第73話 借家
主人公は、クトリアとの一線を越えてしまいました。
もう、彼女達が自立出来るまで彼女達を鍛えなければ、約束を違えた事になるでしょう。
約束を果たす為には時間が掛かる、と言う事で一緒に住める家を借りるようです。
次の日、ベッドで目覚めた後、昨日の夜を思い出す。
ああ。
溜まっていた上に、この世界で初めて、だもんな。
前世の時は回避しした失敗を、この世界でしてしまうとは。
性技スキルを使って制御すればよかったのだけど、最初だからとOFFにしたら性欲が開放されて自分の制御が出来ないと言う。
黒歴史になりそうだけど、向こうも初めてだったしギリギリ大丈夫だろう、と思いたいが……。
恥ずかしい。
クトリアは、内緒にしてくれるだろうか。
彼女も恥ずかしそうに声を上げていた事もあったし、お互い様だよね。
なんて横を見ても、クトリアはもうベッドには居ない。
早朝に出て行ってしまった。
朝、俺とイチャイチャしてくれる感じではない様だ。
まあ、それもしょうがないと言うか、現状当然なんだろうな。
ベッド等の処理をして、居間に居るクトリアとカトレインを確認し、顔を洗いに行ってから二人の居間に戻る。
そこで「昨日は、自分中心でごめん」とクトリアに謝っておく。
「いえ」
機械的に、目も合わさずクトリアが返事をしてくる。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
「何をしたのですか」
と、カトレインが少し挙動不審の上に怒りながら聞いて来る。
「もっと優しくしたかったのに、久しぶりだったから下手になっていた上に自己中心的って感じだったんだ」
そう自分の情けなかった部分を隠しながら言うと、カトレインはどう考えていいか分からない感じに。
彼女も経験が無さそうか。
しかし、今の俺は16歳なのに、久しぶりと言って良かったのだろうか。
とりあえず、自分の事は置いておいて、彼女を気遣っておく事に。
「人によって違うらしいけど、痛みは大丈夫?」
「食事に行きましょう」と、澄ました顔のクトリア。
う~ん。デリカシーが無いとは思うけど、興奮してやり過ぎていなかったかも心配だし、聞かずにはいられなかったけど大丈夫そうかな。
「ああ。問題ないならそうしよう」
朝食を終え、部屋の片づけを終えてから宿を引き払い、冒険者ギルドへ。
冒険者用の貸家を借りる為に。
予算は、特に指定しなかったのだけど、3~5人と言う人数と風呂台所付きという条件で選んでくれた3軒ほどの候補を見て、月2万Gの小さめの家を借りる事に。
宿の金額と比べると、思っていたよりは安かったかな。
この世界でも、家は人が住まないと傷むとか、持っていても税金だけが掛かるのでと言う理由などで、借家は比較的安いのかもしれない。
それとも、魔物を狩ってくれる冒険者を出来るだけ都市に留めたいから、冒険者ギルドが貸す借家は安いとかも有るのかも。
前世だと借家で月20万円払えば、田舎だとかなりの家に住めるだろうから、良い宿の方の値段が異常なのかな。
そう言えば、保証金で10万Gも冒険者ギルドに預ける事になったが、冒険者用と言う事は暴れて壊す人も居るから、そんなモノなのだろうと思ったのだけど。
でも、借りてた冒険者が死んだら、その保証金はどうなるのだろう。
ひょっとして、だから賃借料が安いのか。
そんな裏事情の推測もしながら、冒険者ギルドで借家の契約をしカギを受け取った。
石造りの壁に木の屋根に煙突。
木のドアに木の窓。
風呂と台所は付いているし、トイレも洋式タイプで下水道に繋がっているからか、良い方の物件だとの事。
下水道は、疫病対策とかでも必要だと言うのは、この世界でも同じなのかな。
残念ながら、上水道も電気もガスも無いけどね。
つまり、トイレの水は自分で汲んできてタンクに貯めておく必要がある。
料理の水も、風呂の水も井戸から汲んでくる必要があるけど、まあ、前世よりは力もスタミナもあるから、重労働とは言えないのかな。
幸い、井戸には手押しポンプが付いているので、江戸時代みたいに桶でくみ上げる必要はない。
なお、いつ死ぬか分からない・いつ他の都市に移動するか分からない冒険者用なので、家具は一通りついているのだそうだ。
敷地内にある井戸もちゃんと管理されていて今でも奇麗な水が汲めるようだけど、一応大量に水を汲み出し井戸内の水を入れ替えてから、鑑定もしておく。
まあ、鑑定結果に変な記述はなかったので煮沸してから飲めば大丈夫なのかな。
借りた家に荷物を置いて、ランプとその油、魔石灯、魔石コンロ、薪、石鹸の様な消耗品や食料・調味料・食器、3人の寝具等を買い、住む準備を終えると、もう14時を過ぎていた。
「さて。どうする?」
と、これからの事を相談すると。
「貴方に体を許す前に、貴方の実力が見たいのですけど」
そうカトレインは俺を睨み付けながら言ってきた。
「なるほどね。
じゃあ、二人で行ってくるか」
と配慮をしたのだけど。
「私も行きます」とクトリアが。
「いや。大丈夫なの?」
そう本気で心配していったのだけど。
「大丈夫です」と譲りそうにない。
すると「私が癒します」とカトレインが信者の祈願スキルを使い始める。
しばらくたつと、彼女達が薄い光に包まれ、回復された事が分かる。
「あ。大分痛みはなくなりました。
ありがとう」
とクトリアがカトレインにお礼を言っている。
少し気になったので「なんて祈願したの?」とカトレインに聞くと。
「彼女の痛みを癒したまえ。と」
「なるほど。この場合は、それで良いのか」
スキルに聞けばよかったのか、とも思ったので祈願スキルに確認すると、時間がたっているし、はじめてに戻ったりもしないようだ。
彼女の痛みを癒したまえ、と念じながらクトリアに手をかざす。
8度目で成功した。
「あ!」とカトレインの方が驚いた感じなので。
「ん。どうしたの?」と思わず聞くと。
「私のより光が強い」
と、少し驚いた感じで言われるけど、それがどう驚くことになるのかが分からないので、
「そうなんだ。ステータスの違いかな?」
と、当たり障りのない事を言ったのだけど何か言いたそうにしているカトレイン。
そんなに違ったのだろうか。
でも気にしてもしょうがないので、
「で、クトリアはどうなの?」と聞くと。
「痛みはなくなりました」
そう言う彼女に表情分析スキルを使ったのだけど、本当に大丈夫そうだ。
「そっか。なら行こうか。
その前にパーティ申請だな」
と、ステータスウィンドウを開きパーティ欄を注視すると、仲間にする人を選ぶモードに。
二人を指定し、二人が了承する事でパーティになった。
ステータスウィンドウを使い、パーティを組んだようです。
それで、倒した魔物の経験値が共有されることになります。




