第81話 戦利品処理の研修
魔石しか買い取ってもらえない魔物を、そのまま買い取ってもらうのでは処理費を差し引かれる分損しているのでは。
そう考えて、戦利品処理の研修を受けるようですが。
朝、二人の作ってくれた食事を食べている。
昨晩の様子からクトリアの態度が変わるかと思ったが、起きた時にはもう居なかったし、余計に余所余所しくなった様な。
まあ、まだ別れるまでには何十日以上あるから、それまで努力するか。
でも、もし転生者の俺が彼女達と本気の相思相愛になったら、どうなるのだろう。
3人で隠れながら強くなって行けばいいのか。
……。
どうなるか分からない事を考えても無駄か。
食事を終えて、一休みしてから3人で冒険者ギルドへ。
戦利品となった魔物の処理方法を学ぶためだ。
受付で確認してから、いつも行く倉庫へ。
すると、怖めのオッサンが居た。
「今日、講師をするババリーだ」
怖い形相と大きな声にビビリ、思わず鑑定をしてしまったのだが、狼人族のようだ。
クトリアとカトレインは、ババリーの容姿と声の大きさに、少し腰が引けた様で俺の後ろに居る。
「よろしくお願いします」と挨拶をすると。
「ああ。新人か」と、こちらの様子を確認して来た。
「はい。いつも解体が出来る人に頼んでいたので」
「ああ。戦利品処理スキルを持っている奴がいれば、あまり必要ないからな」
と、自分の仕事を否定するような事を言ってくるので。
「いえ。皮の剥ぎ取りの上手下手で、査定も変わりますよね」
と、フォローの意味も込めて確認したのだけど。
「ああ。だが、上手には一朝一夕にはなれない」
そう厳しめの目つきで言われた。
なので「ええ。でも、魔物の死骸を運ぶのは大変ですし、一回一回都市に戻ってくるわけにも行かないので」と、こちらの事情を話すと。
「ああ。とりあえず、最低限の事は教える。
必要なら、また教習を受ける依頼をしてくれ」
と、納得した感じになってくれた。
「では始めるぞ」との合図から約4時間の講義と実習。
それで学んだ事は、魔石は心臓の位置にある事が多いが絶対ではない。
基本、魔物1匹につき魔石は1個。
魔石が無いと言った例外もあるので、注意が必要だそうだ。
解体時には、まず血抜きをする。
血に毒となる物が含まれている魔物がいる上に、触れるだけで影響のある毒もあるからだ。
当然、目になんか入ると大変だ。
なので、出来るだけ血抜きをして、血を浴びない様に解体するのが基本。
そう言えばアインさん達も、戦士技や剣技等も、返り血には気を付けろよと指導して来たか。
まあ、血を浴びたとしても即死するような魔物は殆ど居ないらしいので、それは事前にチェックしておく。
そして、血はすぐに洗い流し、回復魔法の治療や魔生薬による治療を行うべきとの指導もあった。
解体時は手を保護する為に防水処理をした革の長手袋をすべきと、講習の代金に含まれていた長手袋を受け取って、講習用にギルドが用意したゴブリン・魔イノシシを解体する。
飢えた場合でも、血に含まれる毒の件があるので魔物の肉はあまり食べない方が良いそうだ。
だけど、飢えて死にそうな場合は、出来るだけ血抜きして少量及び数回程度なら大丈夫だろうけど、絶対ではないとも教わった。
例外は、魔イノシシ系、魔豚系、魔牛系、魔鹿、魔鶏系といった限られた魔物の肉で、それは血抜きが十分でなくても問題が無いそうだ。
また、魔物の皮は出来るだけ傷付けずに剥ぎ取らないと値段が下がる。
魔石を取り除いた魔物の死骸は、出来るだけ燃やすか、粉々にするのがマナーだそうだ。
魔石無しのゾンビ魔物になる事があるので、かなり迷惑らしい。
最後に、足の数で区分され、魔物のランクで順番になっている、解体の為の冊子をもらった。
どこに魔石があるか、何が売れるか、どう剥ぎ取るべきか等記載してあって、これを入手できただけでも来たかいがあるのだろう。
他にも、解体時に手を保護する革の長手袋3セットと解体・剥ぎ取りようの小刀と研ぎ石。
これらを受け取り、講習を終えた。
講習後は、いつもの様に受付でオーク12匹の代金を受け取り、裏の倉庫に行って、魔トカゲ、魔狼18匹、ゴブリン12匹、魔イノシシ1匹の売却を依頼。
ちゃんと、個人情報を守る為に先ほどの講師は居なくなっていた。
まあ、その辺で見ている可能性もあるけどね。
と探索してみたら、ちゃんと離れた所に居たけど。
ちなみにオークは、魔石だけで1個250GAU
12個の買取で3000GAUだ。
まあ、3万円相当だから、1日一人1万円の収入だから、悪くは無いのかな。
宿に帰ってから、二人に分配したけど、戦う為に必要な武具の購入資金や毒などに対する薬の準備とか考えると微妙な金額かな。
まあ、明日はそれなりの金額になるだろう。
魔石だけしか買い取ってもらえない低ランクの魔物の討伐では、やはりお金にならない様ですね。
まあ、オークなら事前に討伐依頼さえ受けておけば、それなりのお金になる筈なのですが、そう言った依頼は取り合いになるので、朝遅く行く主人公では受けられないので。




