第186話 逃げる領主
防衛都市の中心にある要塞化されている館。
そこに一般市民は入れてもらえない様です。
なので、館に入れてもらえない者達は、昔使われていた砦に避難するようです。
「門が開いているぞ」
そう先頭に立って砦に向かっていたお父様が驚いている。
彼が開けたのだろう。
門を見ると、新しい木材で一部補強がされている。
中に入ると、綺麗に掃除されているのも彼の生活魔法だろう。
私はダイスケさんに指示された通り、奥の部屋に行って食料を見つけた。
肉と果物だ。
調味料か穀物が入っていると思われる袋も少しはある。
「お父様。お母様」と両親を呼び、ここを確保して分配してくれとお願いする。
父は、外側の城壁が破られたので手順に従い館の防衛に戻って来たのに、館に入れてもらえなかった知り合いの騎士達にも声を掛けていたので、そちらは大丈夫だろう。
私は、砦を守る城壁の上の見張り用のヤグラの上に立ち、クトリアと一緒にオーク達を警戒する事に。
彼は。
ダイスケさんは戦っているのだろうか。
そう思い、館の方を見ていると父がやって来た。
「食料は大丈夫なのですか?」
「ああ。3000人もいるから、計画的に食べないと直ぐ無くなるだろうが、それでも数日は飢えずに済む。
井戸も不自然なほどきれいだそうだ。
燃料となる薪まであるし。
これは、全部アイツがやったのか」
「そのはずです」
私がそう断言すると、何とも言えないと言う表情の後「あいつは、どこに行った」と訊ねて来る。
「ダイスケさんは、オークキングに目を付けられたそうです」
「なっ」
「近くに居ると、奴を呼び寄せるかもしれないからと館の方に行きました」
「館には入れないだろう」
「多分、ダイスケさんなら入れるのでしょう」
そう言うとしばらく絶句した後「こんな、こんな事になるとは」と父はふさぎ込んでしまった。
「まだ、終わっていません。すべき事をしないと」
彼が言っていた言葉を思い出し、私がそう言うと父は下に降りていった。
きっと、すべき事をしに。
私は、何をすればいいのだろう。
砦の補強をした後、館の方へ向かう。
すると、昨日レベルが上がり最大範囲15キロになった気配探索が、あの領主の存在を感知した。
ここから10キロも離れた所にまで権力者が逃げる為だけの地下道があるんだ。
ああ。
土魔法が高レベルになれば、高さ50メートル、一周数十キロの城壁とか造れるのだから、地下道程度簡単に作れるか。
しかし厄介だな。
城壁の外を警戒していた魔馬に乗ったオーク達は、自分達から数キロ離れた場所に発生した領主たちの反応に気が付いて追い始めた。
あれって、気配探索か何かを持っているという事だ。
機動性が高い部隊は厄介だし、先につぶしに行くか。
しかし、クトリアとカトレインが居る砦から離れすぎるのは怖いか。
門の前に残った部隊だけでも潰そう。
隠形が解除されない程度のスピードで門へと向かう。
ああ。門も既に破壊されている。
残っていたのは、グレーターオーク2匹にハイオーク27匹。
全て魔馬に乗っている。
逃げ出した領主をオーク達が襲い始めてから攻撃した方が良いのだろうか。
出来れば、オークに討伐してもらいたい連中だしね。
領主達はゴーレム馬車やゴーレム馬で移動しているらしく、もう少ししたら気配探索の圏外に出そうだけど、それを追うオーク達の方が早い。
だけど、ここのオークを倒すと、領主を追っているオーク達が追うのを止めて戻ってくる可能性もありそうだ。
しかし、後方では館に居る騎士団等とオーク達との戦闘も始まった。
時間的余裕があるかどうか。
しょうがない。
城壁の上に上りミスリルの杖を装備して、奴らの死角になりそうな頭上に火矢を16発発生させ、先ずはグレーターオークを狙う。
次は、ハイオーク27匹を。
そして暴れ始めた魔馬を29匹、順次火矢で倒していく。
火矢を使うと、オークキングに見られている感じになる。
嫌な感じだけど、全てとりあえず亜空間収納に入れておく。
さて、領主を追っているオーク達は戻って来なさそうだし、中央に戻るか。
主人公は、順調にオーク達の数を減らし始めていますが。
まだ、500匹程度居るオーク達。
どう戦っていくのでしょう。