第185話 放置された砦
主人公は強力な魔法を使いそうなハイオークメイジを暗殺し、4級職の忍びへと転職しました。
これで何とかなると良いのですが。
城壁を破壊した魔法を使ったであろうハイオークメイジ等を暗殺し、その経験値を利用し4級職の忍びへと転職。
火弾をオークの軍団に撃ち込んで最低限のレベル上げを終えた処で、皆の状況が気になって来たので調べてみる事に。
ゆっくりと軍団で動いているオーク達と距離を取りながら気配探索によると、この都市の住民は中央の館に集まっている。
外側の城壁が壊れた場合は、そうすると決められていたみたいだし。
しかし、館を守る城壁の門が閉められていて、皆門の前で立ち往生をしている。
どうしたものか。
オーク達は、外側の城壁近くにある農村地帯を通り、中央の館の近くにある市街地に近づいて来ている。
市街地と言っても空き家が多いのだけど。
市街地でゲリラ戦を仕掛けるにしても、状況が知りたいか。
上がったステータスを使い、クトリアとカトレインの元に向かう事に。
彼女達は比較的避難が早かったはずだけど、子供達も居るからか、門の前に集まっている3000人程の人達のその外側に居た。
カトレイン達に近づき「状況は如何なの?」と聞くと、首を横に振られる。
少し子供達から離れて、状況を確認する事に。
「父が門を空けろと叫んでも、誰も反応してくれません」と、カトレインは悲しそうな顔で俺に告げて来る。
領主が酷く怯えた状態だった事を気配探索で知っている俺は「だろうね」と軽く返事をすると。
「私達はオークのエサになれって事なんですよね」と、カトレインは俯きながら悲しそうに。
「と言う事なんだろうね。まあ、必死で戦って、少しでも数を減らしてくれって感じかな」と、館の中に居る連中の考えを予想しながら告げると、カトレインは黙り込んでしまった。
そんなカトレインを慰めもせず俺はどうすべきか考えていると、父親の方が近づいて来る。
それを無視して「他に避難できる場所は無いの?」とカトレインに聞くと。
「昔は、簡単な砦みたいなものも幾つかあったのですけど、オーガ達に壊されてしまったんです」
「造り直さなかったんだ」
「オーガに対しては役に立たなかったので、館に防衛力を集中した上で避難するって事になったのですけど。
あ。そう言えば、まだ壊れていない砦が残っています」と、カトレインの表情に希望がさす。
その事に安堵しつつも「使えるの?」と聞くと、カトレインは「分かりません。お父様」と父親の方に向き直し確認する。
「閉鎖して5年だから使えると思う。
皆をそちらに誘導しよう。
ここはダメだ」
そう苦虫をかみ砕いたような表情で父親が言うけど、確認だけする事に。
「微妙な判断ですけどね」
「微妙?」とカトレインの父親は意味が分からないと言う感じだから、説明する。
「さっきから、領主の気配を探しているんですけど無いんですよ。
館の中に。
地下通路とか使って逃げたんじゃないかなと。
あれが居なくなれば、この中に家族が居る者がここを空けてくれるかも」
そう俺の予想を言ってみたのだけど。
「いや。館の中に居る騎士達は、領主がよそから連れてきた者が殆どだ。
前の領主様から仕えて来た者は諫言をして解雇されたり他の都市に移動させられたり、外の城壁の警護に回っていると聞いている。
だから、館の中に居る実力者の家族は、この中には居ない」
と、カトレインの父親は吐き捨てる様に状況を説明してくれた。
「となると、ここはダメか」
俺がそう呟くと父親は覚悟を決めた様だ。
「皆、聞いてくれ」と大声を出して門の前の人達に避難を呼びかけ始めるカトレインの父親。
「カトレイン。砦の場所はどこ?」
「えっ。館の向こう側にあります」
「そっか。今から行って使えるか確認して使えるなら使えるようにしてくる。
食料も多少置いておくから、上手く分配して」
「えっ。ダイスケさんは」
「俺は、オークキングに目を付けられた感じだから、アイツらをおびき寄せる為に、この辺に居た方が良い」
「そ。そんな」
「少なくとも、奴の1~2キロ圏内に居ると奴に見られている感じがあるから、それが無い今の内に準備してくるから。
クトリアも上手くやってね」
「はい」
その返事を聞いて、館の北側の砦に向かう。
ああ。大きな建築物だから、流石に直ぐに分かるな。
領主の館に比べると城壁の高さは低いし薄そうだけど、オーク程度なら何とかなるかもしれない。
門に行くと、外から釘を打ち付けて開かないようにしている。
その打ち付けてある木を慎重に剣で切り、門を開けて中に入る。
門の木が劣化しているけど、まだ大丈夫か。
城壁については基本的に高レベルの土魔法で作ったセメント状の砦だから、5年程度では大丈夫そうだけど。
中に入ると、流石に埃が酷い。
でも、家洗浄を使い要所要所を奇麗にし、井戸も家洗浄と洗浄で奇麗にしておく。
本当なら、こんな事にMPを使うべきではないのだろうけど。
井戸に設置されたままの手押しポンプは、差し水さえすれば使えるようだから、これも洗浄し使える事を確認する。
まあ、それでも飲めるかどうかまでは分からないけど。
ああ。出てきた水を鑑定すれば良いのか、と詳細に鑑定すると清浄な水と出たので、大丈夫かな。
木工スキルで、亜空間収納内の材木を乾燥させ燃えやすく加工した薪にして竈の近くに大量に置いて置く。
多分、もう二度と使わない狩った獲物を吊るすようの簡易のヤグラ用の材木をメインに使って在庫整理だ。
木としては硬すぎて燃えにくいそうなので、木工スキルを使い、燃料として優秀な材質に変質もさせておく。
奥の部屋に食料として、料理スキルを使い自然熟成させた程度に熟成させた魔イノシシの肉を200個ほど、魔鹿の肉を240個程置いておく。
次に日持ちしそうな果物と、しなさそうな果物を分けて200キロ程置いておく。
ああ。狩りの間に、お酒にでもしようとマメに果物を取っておいた良かった。
料理スキルはお酒も造れるから。
前の世界だと密造だけど、この世界だと大丈夫……だよね。
でも、こんな事なら穀物とかももっと買って収納しておけばよかった。
確か3000人程度だから、水さえあればこれでも数日分にはなるか。
避難生活が肉食メインと言うのも変な気がするが、どうでもいいか。
ああ。調味料として、塩は最低限必要かと亜空間収納から、塩の入った大き目の袋を取り出して、とりあえず2つ置いておく。
3000人ともなると、どう見ても量が足りないけど無いよりは良い筈だ。
一通り、砦の周りの城壁を調べて大丈夫な事を確認し、門を木工スキルで加工した木を鍛冶師技スキルで無理やり形成した釘を使い、木工スキルの指示に従いながら補強しておく。
門のカンヌキは、トレントの材木で新調した。
そうしていると、人々がこちらに付き始めたので、俺は館の方に戻る事に。
主人公は、力を使い5年放置されている砦を使える様にしたようです。
これで、皆の避難が出来ると良いのですが。