行って自分で売った方がもっと良いか」


 「ギルドで売るくらいなら、こちらに売ってもらっても」


 そう不満げに言われるが。


 「ギルドなら冒険者としての査定が入る。

  こんな所で売る意味はない」


 と断ったのだけど。


 「しかし、大量にあると言う事ですから、思い通りの値段では売れないと思いますが」


 と、文句を言ってくる感じなので、俺もカチンと来てしまい。


 「なる程。ハッキリ言ってお前らみたいな商人に儲けさせる気はない」


 そう言って、外に出ようとすると。


 「分かりました。

  私が対応しましょう」


 と、それなりの年配の人間が出てきた。


 それまで対応していた買取りカウンターの人がお辞儀をしたところを見ると、この店又は商会の偉い人なのだろう。


 でも「いや。ここは信頼できないから、よそに行く」と無視しようとすると。


 「何処に行っても同じだと思いますが」


 「ああ。この都市ではね。

  でも、ある程度力があれば、都市間の移動なんてどうとでもなる」


 そう詐術スキルが教えてくれる通りに告げると。


 「しかし、ここから移動となりますと、盗賊が街道沿いに出ますが」


 と、こちらを心配していると言う感じで言ってくる。


 演技が上手そう。


 そう感じながら「そうなんだ。それは良い情報だね」と詐術スキルに教わりながら告げると。


 「ど。どういう意味でございますか?」


 と、少し驚いた感じになる。


 「物資輸送が滞っていれば高く売れるし、略奪している連中は殺し放題だから、そう言う仕事をしている仲間を護衛につければ、上前をはねている連中から上前をはねられるから効率が良いんだよね」


 そう言うと顔を引きつらせながら、


 「そ。そう言う伝手がございますのですか」と聞いて来る。


 まさか、盗賊に襲わせているんじゃないのかと疑い、表情分析スキルに聞いてみたが、そう言う驚きではないようだ。


 だけど、ここに売る気にはならない。


 なので「無ければ、大量に食料の販売とか出来る訳が無いだろう」


 そう少し喧嘩を売る感じで詐術スキルが教えてくれた言葉を吐き捨てて、買い取りの為の部屋から出ようとすると。


 「分かりました。今までの倍額出しましょう」


 と態度が変わる。


 だけど、それでも安く買いたたいていると感じたので、


 「倍ね。

  本当に価値が分かっているの?」


 と、『こちらも素人ではない』と虚勢を張って値段交渉をする事に。


 「価値と申されますと」


 「これは、戦利品処理スキルが持っている人が処理し、料理スキルを持っている者が熟成させ保存の為の処置までしてある魔牛の肉。

  普通に売っている魔牛の肉とは全然違う」


 「それは、鑑定で分かっておりますが」


 と、上品に少し困惑気味に聞いて来る。


 「戦利品処理スキルや料理スキルは、何人かが手分けして作業したから、物によって価値が違う。

  それなのに一個見て、分かった気になっているような商売人に価値が分かるとも思えないけど」


 「そ。それは」


 と、侮辱ともとれる言葉を言ったのだけど、怒る様子も無く戸惑った感じの偉い人。


 「所詮、どう転んでも、自分達が大きな利益が出る程度の値段なんだろう」


 と、俺が詐術スキルから教わったこちらの予想を言うと。


 「わ。分かりました。

  全て査定させてもらい、適正価格を提示させていただいても、よろしいでしょうか?」


 と、腹を決めた感じで言って来る。


 「100匹分もの魔牛の肉を査定できるだけの人員と場所があるのかね」


 「ございます。

  保存しておく場所も」


 「ふ~ん」と言って、しばらく待たせてもらう事に。


 なので、別の倉庫らしき建屋に移動し、100匹分の魔牛の熟成肉を置き査定を待つ。


 まあ、盗みはしないだろうと思いつつも監視もしながら、出されたお茶を飲みつつ待っていると、さっきの偉い人が来てその場にもあった商談用のスペースで価格について、また交渉だ。


 「全て鑑定させてもらいました。

  スキルと魔力を使った殺菌処理などの保存の為の処置も低レベルから中レベルの料理スキルで丁寧にされていますし、最良の状態で1月以上も美味しい状態との事ですから、これでいかがでしょうか」


 と100匹分の肉について鑑定結果の詳細が書かれている紙に値段が提示されている。


 前の世界では確か牛は1頭数十万円から数千万円くらいだったかな。


 まあ、あれは食肉用に飼育された牛だし違う点も多いだろうけど、魔牛の肉も硬さや脂の乗りとか野生の獣って感じでもないし微妙ではある。


 でも、この世界ではありがたがられる肉と言う事だし、前の世界の牛より一回りから二回り位大きいんだよね。


 だから、肉の量も多いだろう。


 しかも、戦利品処理で完全に血抜き等の処理を終え、料理スキルで熟成をした上に美味しい状態が長くなるように魔力を使った長期保存処置までしている。


 とは言え、料理スキルは今回初めて鍛えたと言える程度のレベルでしかなかったし、まだまだ完璧ではないか。


 それでも、スキルによる処理無しの肉よりは全然価値は高い筈。


 だけど、まあ、こんなモノなのかな。


 1頭30万GAU。


 100頭分だから3000万GAU。


 約3億円か。

 約3億円の収入になりそうですが、主人公はまだ不服の様です。

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