第49話 正解とは限らない
朝、宿からの出立前に、幾つか生産を試してみました。
しかし、チェックアウトの時間が来たので次は冒険者ギルドへ。
宿を出て買い物に。
生活魔法の『洗浄』で体も衣服も一瞬で洗えるので、服は一着でも良いのだけどと思いつつ、それでも服は痛むからと最低限の物を買う事に。
朝市で買うのではなく裁縫屋の店に入り、フード付きのローブとマント、肌着上下を1着ずつ買う。
新品なので、1万、1万、5000Gとそれなりにお金が掛かった。
買った後で、裁縫スキルで簡単に造れるかどうか確認すべきだったと気が付いた。
そして、造れるそうです。
ああ、お金が。
悲しくなるので深く考えずに、次は冒険者ギルド。
朝の時間としては遅くなっていたので、冒険者はあまり居ない。
そこで受付に行くと、いつもの猫人族の受付嬢がいる。
「大丈夫だったんですね」
そう心配そうに聞いて来たので。
「え。どうかした?」
と、聞き返すと。
「最近、魔鷹が異常発生して、パーティ人数の少ない冒険者の多くが帰って来なかったので」
と、悲しそうな顔で言って来る。
知り合いも帰って来なかったのだろうか。
ああ。
担当とかも有るのかもしれない。
そんな事も考えつつ、
「ああ。あの音もなく後ろから襲ってくる奴ね」
と、呟くと。
「そうなのですか?」
と驚いた表情で聞いて来る受付嬢。
具体的な襲われ方は知らなかったようだ。
「うん。上空を含め、全方位を常に意識していなければ、気が付いたら魔鷹に頭を潰されていただろうね」
そう告げると、何故か絶句する受付嬢。
そんなに変な事言ったかな。
でも、それには気が付かないふりをして。
「で、人が少なそうだから、また買取りを御願いしたいのだけど」
そう買取りの依頼をすると。
「はい。後ろの倉庫へ」
といつもの調子に戻った。
冒険者が、死んでいなくなるのはいつもの事なのだろう。
アッサリ、気持ちを切り替えた様子を見ながら、後ろの建屋の買取用倉庫に二人で移動。
魔狼14匹、魔牛15頭、魔トカゲ2匹、魔ムカデ1匹を少し多いかなと思いつつ格納箱から出す。
すると、少し驚いた感じで、
「魔牛も倒されていたのですか」
と聞いて来た。
魔牛はEランクで、集団で行動するタイプだから、あまり狩れる人は居ないのかもしれない。
だとすると、あまり大量には持ち込めないなと思いつつ、
「ああ。
肉が高く売れそうだからね」
と期待を込めて言ってみると。
「そうですね。
魔石だけの魔物に比べると、結構な金額になると思います」
との話だから、やっぱり収入が増えそうだ。
魔イノシシの肉より安いという事は無いと思うけど、この辺の事情も知らないし。
「これって何時くらいに査定が終わる?」
「明日の朝になると思います」
「じゃあ、お願いね」
「明日は、研修があるので、お待ちしています」
と念を押される感じで言われたので。
「ああ」と返事をしてから冒険者ギルドから出て、食料関係を買い足しながら狩りに向かう事に。
今の処、一日に一つ3級職の職業を極めている。
これを12日繰り返せば、4級職の職業へ移る事が出来る。
4級職の職業も、当然だけど魅力的な職業が多い。
でも、まずは3級職を極めよう。
今日は西門から出て、街道沿いを進み、そこから南下を始める。
昨日と違うのは、木工や薬師技スキルのレベル上げをする為、草や木を採取している事か。
薬包紙の作成については、森に近づいて木を伐採する必要はなく、その辺に生えている雑草でも目的を達せられるとスキルに聞いたので雑草をイッパイ刈っている。
これで色々造れるのかなと思っていると、薬師技だけでなく裁縫スキルも木の葉や草から繊維を取り出し麻の生地を造れると教えてくれる。
本来、麻として生地に出来る植物は決まっているらしいが、その辺はスキルと魔力の力で変質させるらしい。
なら、魔力で一から造れば良いのにとも思うが、無から物質を大量に生み出すには魔力の必要量が多くなりすぎるそうだ。
なので、量が少なくて済む染料とか油分とか程度なら魔力で生成して革の強化とか出来るらしいのだけど。
う~ん。攻撃魔法等で魔力から生み出される物質とは、違うのかな。
一時的な仮初の物質と、この世界に長くとどまる物質とでは違うのだろうか。
まあ、そう言う世界の理に作られていると言われてしまえば、それまでだけど。
料理スキルも、魔力で出来なくは無いけど、味付けには塩や胡椒や調味料を使うべきだとか言っていたし。
でも、飲料水とかを生活魔法と水魔法で作れるけど、MP(所持し支配している魔力量)が微量で水を作れるのは世界の理がそうなっていると言うのが正解だろうか。
それとも、水作成は空気中の水蒸気や水素と酸素を利用しているからMPの使用量が少ないのだろうか。
前世だと、大気中に水素は殆ど無かったはずだけど。
まあ、その辺の細かい話は置いておいて、今日は木や草などの繊維集め。
でも、十数本とは言え木々が鬱蒼と生えている場所に近づくのは怖いなと思っていると、鑑定スキルが魔大蜘蛛を発見する。
「魔大蜘蛛って、戦利品処理スキルで処理すると、残るのは何?」
【魔大蜘蛛の糸と魔石です】
との少知からの返事。
なら、頭を潰すのが間違いないだろうな、と火矢で頭を破壊。
戦利品処理で、魔大蜘蛛の魔石D、魔大蜘蛛の糸2100メートルを取得。
魔大蜘蛛の居た木々に他の魔物がいないか注意しながら、果物や木、木の葉、草等を大量に取得。
亜空間収納は、便利だ。
なお、巣の近くに凄い数のオークやゴブリンと思われる骨と一緒に錆びた剣などを見つけたが、流石に売れそうにないので、そのままに。
凄い食欲だね。
まあ、蜘蛛なんだから当然だろうけど。
次は、魔毒爆蛙が近くに居たので、火弾を頭に12発同時に打ち込む。
名前の『爆』の字が気になったのだけど、頭部を破壊したので大丈夫と戦利品処理をする為に接近すると爆発。
周りに広がる毒の煙と血と爆発による衝撃波。
衝撃波からは張りっぱなしにしていた魔法障壁が守ってくれたけど、障壁に張り付いた毒によって魔法障壁が溶かされる様に消えた。
周りを確認すると、近くに居たけどGランクなので無視していた魔ウサギが毒を浴びて死んでいる。
毒の霧に包まれる前に、目をつぶり息を止めたのだけど、それでも毒に触れた途端、強力な怖気が襲ってきて倒れ込みそうになる。
慌てて、魔法障壁を張り直し、回復魔法の治療と回復を何度も唱える。
薬師技や回復魔法スキルが教えてくれたけど、かなり強力な毒だ。
自分や周りについても、生活魔法の洗浄や家洗浄で毒を洗い流し、洗浄水を毒ごと消滅させる。
何度も洗浄や家洗浄を唱える事で、周りがやっと正常化する。
こんなの、爆発や毒で下手すれば数十人のパーティでも全滅じゃないか。
頭を潰せば、相手は死んで無害化する。
この世界では、それは当然ではないのか。
先ほど倒した魔大蜘蛛も頭を潰せば大丈夫とか蜘蛛だから大食いとか考えていたけど、それがこの世界では正解とは限らない。
前世の知識も役に立つけど、この世界でも同じとは限らないから、慎重に行動しないと。
似ているようで違う世界。
油断してはならない、と気を引き締めた様ですね。




